ガニメデの表面に太陽系最大の衝突クレーターを発見

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2020-07-27 国立天文台

4次元デジタル宇宙ビューワー「Mitaka」で再現した木星(左)と衛星ガニメデ(右)。ガニメデ表面の暗い色の領域には、平行に走る溝状の構造「ファロウ」が見える。(クレジット:加藤恒彦、国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト) オリジナルサイズ(5.7MB)

木星の衛星ガニメデは、冥王星や水星よりも大きく太陽系最大の衛星です。ガニメデの誕生や進化を解明することは、木星の衛星系の形成を理解するだけでなく、太陽系全体の歴史を知ることにもつながります。1979年と1980年には惑星探査機ボイジャー1号・2号が、さらに1995年から2003年にかけては木星探査機ガリレオが、多くのガニメデの画像データを取得しました。これらの探査から、ガニメデの表面には古い地質から成る暗い色の領域と、新しい地質の明るい色の領域とが存在することが分かっています。このうち暗い領域には「ファロウ」と呼ばれる溝状の地形が存在し、ガニメデで最も古い地形であると考えられてきました。

神戸大学と大島商船高等専門学校の研究者から成る研究チームは、このファロウに着目し、過去の探査画像を詳細に再解析してガニメデの歴史の復元を試みました。その結果、ファロウがある一点を中心に同心円状に分布し、ガニメデの表面全体に及ぶ多重リング構造になっていることを初めて明らかにしました。これは、かつてのガニメデの表面全体に、多重リングクレーターが存在していたことを示唆しています。半径7800キロメートルに及ぶ太陽系最大規模の衝突クレーターの発見です。

さらに研究チームは、この巨大クレーターを形成した衝突の規模を推定するために、国立天文台が運用する「計算サーバ」を用いてシミュレーションを行いました。半径150キロメートルほどの小惑星が秒速20キロメートルの速度でガニメデに衝突したとすれば、観測されたクレーターの構造を説明することができます。また、この衝突は40億年以上前に起こったと考えられます。こういった大規模な衝突の痕跡は、ガニメデの形成過程に重要な示唆を与えます。ガニメデの内部には岩石と鉄と氷が分化した層構造が存在すると考えられていますが、これが大規模な天体衝突で発生した熱によって形成された可能性があるのです。

さらに本研究は、2030年代に予定されているガニメデの探査計画においても重要な意味を持ちます。欧州宇宙機関(ESA)が進める木星氷衛星探査計画(JUICE)では、可視分光映像カメラや、国立天文台が開発に参加するレーザ高度計(注)を用いて、ガニメデの詳細な地形を調査します。この探査で多重リングクレーターの構造の解析を進め、本研究の結果を検証できると期待されています。

本研究成果は、Hirata et al. “A global system of furrows on Ganymede indicative of their creation in a single impact event” として、米国の国際惑星科学誌『イカルス』オンライン版に2020年7月15日に掲載されました。

(注)レーザ高度計(GALA)は、ドイツ航空宇宙センターが中心となり、スイスやスペイン、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)、千葉工業大学、大阪大学、国立天文台などが開発に携わっています。

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