液体硫黄を活用した高速充放電可能な マグネシウム電池用正極複合材料の開発に成功

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2021-07-26 東北大学 金属材料研究所,東北大学 学際科学フロンティア研究所,科学技術振興機構

ポイント
  • 中温イオン液体中で、硫化鉄などの硫化物から金属成分を電気化学的に脱離することにより、液体硫黄/硫化物複合材が作製可能であることを示しました。
  • マグネシウム電池系において、従来型酸化物系正極材料の充放電速度のおよそ100倍に迫る高速充放電が可能であることを実証しました。
  • 硫化物からの金属成分脱離により生成した液体硫黄は非平衡状態にあり、未緩和状態における放電では、通常より高い起電力を示しました。

次世代蓄電池であるマグネシウム蓄電池の正極材料候補として酸化物系材料が検討されていますが、より高容量を実現できる硫黄系正極材料の研究が近年盛んに行われています。

東北大学 金属材料研究所の下川 航平 助教(本務:学際科学フロンティア研究所)、古橋 卓弥 氏(東北大学 大学院工学研究科 修士課程学生)、および市坪 哲 教授らの研究グループは、同研究所の加藤 秀実 教授ら、産業技術総合研究所の松本 一 上級主任研究員と共同で、電気化学反応を利用したトップダウン的手法により、マグネシウム蓄電池正極に適した高性能な硫黄/硫化物複合材料の作製に成功しました。この硫黄系複合材料は、マグネシウム蓄電池用正極材料として蓄電容量、充放電速度、サイクル特性などの点において高い性能を有することが示されました。また、充電直後の硫黄の非平衡状態(高いエネルギー状態)を利用することにより、熱力学的に想定される電位よりも高電位で放電できることも示されました。これは硫黄の新しい利用法を示すものであり、今後の硫黄系正極材料の開発に拍車をかける結果であると期待されます。

本成果は、2021年7月26日(英国時間)に英国王立化学会の学術誌「Journal of Materials Chemistry A」にオンライン掲載されます。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 先端的低炭素化技術開発・特別重点技術領域「次世代蓄電池」(ALCA-SPRING)(JPMJAL1301)の支援を受けて実施されました。

詳しい資料は≫

<論文タイトル>
“Electrochemically Synthesized Liquid-Sulfur/Sulfide Composite Materials for High-Rate Magnesium Battery Cathodes”
DOI:10.1039/D1TA03464B
<お問い合わせ先>

<研究に関すること>
下川 航平(シモカワ コウヘイ)
東北大学 金属材料研究所 先端・萌芽研究部門 助教

市坪 哲(イチツボ テツ)
東北大学 金属材料研究所 構造制御機能材料学研究部門 教授

<JST事業に関すること>
加藤 真一(カトウ シンイチ)
科学技術振興機構 未来創造研究開発推進部 低炭素研究推進グループ

<報道担当>
東北大学 金属材料研究所 情報企画室 広報班
科学技術振興機構 広報課

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