2022-06-01 日本原子力研究開発機構
【発表のポイント】
- 原子力発電所の廃止措置(廃炉)に伴って発生する放射性廃棄物のうち、その放射能濃度が低く、人の健康への影響がほとんどないものについて、国の認可・確認を得て、普通の廃棄物として再利用又は処分できる制度を「クリアランス制度」といいます。
- 配管の保温材などに使用されていたアスベスト廃棄物は、以前はクリアランス制度の対象ではなく、処理できずに保管していました。その処理を進めるためには、アスベスト廃棄物の吸入防止のための特別な処理処分の特徴を反映した被ばく評価手法が必要になります。
- そこで、アスベスト廃棄物の処理、再利用、処分の過程を網羅的に調査し、被ばくの生じる可能性のある経路、作業時間、ダスト濃度等のパラメータの代表値及びその不確かさを決定し、被ばく線量を評価する手法を新たに開発しました。そして、アスベスト廃棄物のクリアランスレベルを初めて算出し、金属・コンクリートと同様にアスベスト廃棄物についても現在のクリアランスレベルが適用可能であることを明らかにしました。
- このように、アスベスト廃棄物にクリアランスレベルが適用可能となったことで、無害化溶融処理など、適正な処理、再利用、処分を進める道が拓けました。廃止措置の進展に伴い発生するアスベスト廃棄物の今後の処理・再利用が進み、循環型社会の実現につながることが期待されます。
図1 アスベスト廃棄物に特有な処理・再利用・処分の特徴を考慮した被ばく評価手法を新たに開発し、その手法による解析からアスベスト廃棄物のクリアランスレベルを初めて算出しました。
【概要】
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長:小口正範。以下、「原子力機構」という。)安全研究センター(センター長:西山裕孝)廃棄物・環境安全研究グループの島田太郎研究主幹らは、原子力発電所で配管の保温材などに用いられているアスベスト1)を含む廃棄物(以下、アスベスト廃棄物という)を、クリアランス制度2)の新たな対象物として扱えるよう、特別な処理・処分の実態を反映して被ばく線量評価を行う方法を開発しました。そして、その方法を用いて、アスベスト廃棄物のクリアランスレベル(放射性物質として扱う必要のない放射能濃度)を初めて算出しました。その結果、金属・コンクリートと同様にアスベスト廃棄物についても現在のクリアランスレベルをそのまま適用可能であることを示しました。
原子力発電所の廃止措置(廃炉)で発生する大量の廃棄物のうち、その放射能濃度が極めて低く人の健康への影響がほとんどないものについて、国の認可・確認を得て、普通の廃棄物として再利用又は処分できます。これを「クリアランス制度」といい、この制度に従い、金属・コンクリートはリサイクルが実施されています。
一方、アスベスト廃棄物は、以前はクリアランス制度の対象ではなく、放射能濃度が極めて低くても、処理できずに保管されていました。この処理を進めるためには、吸入防止のための二重梱包や溶融無害化処理などの、普通のアスベスト廃棄物に対して行われている特別な処理・処分の特徴を反映した被ばく評価手法が必要となります。そこで、原子力機構では、それらの特徴を反映し、被ばく経路と評価パラメータを決定する、以下のようなアスベスト廃棄物の処理処分時の被ばく線量を評価する手法を開発しました。
まず、特別管理産業廃棄物であるアスベスト廃棄物の処理・処分作業の実態を調査し、評価対象の被ばく経路を決定しました。そして、すべての被ばく経路について、被ばく線量評価に使用するパラメータ値の取りうる範囲と分布型(確率密度)をアスベスト廃棄物の特性から整理しました。この結果は評価パラメータの不確かさの影響を評価する確率論的解析3)で与えました。また、クリアランスレベルを算出するための被ばく線量を評価する決定論的解析3)では、その範囲の中から保守的な代表値を決定しました。
この方法を用いて、これまで対象だった33核種のクリアランスレベルを原子力機構が開発した被ばく線量評価コードPASCLR2コード4)により評価しました。その結果、図2に示すように、アスベスト廃棄物のクリアランスレベルは現在のクリアランスレベルと同値以上となりました。また、確率論的解析で評価された線量は10倍以内となり 、低確率で生じる値の組み合わせが生じた場合でも被ばく線量が過度に大きくなることがなく、代表値を組み合わせて評価した決定論的解析の結果が適切であることが確認できました。
