パン用小麦品種「はる風ふわり」の普及拡大~ 製パン性が優れる国産小麦の安定供給に期待~

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2022-11-08 農研機構

ポイント

農研機構が育成したパン用小麦品種「はる風ふわり」が2022年6月に品種登録されました。本品種は西日本地域で栽培されている主要なパン用小麦品種「ミナミノカオリ」より穂発芽耐性が優れ、収穫物の品質低下のリスクが下がるとともに、製パン性が高品質の輸入小麦並みに優れています。本品種は佐賀県を中心に栽培面積が拡大しています。

概要

「はる風ふわり」の草姿

西日本地域で栽培されているパン用小麦品種「ミナミノカオリ」は、収穫時期が梅雨に重なることから降雨により生じる穂発芽1)による品質低下がしばしば問題となっていました。また、実需者からは製パン性2)が輸入小麦並みに優れる品種の育成が求められていました。
農研機構は「ミナミノカオリ」より穂発芽耐性が優れ、製パン性がカナダ産の輸入小麦銘柄1CW3)並みに優れる「はる風ふわり」を育成しました。本品種は2019年に品種登録出願され、2022年に品種登録されました。佐賀県では2020年度に奨励品種に採用され、県内の栽培面積は2021年産で432ha、2022年産で約1,000haと拡大しています。生産量の増加に伴い、2021年から本品種がブレンドされた小麦粉の大手事業者による販売が開始されました。今後、西日本地域での栽培に向くパン用小麦として普及拡大が期待されます。

関連情報

予算:生研支援センター「イノベーション創出強化研究推進事業」(JPJ007097)および運営費交付金
品種登録番号:第29273号(令和4年6月28日登録。令和4年7月13日公表。)

問い合わせ先

研究推進責任者 :
農研機構九州沖縄農業研究センター 所長 森田 敏

研究担当者 :
同 暖地水田輪作研究領域 上級研究員 谷中 美貴子

広報担当者 :
同 研究推進室 広報チーム長 仲里 博幸

詳細情報

「はる風ふわり」育成の背景と経緯

西日本地域で栽培されているパン用小麦品種「ミナミノカオリ」は、成熟期が遅く、穂発芽しやすいため、収穫時期が梅雨と重なることから降雨により引き起こされる穂発芽による品質低下がしばしば問題となっていました。また、実需者からは「ミナミノカオリ」と同等以上に子実タンパク質含量が多く、製パン性が輸入小麦並みに優れる品種の育成が求められていました。そこで農研機構では、穂発芽耐性が優れる日本めん用系統「西海188号」と、製パン性に優れるパン用系統「北見春66号」との交配により、「ミナミノカオリ」より穂発芽耐性及び製パン性が優れる「はる風ふわり」を育成しました。

「はる風ふわり」の特徴

西日本地域で栽培されているパン用小麦品種「ミナミノカオリ」と比べて、以下の特徴を持っています。

【生産者向け】(表1参照)

1.穂発芽耐性は”中”で「ミナミノカオリ」より優れます。

2.子実のタンパク質含量は「ミナミノカオリ」より約0.5%高いです。

3.「ミナミノカオリ」より出穂期は2~3日、成熟期は4日早いです。

4.「ミナミノカオリ」と比べて、収量はやや少なく、容積重は同程度、千粒重はやや小さいです。赤かび病4)抵抗性は”やや弱~中”であるため、適切に防除を行う必要があります。

5.佐賀県が作成した「パン用小麦「はる風ふわり」栽培マニュアル」が公開されています。
URL:https://www.pref.saga.lg.jp/kiji00322235/3_22235_201838_up_jrd0uylx.pdf

【実需者、消費者向け】(図1参照)
製パン評価では、「ミナミノカオリ」より吸水性5)や食感などの評価点が高く、カナダ産の輸入小麦銘柄1CW並みに製パン性に優れます。

品種の名前の由来

九州から春の訪れを告げる春風にのって、”ふわり”とした食感のパンが全国へ広がることを願って名付けられました。

普及状況と今後の予定・期待

佐賀県において2020年産より産地品種銘柄に設定、2020年度に奨励品種に採用され、2022年産の栽培面積は約1,000haまで拡大しました。2021年より理研農産化工株式会社(佐賀市)から本品種がブレンドされた小麦粉が販売されています(図2)。
今後、西日本地域での栽培に向くパン用小麦としてさらに普及が進み、本品種を活用した製品の開発、販売が拡大されることが期待されます。

原種苗入手先に関するお問い合わせ

原種苗については、下記のメールフォームからお問い合わせください。
農研機構HP【研究・品種・特許についてのお問い合わせ】

利用許諾契約に関するお問い合わせ

下記のメールフォームでお問い合わせください。
農研機構HP【研究・品種についてのお問い合わせ】

なお、品種の利用については以下もご参照ください。
農研機構HP【品種の利用方法についてのお問い合わせ】

用語の解説
1)穂発芽
小麦の収穫時期に降雨が続いた場合に、種子が穂についたまま発芽する現象。発芽すると種子中のアミラーゼ活性が高まり、でんぷんが分解されます。穂発芽した小麦は商品価値がなくなります。
2)製パン性
パン用には主に強力粉が使われていますが、タンパク質の量が多く、粘弾性のバランスがよい生地ができる小麦粉がよいとされています。製パン性は、パン生地を作る際に必要な水の量(吸水性)や、パン生地を取り扱う際の作業性、焼きあがったパンの体積や食感などの官能評価により評価されます。
3)1CW
No.1 Canada Western Red Spring(No.1カナダ・ウェスタン・レッド・スプリング)の略で、カナダから輸入されているパン用小麦銘柄です。No.1は一番上の等級を表し、品質は良好で安定しており、パン用として高く評価されています。
4)赤かび病
小麦の出穂期以降に湿潤な気象条件が続いて赤かび病菌が穂に感染することで発生する病気です。収量や品質の低下だけでなく、人や家畜に有害なかび毒が生成されます。農産物検査において混入していないこと(混入率0.0%)、かび毒(デオキシニバレノール)の基準値を超えないことが定められているため、適切に防除する必要があります。
5)吸水性
パン生地を作る際に小麦粉100に対して加える水の量(吸水率)で評価され、水を多く含む方がパン用として好ましいとされています。製パン時の吸水率は、ファリノグラフという機器で測定した一定のかたさの生地を作るための吸水率を参考にして決められます。
参考図

表1.「はる風ふわり」の主な特性
図1.「はる風ふわり」の製パン評価
製パン評価は九州地域麦類品質評価協議会で実施.カナダ産パン用輸入小麦銘柄1CWの評価点を80点とする相対評価.各評価項目の括弧内は配点を表す.総合評価は吸水性評価点、作業性評価点、官能評価点(吸水性と作業性以外の項目の評価点の合計の6割)の和から算出.「はる風ふわり」と「ミナミノカオリ」は農研機構九州沖縄農業研究センターの収穫物.2015~2020年産の試験の平均.
図2.「はる風ふわり」がブレンドされた小麦粉製品

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