光子・粒子・電磁波用超伝導検出器の画素数を飛躍的に増大する読出回路

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-新回路で、小型・低消費電力・廉価な汎用型高性能計測器の実現へ-

2018/02/01 産業技術総合研究所

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ポイント

  • 高性能計測器の小型化・低消費電力化・低廉化に向け、超伝導検出器用の信号読出回路を開発
  • 周波数変換の工夫で1本の読出配線上へ多重化できる信号数を増やし、大幅な多画素化を可能に
  • 室温検出器を凌駕する性能で、分析電子顕微鏡、光子顕微鏡、放射線分光器などへの応用に期待

概要

多画素超伝導検出器を用いる計測器 (a)多重化なし (b) 多重化 (c) 超伝導検出器と多重化チップの実装モジュールの図
多画素超伝導検出器を用いる計測器 (a)多重化なし (b) 多重化 (c) 超伝導検出器と多重化チップの実装モジュール;全体が摂氏マイナス273度に冷却される。

国立研究開発法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という)ナノエレクトロニクス研究部門【研究部門長 安田 哲二】超伝導計測信号処理グループ 山森 弘毅 研究グループ長、平山 文紀 主任研究員、神代 暁 研究グループ付は、東京大学【総長 五神 真】(以下「東大」という)大学院工学系研究科原子力専攻 大野 雅史 准教授、高橋 浩之 教授と共同で、超伝導検出器に関し、1本の読出線上に従来の5倍となる1000画素以上の信号を載せることができる技術を開発した。

超伝導検出器は、単一光子・粒子のエネルギーや微弱電磁波強度の精密計測が可能であり、宇宙から到来する微弱電磁波の長時間・精密観測などに利用されているが、計測時間短縮に必要な多画素化が遅れている。その主因は、極低温の多画素検出器と室温処理装置をつなぐ読出線に載せられる画素数が限られるからである。多画素化のために読出線の数を増やすと、読出線経由の流入熱が増えて冷却装置の強化が必要となり、計測器全体の体積・消費電力・価格の上昇につながる。今回開発した技術は、複数の室温信号処理装置を並列動作させ、室温処理装置ごとに全画素の情報を異なる周波数帯に変換し、まとめて1本の読出線上に載せるものである。載せられる画素数が飛躍的に増大し、超伝導検出器を用いる分析電子顕微鏡、放射線分光器、光子顕微鏡などの計測時間短縮や、小型化・低消費電力化・低廉化が期待される。

なお、この技術の詳細は、2018年2月1日(現地時間)に学術誌Superconductor Science and Technologyに掲載される。

開発の社会的背景

超伝導検出器の画素数と、室温から極低温への流入熱との関係図
図1 超伝導検出器の画素数と、室温から極低温への流入熱との関係

超伝導検出器は、低周波磁界、ミリ波からX線・ガンマ線までの電磁波やエネルギー粒子を低雑音で検出でき、室温動作の半導体検出器などを凌駕するので、脳磁計、心磁計、分析電子顕微鏡、天文観測用受信器などで用いられている。しかし、室温検出器に比べて、受光面積が2~3桁小さく、入射信号の検出効率が2~3桁低い。そのため、少数の画素を走査しながらの撮像(イメージング)となり、一般に室温検出器に比べて、測定時間が2桁程度長くなる。これらの問題を解決するには検出器の多画素化が必要とされる。しかし、高速信号をリアルタイムに読出せるように、極低温に置かれた多画素検出器と室温の信号処理装置をつなぐ配線を増やし、これを並列接続することで画素数を増やすと、配線経由の流入熱が増える(図1:点線a)。そのため極低温冷凍機の強化(大型化または多数化)が必要となり、検出器システムの大型化により、消費電力が増加し、価格も上昇する。さらに、極低温下で、複数の画素信号を画素ごとに異なる周波数に変換して多重化して配線数を減らす超伝導周波数多重読出回路も研究されてきたが、従来技術では、1本あたり1000以上の多画素化は困難であった。しかし超伝導検出器も1000画素集められれば、市販半導体検出器と同等の受光面積が可能となり、同一測定時間での比較で、遥かに優れた分光性能が実現できる。これにより、例えば、材料評価用の分析器の革新的目標である、高い物質同定能力と高いスループット(単位時間あたりのデータ処理能力)の両立が期待されている。

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