奄美大島、沖縄島、石西礁湖及び西表島周辺におけるサンゴ白化現象の調査結果について(平成30年度補足調査)

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平成30年8月7日 自然環境

(モニタリングサイト1000サンゴ礁調査 平成30年度補足調査)

環境省では、平成16年度より重要生態系監視地域モニタリング推進事業(以下「モニタリングサイト1000」という。)サンゴ礁調査を毎年秋(10~11月頃)に実施しています。この度、昨年度における白化現象によるサンゴ礁への影響をより詳細に把握するため、夏季の海水温上昇の発生前に、奄美大島、沖縄島、石西礁湖及び西表島周辺の各海域において、通例の調査とは別に補足的な調査(以下「補足調査」という。)を実施しました。
その結果、奄美大島周辺の海域では、平均サンゴ被度が昨年度の調査結果と比較して10ポイント以上減少したことが確認されましたが、その他の海域では昨年度と同程度の被度を維持しました。
また、補足調査の実施時点で石西礁湖及び西表島周辺の海域においては、全調査地点でサンゴの白化現象が起こっていることが確認されました。沖縄島周辺の海域では、サンゴの白化現象は一部でのみ確認されました。奄美大島周辺の海域では、白化現象は確認されませんでした。

1.これまでの経緯及び趣旨

  • 平成29年度に奄美大島から沖縄島、石西礁湖周辺にかけての海域において、サンゴの白化現象※1が発生しました。例年のモニタリングサイト1000サンゴ礁調査実施前に影響を適切に把握することが重要であるため、夏季の海水温上昇が予想される時期の前に状況を確認することを目的とし、平成30年度補足調査を実施しました。

※1 白化現象

高水温や低塩分などのストレスによって、サンゴに共生していた褐虫藻が抜け出てしまい、骨格が透けてサンゴが白く見える現象。長期間続くと死亡することがある。(出典:環境省・日本サンゴ礁学会編 日本のサンゴ礁)

2.調査内容

  • モニタリングサイト1000サンゴ礁調査のモニタリングサイトとして設定している奄美の瀬戸内周辺(奄美大島)、沖縄島(東岸)、沖縄島(西岸)、石西礁湖(北部)、石西礁湖(中央部)及び崎山湾(西表島西部)周辺の各サイトを対象としました。
  • 調査地点は、昨年度の調査時点でサンゴ被度が高い地点や、サンゴ白化率は高いが死亡率が低い地点など、同調査実施後にサンゴ被度の変化が見られる可能性がある地点を中心に抽出しました。調査地点は、次のとおりです(詳細は、別添図1)。

(2) 調査時期

平成30年6月6日~7月4日

(3) 調査方法

  • 調査地点毎におよそ50m四方の調査地点を設定し、スポットチェック法(15分間のスノーケリングを行い、サンゴ被度※2、サンゴ白化率※3等を目視観察)により、調査を行いました。

※2 サンゴ被度

調査地の海底に占める生きたサンゴ面積の割合。平均サンゴ被度はサイト内の各調査地点の平均値となる。

※3 サンゴ白化率

少しでも白化現象が見られる群体を対象とし、生きたサンゴ全体(白化しているサンゴ+健全なサンゴ)に占める、白化したサンゴの割合。現状どの程度の白化が生じているかを表す指標。

3.調査結果

  • 平成30年度補足調査及び平成29年度モニタリングサイト1000サンゴ礁調査(平成29年8~10月に実施)における各調査地点のサンゴ被度、サンゴ白化率は、別添表1のとおりです。
  • 平成30年度補足調査及び平成29年度モニタリングサイト1000サンゴ礁調査における各調査地点の平均サンゴ被度、平均サンゴ白化率は、次のとおりです。なお、平成29年度モニタリングサイト1000サンゴ礁調査の各平均値は、補足調査を実施した地点の調査結果のみを用いて算出しています。

  • 各サイトの調査結果の概要は、次の通りです。

① 瀬戸内周辺(奄美大島)

  • 5か所の調査地点のうち、実久(調査地点12)では、ミドリイシ類の死亡によりサンゴ被度が80%から40%に低下し、40ポイント減少しました。なお、この大幅な減少は、昨年度生じた白化に起因すると考えられます。
  • 平均サンゴ被度は、48%から34%に低下し、14ポイント減少しました。
  • 白化したサンゴは確認されませんでした。

② 沖縄島(東岸)及び(西岸)

  • 各地点のサンゴ被度は、昨年度と同程度でした。
  • 平均サンゴ被度は、昨年度と同程度でした。
  • 平均サンゴ白化率は、4%(東岸)と5%(西岸)でした。

③ 石西礁湖(北部)及び(中央部)

  • サンゴ被度は、3地点で20ポイント増加し、1地点で20ポイント減少しました。
  • 平均サンゴ被度は、昨年度と同程度でした。
  • 平均サンゴ白化率は、21%(北部)と51%(中央部)でした。

④ 崎山湾(西表島西部)周辺

  • 平均サンゴ被度は、昨年度と同程度でした。
  • 平均サンゴ白化率は、16%でした。

4.今後の対応等について

  • 米国海洋大気庁(NOAA)が本年発表している今年の 8月から11月にかけての海水温の上昇によるサンゴの白化現象の発生見通し(確率60%予想)によれば、奄美群島及び沖縄本島にかけての海域では「白化を引き起こすような水温ストレス(高水温)にはない地域」とされていますが、石西礁湖及び西表島周辺の海域では、「やや水温が高く、白化現象に注意が必要な地域」とされています(別添図3)。なお、昨年発表された平成29年の 7月から10月にかけての海水温の上昇によるサンゴの白化現象の発生見通し(確率60%予想)では、屋久島以南の海域では「白化現象に注意が必要な地域」、また、西表島周辺の海域は「白化現象が発生する可能性がある水温レベルの地域」でした(別添図4)。
  • 今回の補足調査において、石西礁湖や崎山湾(西表島西部)周辺では、ホワイトシンドローム(サンゴに発生する病気の一種。サンゴの組織が白くなって壊死する。)に罹患している群体が多くの地点で確認されています。
  • 環境省では、サンゴ被度の他、白化現象やホワイトシンドロームの発生状況等を把握する「モニタリングサイト1000サンゴ礁調査」を今年度も10~11月頃に実施します。同調査の結果につきましては、平成31年1月頃を目途に公表予定です。

5.その他

  • モニタリングサイト1000サンゴ礁調査の過年度報告書、記者発表、マニュアル等の資料は、下記Webサイトでご覧いただけます。

モニタリングサイト1000ホームページ:http://www.biodic.go.jp/moni1000/index.html

添付資料

連絡先
環境省自然環境局自然環境計画課生物多様性センター
センター長 曽宮 和夫
担当    串田 卓弥
担当    宮田 亮環境省自然環境局自然環境計画課
課長     植田 明浩(内線6430)
課長補佐   宮澤 泰子(内線6435)
専門官    大澤 隆文(内線6492)
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