以上の結果から、アスベスト廃棄物に対して、金属・コンクリートと同様に現在のクリアランスレベルをそのまま適用することが可能であることを明らかにしました。本研究は、アスベスト廃棄物に対し、被ばく経路の設定から評価パラメータの不確かさの決定など一連の被ばく線量評価手法を開発して、そのクリアランスレベルを世界で初めて示した成果です。アスベスト廃棄物にクリアランスレベルが適用可能となったことで、滞っていた処理処分を適正に進める道が拓け、循環型社会の実現につながることが期待されます。
つながることが期待されます。
本研究成果は令和4年5月26日に「日本保健物理学会誌」で公開されました。
図2 代表的な核種のアスベスト廃棄物に対する10µSv/y相当濃度とそれを桁で数値丸めしたアスベスト廃棄物のクリアランスレベル、及び、現在のクリアランスレベルとの比較
(被ばく線量評価結果から、年間10μSvに相当する濃度の最小値を算出しました。その最小値に対して国際基準に沿ってオーダー(桁)で表す方法5)によりアスベスト廃棄物のクリアランスレベルを算出しました)
【研究の背景・経緯】
原子力発電所等の運転や廃止措置に伴って放射線管理区域から発生する資材等のうち、放射能濃度が低く、人の健康への影響がほとんどない廃棄物は、クリアランスレベル以下であることの国の認可・確認を経て、原子炉等規制法の規制から外され、再利用または産業廃棄物としての処分が可能となります。これまでのクリアランスの対象は、金属くずやコンクリートくず等であり、2021年10月時点では約5,700トンが国の確認を終え、再利用が進められています。
一方、1970年代に建設された原子力発電所の放射線管理区域において、配管の保温材やスレート等のアスベストを含む放射能濃度の低い廃棄物が全国の合計として1300トン程度発生することが見込まれ、このうちすでに解体されたアスベスト廃棄物は処理できず、保管されたままとなっていました。平成28年までに電気事業連合会はアスベスト廃棄物もクリアランス対象物とすることを原子力規制委員会へ要望しました。
これに対し原子力規制委員会は検討を進め、2020年8月に国際基準を取り入れて規則を改正し、以前のクリアランス制度では金属、コンクリートなどに限定されていた物質の規制が撤廃されました。これによりアスベスト廃棄物はその対象とすることができるようになりましたが、実際に対象とするためには、被ばく線量評価を行って、アスベスト廃棄物のクリアランスレベルに関する知見を得ておく必要がありました。
人体に有害なアスベスト廃棄物に対しては、環境省が定めた処理マニュアル6)で運搬、無害化のための溶融処理、さらに管理型最終処分場7)への埋立などについて、その方法が規定されています。これらの方法の一部は、金属・コンクリートの再利用、処理処分方法と異なっており、金属・コンクリートを対象にクリアランスレベルを算出したときと被ばく経路や条件が変わります。こうしたことから、アスベスト廃棄物の再利用及び処理処分の実態を踏まえたクリアランス後の被ばく線量の評価に基づきアスベスト廃棄物のクリアランスレベルを算出する必要があります。このような算出を行うためには、アスベスト廃棄物の各過程の特徴を踏まえた被ばく線量評価手法を新たに開発する必要がありました。
【今回の成果】
そこで、本研究では、アスベスト廃棄物の処理マニュアルに沿って行われる作業の実態の詳細調査から、被ばく経路と評価パラメータを決定するアスベスト廃棄物の処理処分に対する被ばく線量を評価する手法を開発しました。
被ばく経路の選定
これまでの評価方法を参考に、処理マニュアルとそれに従った作業の実態の調査結果に基づいて、クリアランスされた後の特別管理産業廃棄物としてのアスベスト廃棄物の輸送、処理、再利用及び埋立処分の特徴から次のように被ばく経路選定のための条件を設定しました。
- アスベスト廃棄物は排出時に二重梱包されるので、積み下ろし、輸送、埋立の各作業で、内容物の飛散が生じない。したがって、粉じんの飛散による内部被ばくは生じない。
- 溶融処理では、ベルトコンベアへの積替え作業、生成されたスラグの積み下ろし、飛灰の回収、溶融炉内での補修作業が行われる。その際、作業の排気が大気放出される。また、溶融による非繊維化で無害化されたスラグは、駐車場の路盤材としての再利用、あるいは安定型最終処分場7)への埋立が行われる。スラグは無害化されるが、その取扱に制限がないため、スラグ取り扱い時に飛散する粉じんの吸入・経口摂取により内部被ばくが生じる。
