世界初、28GHz帯5G電波の透過・反射を動的制御する透明メタサーフェス技術の実証実験に成功

2020-01-172021-09-10

高い透明性で景観を損ねずに柔軟な5Gエリアの拡大を実現

2020-01-17　株式会社NTTドコモ

株式会社NTTドコモ（以下、ドコモ）は、AGC株式会社（以下、AGC）の協力を得て、第5世代移動通信方式（以下、5G）におけるエリア構築の最適化に向けて、高い透明性を維持しながら電波の反射・透過を制御する「透明動的メタサーフェス※1」のプロトタイプを開発し、2020年1月10日（金曜）にドコモR&Dセンタ（神奈川県横須賀市）にて、28GHz帯電波の透過・反射を動的に制御する実証実験（以下、本実験）に世界で初めて※2成功しました。

＜本実験で使用した透明動的メタサーフェスのプロトタイプ＞

本実験に使用した透明動的メタサーフェスは、ドコモが原理提案・設計をし、AGCが材料・微細加工技術の検討および製造を行いました。

5G以降の世代で利用される高い周波数帯は直進性が高く、基地局から見通せる範囲外は電波の反射を活用してエリア構築することが効果的であるため、ドコモは反射波の方向やビーム形状を任意に設計することが可能なメタマテリアル反射板を検討してきました※3。しかしメタマテリアル反射板はエリア拡大に有効である一方、設置場所に合せた設計が必要であり、反射板の裏には電波が届かなくなる、景観に影響を与えるなどの課題があり、エリア拡大を進めていくためにはより柔軟に電波伝搬を制御する必要がありました。

今回、ドコモとAGCが開発した透明動的メタサーフェスは、小さな構造体を規則的に多数配置したメタサーフェス基板を透明化したものに透明なガラス基板を重ね、重ねたガラス基板を微小に可動させることで、入射電波を透過するモード、電波の一部を透過し一部を反射するモード、すべての電波を反射するモードの3パターンを動的に制御することが可能です。今回のメタサーフェス動的化手法は、半導体を用いたこれまでの手法に対して、“透明性を維持したまま動的制御が可能”、“基板の大面積化が容易”という優位性があり、景観や既存のデザインを損なうことがないため、建築物や看板、広告、車両などへの設置の可能性が広がります。設置場所の環境に合わせて動的に電波伝搬を制御することで、基地局の設置が困難な建物が密集したオフィス街や、電波の透過・反射を制御する需要があるような屋内環境などにおいて、よりきめ細やかな5Gエリアの構築が可能となります。

＜将来ユースケースのイメージ＞

＜ユーザー位置に合せた無線環境制御＞

＜時間帯による無線環境制御＞

本実験では、透明動的メタサーフェスを透過するモード・反射するモードの2パターンで、入射電波の透過特性を測定し、28GHz帯で、透過モードの時は電波が減衰することなく基板を透過し、反射モードの時は電波が減衰することなく反射することを確認いたしました。

本実証実験で使用した透明動的メタサーフェスは、2020年1月23日（木曜）から1月24日（金曜）まで東京ビッグサイトで開催するドコモのイベント「DOCOMO Open House 2020」で、ご覧いただくことができます。

本技術は5Gよりもさらに高い周波数帯への適用も可能です。ドコモは、今後も5Gエリアの効率的かつ柔軟なエリア構築手法の確立をめざすとともに、5Gとその先の無線環境制御技術の研究・開発に取り組んでまいります。

メタサーフェスとは、波長に対して小さい構造体を周期配置して任意の誘電率・透磁率を実現する人工媒質（メタマテリアル）の一種で、構造体の周期配置を2次元とした人工表面です。
ドコモ調べ（2020年1月17日現在）。
報道発表資料：（お知らせ）世界初、メタマテリアル技術を適用した反射板による、28GHz帯の5Gエリア拡大の実証実験に成功＜2018年12月3日＞

別紙　透明動的メタサーフェスを用いた原理実験の内容

1. 実験概要

神奈川県横須賀市のドコモR&Dセンタにおいて、透明動的メタサーフェスのプロトタイプに対して垂直に電波を入射し、透過モード時（メタサーフェス基板と可動透明基板が接した状態）と反射モード時（メタサーフェス基板と可動透明基板が200μｍ以上離れた状態）の透過率を測定しました。本実験ではメタサーフェス基板と可動透明基板間の距離をマニュアル制御しましたが、今後は高速で電気制御することが可能な圧電アクチュエータを使用して、高速に透過モードと反射モードを制御することが可能になります。

＜実験概要＞