顕著な大雨をもたらす線状降水帯の自動検出技術を開発

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2021-06-11 防災科学技術研究所,日本気象協会,気象庁気象研究所,内閣府

国立研究開発法人防災科学技術研究所(理事長:林春男)、一般財団法人日本気象協会(会長:春田謙)及び気象庁気象研究所(所長:小泉耕)は、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)において、「顕著な大雨をもたらす線状降水帯の自動検出技術」を開発しました。
本技術は気象庁に採用され、2021年6月17日から気象庁による運用が開始されます。

1.内容: 【詳細は別紙資料】
国立研究開発法人防災科学技術研究所をはじめとする研究グループ*1は、戦略的イノベーション創造プログラム*2「国家レジリエンス(防災・減災)の強化」において、大雨による災害発生の危険度が急激に高まっている中で、非常に激しい雨が同じ場所で降り続いている線状降水帯の検出条件を定め、自動的に検出する技術を開発しました。
今回開発した自動検出技術は、これまで学術的に用いられてきた線状降水帯の検出手法を踏まえたもので、
①解析雨量や気象庁の危険度分布を活用することで、災害発生の危険度が急激に高まっている地域における線状降水帯を検出することが可能。
②警戒レベル4相当(自治体が避難指示を発令する目安)以上の状況があることを把握することが可能*3
となりました。 本技術は、気象庁の「顕著な大雨に関する情報」に実装し、2021年6月17日から運用が開始され、災害発生の危険度が急激に高まっていることを知らせるための解説情報として配信されます。今後、線状降水帯の予測にも貢献できるよう、更なる検出技術の向上に向けて研究を進めていきます。
*1 研究グループ:国立研究開発法人防災科学技術研究所、一般財団法人日本気象協会、気象庁気象研究所
*2 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP: Cross-ministerial Strategic Innovation Promotion Program)
総合科学技術・イノベーション会議(CSTI) が司令塔機能を発揮して、府省の枠や旧来の分野を超えたマネジメントにより、科学技術イノベーション実現のために創設した国家プロジェクト。
*3 線状降水帯の全てを検出するわけではなく、警戒レベル4相当以上の状況下の線状降水帯を検出。
(別紙資料)顕著な大雨をもたらす線状降水帯の自動検出技術を開発
1.背景
強雨が数時間以上にわたって継続し、河川氾濫や土砂災害等の深刻な被害を引き起こす集中豪雨の発生が近年多発しています。気象庁気象研究所(以下「気象研究所」という。)の研究によると、台風の直接的な影響によるものを除く集中豪雨の6割以上は、線状降水帯(注)によって引き起こされていると言われています。2017年7月5日九州北部、2018年7月5日全国(広範囲)、2019年8月26日佐賀県、2020年7月4日熊本県及び7月6日九州北部など、毎年のように線状降水帯による大雨で甚大な水害・土砂災害が発生しており、線状降水帯をリアルタイムで把握する技術開発は喫緊の課題となっています。
内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の課題「国家レジリエンス(防災・減災)の強化」において2018年度から実施している、線状降水帯の新たな観測・予測システムの開発プロジェクト(研究代表者:防災科学技術研究所 清水慎吾)では、参画する一般財団法人日本気象協会(以下「日本気象協会」という。)が中心となり、顕著な大雨をもたらす状況を適切に捉えることが可能となる線状降水帯の自動検出技術の開発を進めてきました。
(注)
線状降水帯は、「次々と発生する発達した雨雲(積乱雲)が列をなした、組織化した積乱雲群によって、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞することで作り出される、線状に伸びる長さ50~300 km程度、幅20~50 km程度の強い降水をともなう雨域」を指す。
線状降水帯の形成・維持のメカニズムには未解明の点が多いことに加え、“線状に伸びる降水域”を認識でき、かつ、災害につながる雨量の具体的な閾値は地域によって幅が大きいことから、その明確な定義は難しいとされている。
一方で、防災上の様々な対応に向けた実用的視点からは、“災害を引き起こす、停滞性が認められる”線状降水帯の客観的な基準を設定し、その検出に基づく情報提供が必要とされている。
2.線状降水帯自動検出技術の開発
(1)第1期SIP(2014年から2018年)における線状降水帯検出技術の開発
国土交通省水管理・国土保全局 砂防部において、重大な土砂災害につながる可能性のある「線状降水帯」を早期に検知する機能をもつ「土砂災害危険度評価システム」が構築されました。
(国土交通省報道発表資料 https://www.mlit.go.jp/report/press/sabo01_hh_000084.html<?XML:NAMESPACE PREFIX = “[default] http://www.w3.org/2000/svg” NS = “http://www.w3.org/2000/svg” />
(2)第2期SIPにおける線状降水帯検出技術の開発
第2期SIPでは、第1期SIPで開発された線状降水帯の検出技術を高度化させるために、日本気象協会が中心となって、気象研究所が開発した線状停滞型の強雨域の検出手法をもとに、解析雨量の3時間積算を用いた線状降水帯自動検出技術を導入しました。
次の3つの客観的条件を満たす雨域を、線状降水帯として検出するものです。3つの客観的条件を満たす雨域:
①3時間積算降水量が80mm以上の分布域が線状(長軸対短軸の比が2以上)
②その面積が500平方キロメートル以上
③上記①の領域内の3時間積算降水量の最大値が100mm以上

