北極海の海氷面積が9月21日に2018年の最小値を記録

スポンサーリンク

減少スピードは停滞、回復時期は遅延

2018/09/25  情報・システム研究機構 国立極地研究所,宇宙航空研究開発機構(JAXA)

北極海の海氷域が9月21日に2018年の最小面積(446万平方キロメートル)を記録しました。北極海の年間最小海氷面積は2000年代まで減少傾向にありましたが、ここ数年はその傾向に歯止めがかかっており、今年は昨年に比べて微減となりました。今年は北極海上で低気圧性の循環が強く、海氷が大西洋に流れにくい状況であったため、海氷減少が顕著ではなかったと考えられます。一方、2002年以降、一番遅く最小面積を記録したことも注目すべき点です。

2018年9月21日に北極海の海氷面積が今年最も小さくなりました(446万平方キロメートル)(図1)。2002年にJAXA開発の観測センサであるAMSRシリーズで観測を始めて以来、最も遅い時期に年間最小面積を記録したことになります。また、面積としては衛星観測が本格的に始まった1979年以降で6番目の少なさで、昨年の9月のそれと比べて微減となりました。北極海の年間最小海氷面積は2000年代まで減少傾向にありましたが、2012年9月に観測史上最小面積を記録した後、それを下回る年はその後観測されておらず(図2、昨年の情報も参照)、ここ数年は海氷の減少傾向は弱くなっています。

図1:JAXAの水循環変動観測衛星「しずく」の観測データによる2018年9月21日の北極海氷の画像。

図2:北極海の9月の最小面積の時系列

今年の海氷分布の特徴として、グリーンランド北東部沿岸やスピッツベルゲン島北部など北緯80度以北での海氷が少ないことが挙げられます(図3)。例年この海域は、大西洋に流れ出す北極海中央部の海氷が集積する場所ですが、今年は2000年代の海氷分布(図3オレンジ色線)と比べても少なくなっています。これは、北極海上が例年よりも低気圧性の循環が強く、海氷が大西洋に流れにくい状況であったことと関連がありそうです。例えば、7月の海氷の動きを見ると、大気循環の影響を受け、反時計回りに海氷が動く傾向にあったことが分かります(図4)。例年はボーフォート海上に高気圧が卓越しますが、今年は低気圧が存在し、その反時計回りの風の影響でアラスカ北部の海氷が大きく東へ流される様子が見えます。また、バレンツ海東部には高気圧が存在し、その縁辺での強風でも海氷が大きく動いています。海氷面積は、融解過程だけではなく、北極海から大西洋へ流出することによっても減少しますが、今年は後者の要素が弱かったため、海氷減少が顕著ではなかったと考えられます。ちなみにこのバレンツ海東部の高気圧は、7月に北欧が猛暑に見舞われた要因の一つであるとも考えられます。

図3:AMSR2センサによる2018年9月10日の海氷密接度(%)、海面水温(℃)、陸域積雪深(cm)。オレンジ色の線は2000年代の同時期の平均的な海氷縁を示す。

図4:2018年7月の海氷の漂流速度ベクトル(陰影とベクトル:cm/s)と海面気圧(等値線:hPa)。

図5:チュクチ海南部の9月1日〜10日の平均海面水温

太平洋側北極海の海氷は例年並みに少ないですが、特筆すべきはベーリング海峡北部のチュクチ海の海面水温です。過去10年間では最も海面水温が高く、昨年9月と比較しても1.6度程度高い状態にあります(図5)。例年10月以降は急速に海氷域が拡大していきますが、このように海洋が高温状態にあると結氷時期が遅れることが示唆されます。実際、ここ数年の11月はチュクチ海南部が結氷しない状態が続いています。今年はそのような状況がさらに強まり、冬季の北極海上の温暖化が強まる可能性があります。

今年11月、「北極域研究推進プロジェクト」の一環で、海洋地球研究船「みらい」が初めて初冬のチュクチ海への調査航海を行います。現地で何が起きているのか、海氷の少なさや海洋の温暖化が、日本を含む中緯度の気候へどのような影響を与えているのか、その鍵となるデータを取得する予定です。

スポンサーリンク
スポンサーリンク