株元着果性に優れ良食味のかぼちゃ新品種「豊朝交1号」~ 着果位置の揃いも良く、管理および収穫作業の軽労化に貢献~

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2023-01-31 農研機構,朝日アグリア株式会社

ポイント

農研機構は朝日アグリア株式会社と共同で、短節間性1)および株元着果性2)に優れ、食味が良いかぼちゃ新品種「豊朝交 (ほうちょうこう) 1号」を育成しました。着果位置が揃い、整枝作業3)をしなくても果実を見つけやすいことから、生産者の管理作業や収穫作業時の軽労化が可能です。また、果肉が厚く、果肉の粉質性4)に優れることから、良食味のかぼちゃ品種として普及が期待されます。

概要

わが国で現在栽培されているかぼちゃ品種は、つる性で着果位置が安定しません。そのため、果実を見つける作業に時間を要し収穫作業が重労働になっています。その労力軽減策の一つとして、果実の着果位置が揃った品種の育成があげられます。

そこで、農研機構は朝日アグリア株式会社と共同で、短節間性を有し株元着果性があり、果実形が安定して外観に優れ、高い粉質性を持つ良食味かぼちゃ新品種「豊朝交1号」を育成しました。

本品種の利用によって、生産現場での整枝作業や収穫作業時の軽労化のメリットに加え、気象に関わらず着果が安定していることから幅広い地域で栽培が可能であるため、スーパーなど量販店や加工業者などから求められている国産かぼちゃの安定供給に寄与します。

なお、2023年以降、「豊朝交1号」の栽培用種子は、朝日アグリア株式会社から「栗のめぐみ1号」の商品名で販売される予定です。

関連情報

予算 : 運営費交付金、資金提供型共同研究
品種登録出願番号 : 第36360号 (令和4年7月12日出願、令和4年11月17日出願公表)

問い合わせ先など

研究推進責任者 :
農研機構北海道農業研究センター 所長 奈良部 孝

研究担当者 :
同 寒地野菜水田作研究領域 主任研究員 嘉見かみ 大助
朝日アグリア株式会社 種苗部 部長 小倉 健生

広報担当者 :
農研機構北海道農業研究センター 広報チーム長 花井 智也

詳細情報

開発の社会的背景

わが国で現在栽培されているセイヨウカボチャ品種は、つる性で着果位置が安定せず、収穫適期の果実を見つけるのに労力がかかることから、収穫作業の重労働が問題となっています。今後は機械を用いるなど労力の軽減が求められますが、その方策の一つとして、果実の着果位置が安定した品種の育成があげられます。また、国産のかぼちゃ果実は、食品加工業界から安定供給が求められており、そのため北海道から沖縄にかけて栽培できる品種が必要です。

研究の経緯

農研機構北海道農業研究センターでは、着果が株元に近く、着果位置が安定している短節間品種の育成を進めており、「TC2A」や「くりひかり」などの品種を開発してきました。しかし、これらの品種は気象条件により株元着果が安定しないなどの問題がありました。また、農研機構と朝日アグリア株式会社は、2017年よりかぼちゃの共同育成を進めており、これまでに短節間性を有し、大玉かつ良食味品種「AJ-139」などを開発してきました。こうした中で、高い短節間性・株元着果性の特徴を備え、かつ食味に優れた品種の育成に向けて選抜と交配を行い、今回「豊朝交1号」を育成しました。

新品種「豊朝交1号」の特徴
来歴

「豊朝交1号」は、農研機構北海道農業研究センターが開発した短節間性を有する「北海8号」 (花粉親) と朝日アグリア株式会社が開発した着果性に優れる「親G」 (種子親) とのセイヨウカボチャF1品種です。

