すばる望遠鏡 星空ライブカメラ、希有な「流星クラスター現象」を捉える

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2021-08-02 国立天文台

7月14日未明 (ハワイ時)、ハワイ島マウナケアのすばる望遠鏡ドームに設置された「星空ライブカメラ」が、大変珍しい「流星クラスター現象」を捉えました。

動画:星空ライブカメラが捉えた、流星クラスターの動画。発生はハワイ時7月14日午前3時58分 (世界時同日13時58分)。手前はマウナケア観測所群のドーム。 (クレジット:国立天文台・朝日新聞社)

すばる望遠鏡「星空ライブカメラ」(注1) は、2021年4月の設置以来、マウナケア上空に広がる素晴らしい星空を毎日配信しています。多い日には、一晩に数百人もの方々が天文台群の上に広がる美しい夜空を楽しんでいます。
7月14日未明、この星空カメラが、わずか 10 秒ほどの間に 10 数個もの流星が同じ方向から一度に流れる、という現象を捉えました。
これは「流星クラスター」と呼ばれる希有な現象で、流星物質が地球大気に突入する少し前に、何らかの原因で細かい破片に分裂したために発生した、と考えられています。流星体の構造に関する情報をもたらす貴重な現象で、1997年のしし座流星群の際に初めて観測されました。その後も、わずか数例しか報告されていません (注2)。
この「流星クラスター」現象の発生メカニズムを2003年に発表 (注3) した、国立天文台副台長の渡部潤一上席教授は、以下のようにコメントしています。
「このような珍しい現象を捉えられた科学的意義はきわめて大きく、特に、全体の継続時間が従来のケースに比べて長いことが特徴で意義深いです。カメラの性能の進歩もありますが、マウナケアという世界第一級の観測サイトにカメラがあった事も、こうした希有な現象を捉えた大きな要因でしょう。これからもこのカメラが同じような珍しい現象を捉えていくことに期待しています」
この現象を最初に発見したのは、「星空ライブカメラ」を見続けてくださっている熱心な視聴者の皆さんです (注4)。通称「ふくろーさん」は「最初は小さな流星が続いて流れたとしか思っていませんでしたが、集計のため再確認したところ、小さな流星が同じ方向からいくつも同時に見えてるのに気づきました」とコメントしています。
チャット上での記述から稀な現象が起きた可能性を感じた、ハワイ観測所の研究者でカメラ管理者でもある田中壱氏が、渡部上席教授に問い合わせをした事から、この映像が注目される事になりました。現在このデータは研究者による詳細な分析が行われています。
すばる望遠鏡星空ライブカメラは、マウナケアの素晴らしい星空をハワイや日本だけではなく、世界中の星を愛する子どもたちへ届けたいという願いから、吉田道利 ハワイ観測所長の後押しにより設置されました。これからも、ハワイの財産である美しい星空と宇宙の姿を、多くの人々に伝えていくことでしょう。
(注1) すばる望遠鏡星空ライブカメラは、国立天文台ハワイ観測所と朝日新聞の共同プロジェクトです。報道目的で使用する場合は、「国立天文台・朝日新聞社提供」のクレジットをお願いいたします。
(注2) 2016年9月、チェコの観測により「9月ペルセウス座ε流星群」で2秒間にわたって8つの流星が出現しているのがクラスターとして捉えられている他、今年の1月18日にはアリゾナ大学のカメラにより、3秒間に7つの流星が出現したクラスターが捉えられたことが報告されています。
2016年の流星クラスターに関する論文
2021年の流星クラスターに関する報告
(注3) J. Watanabe et al., Publications of the Astronomical Society of Japan, Vol.55, No.3, pp. L23-L26
(注4) 日頃熱心に星空ライブカメラを見ていてくださっている、あすかさん、kageたんさん、koruri0717 さん、とらぺじうむさん、Junko. T さん、ろっこつさん、こたつ犬さん、yukko 3 さん、To Bo さん、La reine さん、つくば鹿島さん、熊坂里子さん、Arkiアーキさん、mai fujion さん、ロプノールs さん、雨晴ちゃんback さんはじめ、多くの視聴者・サポーターの方々に、この場を借りて感謝いたします。

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