- 管理型最終処分場では、アスベスト廃棄物は一定の場所に分散しないよう埋め立てられ、毎日の作業終了時に15cmの覆土が行われる。その際、その位置が永久に記録される。アスベスト廃棄物は、廃止後に指定区域となる管理型最終処分場の跡地での掘削が制限されるため、管理型最終処分場の跡地では廃棄物に到達する掘削作業は行われない。
以上の特徴を踏まえ、アスベスト廃棄物のクリアランスでは、図3に示すように、原子炉施設から搬出される以降の物流を想定しました。金属・コンクリートは安定型最終処分場へ埋め立てられますが、アスベスト廃棄物は管理型最終処分場へ埋め立てられるので、新たな被ばく経路として24経路(図3の赤字の経路)を設定しました。金属・コンクリートと共通の50経路とあわせて、作業者、公衆の被ばく経路、合計74経路を選定しました。
図3 アスベスト廃棄物に対して設定したクリアランス後の被ばく経路
評価パラメータの設定
上記74経路の被ばく線量評価に用いる評価パラメータもアスベストの処理・処分の実態を踏まえて決定しました。この際、各評価パラメータの値にはばらつきがあり、その取りうる範囲の中から代表値を保守的に決定し、その値が適切であるかを確認しておく必要があります。図4に示すように、クリアランスレベル算出のための被ばく線量を決定論的解析によって求めるため、すべての経路において使用される評価パラメータの取りうる範囲とその分布型を調査し、その範囲で保守的と考えられる代表値を決定します。そして、低確率で生じる値の組み合わせで大きな線量にならないことを確認するための確率論的解析では、乱数を用いてランダムに決定する値の1,000組の組み合わせを作るため、評価パラメータ値の取りうる範囲と分布型(確率密度)を与えました。確率論的解析では、低確率で生じる値の組み合わせでの被ばく線量が決定論的解析による線量の10倍以内というこれまでの規制判断の基準を満たすことを確認します。
図4 パラメータの取りうる値の範囲と分布型から保守的な代表値を決定する決定論的解析とランダムに決定した値の組み合わせによる確率論的解析のイメージ
評価パラメータ設定の具体例を示します。溶融処理では、アスベスト撤去作業で飛散防止のために湿潤化した水分の蒸発などにより重量が30%減少するため、溶融で生成されるスラグは溶融処理の対象である保温材の発生量1,080tから70%の756tに減少することになります。こうした物量の変化に応じて運搬、溶融処理、埋立の各作業での作業時間を決定しました。また、パラメータの取りうる範囲とその分布型は、例えば埋立の作業時間は100~2,000時間の一様分布で1,000時間を代表値とし、安定型最終処分場での跡地利用の建設時のダスト濃度は1×10-4~1×10-3g/m3の対数正規分布で5×10-4 g/m3を代表値として決定しました。
以上のように、アスベスト廃棄物の処理処分過程を踏まえた評価パラメータ設定による被ばく線量評価手法を開発しました。
この方法を用いて、規則改正以前において原子炉施設から発生するクリアランス対象物の確認対象であった33核種について、まず決定論的解析により、各パラメータの代表値を用いて、単位濃度の1 Bq/gの放射能濃度を持つアスベスト廃棄物からの被ばく線量をすべての被ばく経路に対して求めました。その後、クリアランスの線量基準である年間10μSvに相当する放射能濃度を逆算し、すべての経路の中の最小濃度をアスベスト廃棄物のクリアランス可能な放射能濃度(10μSv/y相当濃度)として評価しました。これらすべての被ばく経路に対する被ばく線量は、原子力機構が開発したPASCLR2コードにより計算することが可能です。
評価結果
図2に示した代表的な核種のアスベスト廃棄物の10μSv/y相当濃度は、過去に金属・コンクリートを対象に評価した10μSv/y相当濃度の値よりも小さくなった核種が多い結果となりました。アスベスト廃棄物には非放射性廃棄物との混合がないなど保守的な条件から被ばく線量を上昇させることになりますが、アスベスト廃棄物は発生量が金属・コンクリートの発生量に比べて少なく、埋立時の処分場全体の線量率の低下や作業時間の減少などにより被ばく線量を減少させるため、金属・コンクリートの値との差は1桁以内に収まりました。一方、二重梱包、最終覆土厚さ、掘削制限の条件が与えられたことによって、被ばく線量が抑えられ10μSv/y相当濃度が大きくなった核種もありました。