主な特徴
  1. 「豊朝交1号」の主枝の伸長は生育初期から中期にかけて短節間性の草姿を示し (図1) 、株元着果率 (豊朝交1号 : 80.4%) は、既存品種 (えびす : 6.3%、芳香青皮栗 : 25.0%) よりも大幅に高く、果実の着果位置がより安定しています (表1) 。
  2. 雌花の開花時期は播種後48.7日と既存セイヨウカボチャ品種の「えびす」よりも約7日早く、「芳香青皮栗」とほぼ同等です (表1) 。なお、雄花の開花時期は、品種による大きな差はありません。
  3. 果実重量は1.3kgで「芳香青皮栗」より重く、「えびす」よりやや軽い傾向にあります。また、果実が扁円形で、果皮色は「芳香青皮栗」や「えびす」と比較して濃い緑色です (表1および図2) 。
  4. 「豊朝交1号」の果肉は濃い黄色です。果肉は「芳香青皮栗」より厚く、「えびす」と比較して同程度からやや厚い傾向にあります (表1および図3) 。果肉は粉質でホクホクした食感です。
栽培上の留意点
  1. 「豊朝交1号」は全国の早い時期に収穫する促成作型から西南暖地の遅い時期に収穫する抑制作型に向いています。病害抵抗性は既存品種と同程度であるため、産地に合わせた薬散防除を必要とします。
  2. 「豊朝交1号」は短節間品種であるため、800本/10aから1000本/10a程度の密植栽培が可能です。
  3. 「豊朝交1号」の貯蔵性は一般品種と大きく変わらない1~2か月程度となるため、長期貯蔵時には食感の低下および腐敗の増加が生じます。
品種の名前の由来

農研機構北海道農業研究センターの所在地である札幌市豊平区の「豊」と朝日アグリア株式会社の「朝」をとり、共同で交配をした中で一番目のF1品種であることから、この名前としました。

今後の予定・期待

「豊朝交1号」は、従来品種よりも着果位置が安定しやすく、果実が見つけやすいことから、整枝作業および収穫作業時の軽労化が図られます。そのため、かぼちゃ収穫が重労働であることから栽培を断念していた生産者や産地において普及を展開していきたいと考えています。今後は、機械化収穫体系につながることが期待されます。

なお、栽培用種子の販売は2023年以降の予定ですが、それまでの間、試験研究用試料として限定量の栽培用種子を有償提供することが可能です。その手続き等の詳細は下記の原種苗入手先へお問い合わせください。

原種苗入手先に関するお問い合わせ

朝日アグリア株式会社 種苗部

用語の解説
1)短節間性
かぼちゃの多くはつる性の植物ですが、生育全般または生育の中期まで茎が伸びず、節間 (葉が茎につく部分である節と節の間) が詰まった草姿を示すグループがあります。これらを短節間性品種としています。節間が短い品種はかぼちゃ果実の位置が揃いやすく、収穫時に見つけやすいというメリットがあります。
2)株元着果性
かぼちゃ品種の多くは株元から離れたところで着果をしますが、短節間性を有する品種の多くは株元近く (株元から70cm付近まで) に着果します。
3)整枝作業
かぼちゃは品種によって、果実肥大や着果数を安定させるために親つる一本仕立て、親つると小つる二本を残す三本仕立てに調整することがあります。また、かぼちゃは蔓が伸びる時期に放任してしまうと、あらゆる方向に蔓が伸び管理が大変になるため、目標方向に竹串や針金などで誘引します。あわせて誘引作業とともに、各節から発生するわき芽は適宜取り除き、通気性と採光性を良くします。これら一連の作業を整枝作業と言います。
4)果肉の粉質性
かぼちゃ果肉の食感を示します。粉質性が高い場合は加熱調理後にホクホクした食感になります。この粉質性を調査する際には、粉質性に正の相関がある果肉の乾物率を計測します。
参考図

表1 「豊朝交1号」の草姿および果実特性

数値は朝日アグリア株式会社 神川農場 (埼玉県神川町) におけるハウス立体栽培による2か年 (2020年~2021年) の栽培試験における平均値 (n=8) 。
Z 株元から10節までの長さを示す。
Y 株元から70cm以内に着果している果実を株元着果とした。

図1 かぼちゃの草姿

赤丸は定植位置、矢印は主枝の伸長方向を示す。

図2 かぼちゃ果実の外観

左上の白色のバーは10cmを示す。

図3 かぼちゃ果実の横断面

右下の白色のバーは10cmを示す

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