光がつくる電子のレンズ ~原子ひとつまで分解する電子顕微鏡の実現に向けた新技術を提案~

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2022-04-11 東北大学多元物質科学研究所,科学技術振興機構

光がつくる電子のレンズ ~原子ひとつまで分解する電子顕微鏡の実現に向けた新技術を提案~

ポイント
  • 光ビームが電子顕微鏡の探針として用いる電子ビームを絞り込む「光場電子レンズ」として機能することを幾何光学に基づいて示した
  • このレンズが電場や磁場を用いる従来のレンズでは実現できない「負の球面収差」を発生することを示した
  • 光場電子レンズを用いることで将来的に原子分解性能を持った電子顕微鏡を広く普及できると期待される

電子顕微鏡は、ウイルスなどの微小物、半導体デバイスの微細構造、さらには物質の原子配列をも可視化できる観察ツールです。こうした高い分解能を達成するには、探針となる電子ビームを、原子ひとつの大きさに匹敵する0.1ナノメートル(1ナノメートル=10億分の1メートル)以下にまで絞り込む必要があります。東北大学 多元物質科学研究所の上杉 祐貴 助教らの研究グループは、これまで電場や磁場で構成されていた、電子ビーム集束用のレンズを、レーザーなどの強力な光ビームによる「光場」で実現する、新しい手法を発案しました。

この「光場電子レンズ」に対して、幾何光学に基づいた理論的な解析により、焦点距離や球面収差を導くための重要な基礎となる公式を整備しました。これにより、誰でも容易に光場電子レンズを設計することが可能になります。また、光場電子レンズが従来のレンズでは実現できない「負」の球面収差を発生し、極小の電子ビームサイズを得るのに必要な、収差補正器としても利用できることを示しました。構造が複雑で高価な従来の磁場を用いる収差補正装置を光場電子レンズで置き換えることで、高分解能の電子顕微鏡装置を広く普及できると期待されます。

本成果は、英国時間の4月7日(木)付で、英国物理学会( Institute of Physics:IOP)の出版部門が提供する学術雑誌「Journal of Optics」誌において、新進気鋭の若手研究者を特集する「Emerging Leaders Collection」に掲載されました。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 さきがけ「光子-電子誘導非線形散乱による新規光学技術の創出(JPMJPR2004)」、科学研究費補助金「基盤研究B(20H02629)」による支援を受けて行われました。

詳しい資料は≫

<論文タイトル>
“Properties of electron lenses produced by ponderomotive potential with Bessel and Laguerre-Gaussian beams”
DOI:10.1088/2040-8986/ac6524
<お問い合わせ先>

<研究に関すること>
上杉 祐貴(ウエスギ ユウキ)
東北大学 多元物質科学研究所 助教

<JST事業に関すること>
嶋林 ゆう子(シマバヤシ ユウコ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ

<報道担当>
東北大学 多元物質科学研究所 広報情報室
科学技術振興機構 広報課

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