化石燃料を必要としない脱炭素社会の基盤形成に向け、空中窒素の固定を介した生物学的アンモニア生産へ期待
2022-03-17 京都大学
黒田浩一 農学研究科准教授、滝本廉 同修士課程学生、植田充美 産官学連携本部特任教授、立道祐輝 キッコーマン株式会社研究員らの研究グループは、好気性窒素固定細菌Azotobacter vinelandiiに着目し、窒素源や酸素に対する転写応答を網羅的に解析することで、本菌が好気条件下でもニトロゲナーゼの活性を高く維持するための遺伝子を明らかにしました。また、得られた知見をニトロゲナーゼの異種発現に応用し、好気条件下でのニトロゲナーゼ活性を世界で初めて大幅に向上させることに成功しました。
近年、アンモニアは植物の肥料や化成品原料だけでなく、水素社会の実現に伴う水素キャリアーとしてますますその価値を高めています。しかし現行のアンモニア生産はハーバー・ボッシュ法に依存し、多量の化石燃料を必要とすることから持続可能性に問題を抱えています。そこで注目を集めているのがニトロゲナーゼです。ニトロゲナーゼは窒素固定細菌と呼ばれる一部の細菌が産生する酵素で、化石燃料を必要とせずにATP(アデノシン三リン酸)を用いて大気中の窒素分子からアンモニアを生産することができます。しかし、酸素に触れると機能を失ってしまうため、効率的な利用は達成できていませんでした。今回の研究成果は、ニトロゲナーゼを好気条件下で機能させる上で非常に有用であり、その効率的利用だけでなく、様々な酸素感受性酵素の好気的利用に貢献することが期待されます。
本研究成果は、2022年3月9日に、国際学術誌「Scientific Reports」に掲載されました。
図:本研究の概要図
研究者情報
研究者:黒田浩一
研究者:植田充美