図1 2020年7月4日2時(日本時)における3時間積算雨量と自動検出結果(紫色の楕円)。

日本気象協会は、この手法を用いたリアルタイム監視システムを構築し、2019年から九州地域の自治体との実証実験を開始してきており、令和2年7月豪雨において、九州で図1を含む13個の線状降水帯を検出しました(日本気象協会防災レポート https://www.jwa.or.jp/news/2020/07/10461/)。
図1に示すように、自動検出した線状降水帯の領域を楕円で近似することで、線状降水帯の位置と形状(範囲)を4つの変数(中心位置、長軸半径、短軸半径、及び回転角度)で表現でき、地図上で他の情報(大雨警報発表地域等)と容易に線状降水帯の位置を重ね合わせることが可能となりました。
より厳しい検出条件を設定(①の条件を80 mmから100 mmに、③の条件を100 mmから150 mmに変更し、抽出後3時間は時空間的な連続性が高い場合同一のものとみなす)した上で、全国を対象として2017年から2020年の月別の検出数を表1にまとめました。4年間の年平均で93回の検出となりますが、その全ての事例で大雨による著しい災害が発生したわけではありません。

表1 SIP方式(積算降水量に基づく検出回数:一次細分区域*4単位)。

*4 1次細分区域とは、府県天気予報を定常的に細分して行う区域。気象庁は、 気象特性、災害特性及び地理的特性により 府県予報区を分割しています。
(3)気象庁実装に向けた開発
気象庁では、災害発生の危険度が急激に高まっている中で、線状の降水帯により非常に激しい雨が同じ場所で降り続いている状況を「線状降水帯」というキーワードを使って解説する情報の運用開始を目指しています。そこで、気象庁と協議の上、第2期SIPで開発した検出技術を基に、表1の積算雨量基準と気象庁の危険度分布を組み合わせ、検出条件をより厳しくすることで(以下の4つの検出条件へ変更)、警戒レベル4相当以上の状況を想定した、年平均44回程度の、災害発生の危険が急激に高まっている地域における線状降水帯の検出が可能となりました(表2)。
2021年6月17日から、本成果に基づく気象庁の「顕著な大雨に関する情報」の提供開始が予定されるなど、着実な社会実装が進んでおり、今後、更なる検出技術の向上に向けて研究を進めていきます。4つの検出基準:
①3時間積算降水量が100mm以上の分布域が線状(長軸対短軸の比が2.5以上)
②その面積が500平方キロメートル以上
③上記①の領域内の3時間積算降水量の最大値が150mm以上
④大雨警報(土砂災害)の危険度分布において土砂災害警戒情報の基準を実況で超過(かつ大雨特別警報の土壌雨量指数基準値への到達割合8割以上)又は洪水警報の危険度分布において警報基準を大きく超過した基準を実況で超過

表2 気象庁実装方式(危険度分布も加味した検出回数:一次細分区域単位)。

参考文献:
津口裕茂, 加藤輝之 (2014): 集中豪雨事例の客観的な抽出とその特性・特徴, 天気, 61,455-469.
Hirokawa Y., T. Kato, H. Tsuguti and N. Seino (2020): Identification and classification of heavy rainfall areas and their characteristic features in Japan., J. Meteor. Soc. Japan. 98, 835–857. https://doi.org/10.2151/jmsj.2020-043

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