2022-06-08 京都大学
吉田暢広 農学研究科修士課程学生(研究当時)、橋本渉 同教授らの研究グループは、とても安定で反応性に乏しい「大気窒素」を利用する微生物を用いて、バイオディーゼル生産時に副生する「廃グリセロール」から生分解性プラスチック素材を生産しました。
脱炭素社会に実現に向けて、欧州を中心に世界各地で植物油などからバイオディーゼルが製造されています。日本国内においても、京都市などでは廃食用油を回収し、バイオディーゼルを生産しています。一方、生産時に副生する「廃グリセロール」は高pHで不純物を含むため、その利活用が遅れています。本研究では、水で希釈した「廃グリセロール」と「大気窒素」を栄養源とする窒素固定細菌を用いて、有用なバイオポリマー[アルギン酸とポリヒドロキシ酪酸(PHB)]を生産しました。さらに、生分解性プラスチック素材となるPHBの生産について、生育条件と改変株の育種を検討した結果、本窒素固定細菌が大量のPHBを蓄積することが明らかとなりました。
本研究は、化学的窒素固定による環境負荷を低減するとともに、廃棄物を有用素材に変換できる点で、持続可能な開発目標(SDGs)の「目標7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに」の達成の一助にも繫がることが期待されます。
本研究成果は、2022年6月7日に、国際学術誌「Scientific Reports」にオンライン掲載されました。
図:「大気窒素」を活用した「廃グリセロール」からの有用ポリマー生産
研究者情報
研究者名:橋本 渉