次に、33核種について、算出した10μSv/y相当濃度を、オーダー(桁)で表す数値丸めして得られたアスベスト廃棄物のクリアランスレベルは、すべて現在のクリアランスレベルを下回るものはなく、同値かそれ以上となりました。
最後に、決定論的解析で設定した評価パラメータの妥当性を確認するため、確率論的解析を行いました。評価パラメータの設定で整理した各パラメータ値の取りうる範囲とその分布型をもとに、Latin Hypercube Sampling 法8)によりパラメータサンプリングを行い、1,000個のパラメータセットを作成して1,000ケースについて10μSv/y相当濃度を算出しました。図5は結果の一例で、1,000個の解析結果を濃度の低い順に並べたグラフです。発生確率の小さい片側信頼区間97.5%下限値B(累積確率Pが0.025となる濃度=0.22Bq/g)の10倍の値(2.2Bq/g)が決定論的解析で得られた10μSv/y相当濃度A(0.61Bq/g)を超えていました。したがって、低い確率で生じるパラメータ値の組み合わせでも年間被ばく線量が100μSvを超えることがなく、代表値の組み合わせを用いて決定論的に算出したクリアランスレベルが適切であることを確認しました。
図5 評価パラメータの設定の妥当性を確認する確率論的解析の結果例(跡地利用の農作物摂取経路でのSr-90を対象とした評価)
以上の結果から、アスベスト廃棄物について、33核種について評価した10μSv/y相当濃度は妥当であり、金属・コンクリートを対象とした現在のクリアランスレベルより小さい値としなければならない核種はなく、すべての核種で現在のクリアランスレベルを適用できることを示しました。このように、アスベスト廃棄物にクリアランスレベルが適用可能となったことで、適正に処理処分を進める道が拓けました。処理できずに保管を継続していたアスベスト廃棄物に対し、溶融無害化処理を実施してマテリアルリサイクルを行うなど、循環型社会の実現につながることが期待されます。
【今後の展望】
同じ特別管理産業廃棄物である照明器具の安定器などPCBを含む廃棄物についても、電気事業者からクリアランス対象とすることが要望されていました。今回の評価と同様にPCB廃棄物の処理、処分作業の実態を網羅的に調査して、被ばく線量評価手法を開発しました。その手法を用いてPCB廃棄物のクリアランスレベルを算出しました。そのクリアランスレベルは、現在のクリアランスレベルと同値かそれ以上となり、アスベスト廃棄物と同様に、現在のクリアランスレベルを適用できることが示されました。こうして原子炉施設から発生するクリアランス可能な特別管理産業廃棄物に対し、現在のクリアランスレベルが適用できることを技術的根拠をもって示すことで、社会的にもクリアランスが受け入れられ、廃止措置作業が滞りなく進むことが期待されます。
【論文情報】
雑誌名:日本保健物理学会誌 57巻1号
島田太郎、根本宏美、武田聖司、「放射性物質を有するアスベスト含有廃棄物を対象としたクリアランスレベルの評価」
【参考文献】
- 原子力安全委員会:主な原子炉施設におけるクリアランスレベルについて、平成11年3月17日
- 原子力安全委員会:原子炉施設及び核燃料使用施設の解体等に伴って発生するもののうち放射性物質として取り扱う必要のないものの放射能濃度について、平成16年12月16日
- 文部科学省:放射線障害防止法に規定するクリアランスレベルについて、平成22年11月
- 環境省:石綿含有廃棄物等処理マニュアル第3版、令和3年3月
【助成金の情報】
本研究の一部は原子力規制委員会原子力規制庁「原子力発電施設等安全技術対策委託費(廃止措置・クリアランスに関する検討)事業」において実施しました。
【用語解説】
1) アスベスト(石綿)
石綿は、天然にできた鉱物繊維で、丈夫で変化しにくいという特性を持っているため、1960年頃から1970年過ぎまで多く利用されていました。しかし、その粉じんを吸入すると肺組織に刺さり15~40年の潜伏期間を経て、肺がん、悪性中皮腫などを引き起こすおそれがあるとして現在は使用禁止となっています。
2) クリアランス制度
