2022-09-15 愛媛大学
ポイント
- 「深発地震」は多大な被害を引き起こすこともあるが、その発生メカニズムはよくわかっていなかった。
- 世界で初めて、深発地震が発生する深さ約470kmまでの圧力(約16万気圧)条件下で、マントル鉱物(カンラン石)が変形・破壊する様子を、X線その場観察と微小破壊に伴う超音波(AE)測定により捉えた。
- この結果、特定の温度でカンラン石がナノ粒子化し、断層すべりを引き起こし、深発地震発生に至ることがわかった。また断層面では、2000℃をはるかに越える極めて高い温度が発生したことも確認された。
- 深発地震は、準安定的に存在するカンラン石がナノ化する、沈み込むプレートの特定の場所でのみ発生することが示された。
概要
愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センターの大内智博准教授、入舩徹男教授と高輝度光科学研究センターの肥後祐司研究員らの研究チームは、今まで不明だった深さ400~600kmで発生する「深発地震」の発生原因の解明につながる実験に成功しました。
深発地震が発生する地下条件に相当する高温高圧下での地震発生モデル実験によって、特定の温度(850℃周辺)のみにおいてカンラン石のナノ粒子化が進行し、このナノ粒子層への変形エネルギーの集中と部分的溶融が起きる結果、深発地震に至ることを明らかにしました。 本研究の結果は、長年謎に包まれていた深発地震の発生メカニズムの有力な説明になるとともに、深発地震の発生がプレート深部の特定の場所(「準安定カンラン石ウェッジ(MOW)」と呼ばれる領域の表面付近)に限定されることを意味しています。今後、そのような領域を継続的に監視することによって、深発地震の発生場所・発生頻度・規模などをモデル化するための手掛かりが得られるものと期待されます。
本研究成果は、英国の科学雑誌「Nature Communications」に9月15日に掲載されました。
日本列島下に沈み込むプレートと深発地震
論文情報
掲載誌:Nature Communications
題名:In situ X-ray and acoustic observations of deep seismic faulting upon phase transitions in olivine
(和訳:カンラン石の相転移によって起きる深部断層すべりを放射光その場観察実験によって再現)
著者:Tomohiro Ohuchi(大内智博), Yuji Higo(肥後祐司), Yoshinori Tange(丹下慶範), Takeshi Sakai(境毅), Kohei Matsuda(松田光平), Tetsuo Irifune(入舩徹男)
DOI:10.1038/s41467-022-32923-8
本件の問い合わせ先
(研究に関すること)
愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター 准教授 大内 智博
愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター センター長・教授 入舩 徹男
高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター
回折・散乱推進室 主幹研究員 肥後 祐司
(愛媛大学に関すること)
愛媛大学総務部広報課
愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター(GRC)
(SPring-8に関すること/SACLAに関すること)
公益財団法人高輝度光科学研究センター(JASRI) 利用推進部 普及情報課