AI を利用し「量子指紋」を解読することに成功~電気抵抗からナノ微細構造を再現~

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2022-06-08 東京大学

1.発表者:
大門 俊介(東京大学 大学院工学系研究科物理工学専攻・Beyond AI 研究推進機構 助教)
大槻 東巳(上智大学 理工学部機能創造理工学科 教授)
齊藤 英治(東京大学 大学院工学系研究科物理工学専攻・Beyond AI 研究推進機構 教授/東北大学 材料科学高等研究所 主任研究者)

2.発表のポイント:
◆ ミクロなレベルでの試料の構造や不純物などの情報を持つ「量子指紋」を理解できる AI を開発した。
◆ 電気抵抗由来の量子指紋を解読することで、電気抵抗の情報のみから金属内部のミクロな構造を復元することに成功した。
◆ AI を利用したナノ構造顕微鏡への応用が可能であると考えられ、次世代エレクトロニクスデバイス開発への貢献が期待される。

3.発表概要:
東京大学大学院工学系研究科・Beyond AI 研究推進機構の大門俊介 助教、齊藤英治教授らを中心とする研究グループは、上智大学理工学部の大槻東巳 教授らと共同で量子を理解する AI を開発し、電気抵抗の情報から試料のナノ微細構造を復元することに成功しました。電気抵抗は、物質の中での電子の流れやすさを表します。金属などの物質は物質固有の電気抵抗の値をもち、同じ大きさの金属はおおよそ同じ電気抵抗を示します。しかしながら、ナノメートル(1 mm の 1000000 分の 1 の長さ)というとても小さな世界では、量子力学(注1)が電子の運動を支配し、この状況は一変します。電子が波のように金属中を漂い、金属の表面や障害物に散乱された多くの波が干渉し、波の強め合い・弱め合いによって電気抵抗が大きく変化します(図 1)。言い換えれば、電気抵抗に金属の形状や障害物の分布などのミクロな情報が含まれているのです。しかしながら、このような量子力学的な波の干渉は極めて複雑で、電気抵抗からミクロな情報を復元することは夢物語とされてきました。
今回、大門助教らは、量子力学的な干渉(注2)を解読する AI を開発し、電気抵抗の情報だけから金属内部の微細な構造を復元することに成功しました(図 2)。近年の目覚ましい発展により、AI が人知を超える精度でデータを認識できることに着目し、量子干渉の解読に特化した AI を開発しました。開発した AI は一見ランダムに見える電気抵抗の変化に法則性を見出し、電気抵抗のデータだけから金属内部のミクロな構造、ひいては量子力学的な干渉の情報を引き出すことができます。
本研究成果は、英国科学雑誌「Nature Communications」に 2022 年 6 月 8 日(英国時間)に掲載されました。

詳しい資料は≫

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