2022-09-30 京都大学,核融合科学研究所
夜空にきらめく星々、それらは核融合エネルギーによって輝いています。エネルギー問題を恒久的に解決するため、太陽や星々が何十億年も輝き続けるエネルギー源を地上に実現する、核融合発電の研究が進展しています。そのためには、超高温の核融合プラズマを閉じ込め、核融合反応を維持する技術の確立が必須です。
京都大学エネルギー理工学研究所の大島慎介助教、門信一郎准教授、長﨑百伸教授、同大学エネルギー科学研究科の鈴木琢土修士課程学生(研究当時)、的池遼太同博士課程学生(研究当時、現:量子科学技術研究開発機構)、核融合科学研究所の本島厳准教授らの共同研究グループは、磁場閉じ込め核融合プラズマへの燃料供給ペレット周辺に形成される“揺らぎ”を発見しました。
核融合炉では、太陽の中心温度を超える1億度超の超高温プラズマ中心部に、燃料供給のための水素の氷(ペレット)を弾丸のように打ち込むことが必要とされます。今回の研究では、京都大学エネルギー理工学研究所のヘリオトロン J 装置で生成した1千万度を超える高温プラズマに、核融合科学研究所が開発した水素ペレット入射装置を用いて時速~900 km でペレットを打ち込み、プラズマ中でペレットが溶ける様子を 10 万分の1秒で撮影可能な高速カメラで観測しました。得られた画像の解析によって、ペレットが溶ける過程において“揺らぎ”が生まれ、三次元的に伝搬していることを解明しました。“揺らぎ”は、身近なところでは蛇口から流れ出る水の揺らぎ・立ち上る煙の揺らぎ・川や海の流れから、天体規模の現象であるオーロラ・太陽や木星表面に観測される揺らぎまで、自然界において普遍的に存在し、様々な機能を果たしています。超高温プラズマと水素の氷が共存する極限状況における“揺らぎ“の発見は、将来の核融合炉でのペレットによる燃料供給・持続的燃焼の実現においても、”揺らぎ“の発生機構・機能を解明・理解し、精緻(せいち)に制御することの重要性を初めて示しました。
本成果は、2022 年 8 月 20 日に英国の国際学術誌「Scientific Reports」にオンライン掲載されました。
図 ヘリオトロン J 装置とその磁場構造、そして観測されたペレット周辺の“揺らぎ”構造(京都大学 提供)