クリアランス制度とは、原子力事業者等が、施設等において用いた資材、その他の物に含まれる放射性物質について、原子力規制委員会が定める基準(クリアランスレベル)以下であることの確認を国(原子力規制委員会)から受けることで原子力規制から外し一般目的の再利用や処分ができる制度です。2020年8月に従来の2つの規則(原子力事業用と試験研究炉用)を統合し、「工場等において用いた資材その他の物に含まれる放射性物質の放射能濃度が放射線による障害の防止のための措置を必要としないものであることの確認等に関する規則」として新たに制定されました。これまで原子炉施設から発生する物について33核種、核燃料使用施設から発生する物について49核種、もっぱらウランを取り扱う施設から発生する物について5核種だった核種数が、IAEA GSR Part 3を取り込んで、274核種に拡大するとともに、金属・コンクリート・ガラスくずに限定していた対象物質の制限を撤廃しました。
3) 決定論的解析と確率論的解析
評価パラメータは値の取りうる範囲と分布型を持ちます。その範囲の中から保守的な代表値を決定して、その複数のパラメータの組み合わせで評価する方法を決定論的解析といいます。値の取りうる範囲と分布型を与えて、その範囲からランダムに値を選定して、それらの組み合わせケースを多数評価する方法を確率論的解析といいます。決定論的解析で決定した代表値は不確かさを有するので、その不確かさの影響を評価するために確率論的解析を行って、決定論解析の妥当性を確認するものです。具体的には、確率論的解析は複数のパラメータ値の範囲と分布型から、モンテカルロ法により確率密度関数に従ってパラメータサンプリングを行い、1,000組のデータセットに基づき、1,000回の解析を行って、1000個の被ばく線量を評価するものです。評価値を小さい順に並び替えてプロットした累積分布関数で代表値を用いて算出した10μSv/y相当濃度と、発生確率の小さい片側信頼区間97.5%下限値との差が1オーダー未満(年間100μSvを超えない)であることによって、代表値として決定した決定論的解析の評価パラメータ値の妥当性が示されます。
4) PASCLR2コード
決定論的解析によるクリアランスレベルの導出と導出された値の妥当性を確率論的解析によって評価できるモンテカルロ法による確率論的解析コードシステム。ウラン及びTRU核種についても放射性崩壊に伴う核種の減衰や生成を考慮でき、ラドンガスの発生から吸入による被ばく線量評価も行うことが可能です。
5) オーダー(桁)で示す数値丸め
ここでは、IAEA Safety Report Series No.44の方法に従い、オーダー(桁)で示す端数処理である対数的丸めの処理(3×10nから3×10n+1までの値を1×10n+1と端数を処理)を適用しました。
6) 処理マニュアル
石綿含有廃棄物等処理マニュアルは「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃棄物処理法)の規定により特別管理産業廃棄物に指定された廃石綿等及び石綿含有廃棄物について、その適正な処理を確保するために行わなければならない事項等を、排出、収集・運搬、中間処理、埋立最終処分の各段階について解説したもの。
7) 管理型最終処分場、安定型最終処分場
最終処分場は、埋立処分される廃棄物の環境に与える影響の度合によって、安定型最終処分場、しゃ断型最終処分場(有害物質が基準を超えて含まれる燃えがら、ばいじん、汚泥、鉱さいなどの有害な産業廃棄物が対象)、管理型最終処分場(遮断型・安定型処分場に埋め立てる以外の産業廃棄物が対象)の3種類に分けられます。安定型最終処分場は、廃棄物の性状が安定している産業廃棄物である、廃プラスチック類、ゴムくず、金属くず、建設廃材、ガラスくず、陶磁器くず(これらは安定五品目と呼ばれる)が埋め立てられます。管理型最終処分場では、埋立地から出る浸出液による地下水や公共水域の汚染を防止するため、しゃ水工(埋立地の側面や底面をビニールシートなどで覆う)、浸出水を集める集水設備、集めた浸出液の処理施設が必要となります。アスベスト廃棄物(廃石綿等)は管理型最終処分場へ埋め立てられることとなっています。
8) Latin Hypercube Sampling 法(LHS法)
確率論的解析においてパラメータをサンプリングする手法のことで、各パラメータの確率密度関数が等面積になるようにサンプル数で分割し、その分割された各領域内から代表値をランダムに1つ選択し、最終的にパラメータ数に応じたパラメータ値の組み合わせを決定するものです。