生まれたばかりの宇宙で成熟した銀河が急速に出現していた

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アルマ望遠鏡による初期宇宙にある銀河の最大規模の探索

2020-10-28 国立天文台

図:アルマ望遠鏡で観測した大量の塵を含む2つの銀河の画像
研究グループが、アルマ望遠鏡を用い電波で観測した初期宇宙の銀河のうちの2つ。銀河は大量の塵(黄色部分)を含んでおり、原始的な状態ではなく比較的成長していると考えられる。加えて、アルマ望遠鏡は銀河における星形成の様子や星の動きを調べるために注目されるガス(赤色部分)の様子も明らかにした。(Credit: B. Saxton NRAO/AUI/NSF, ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), ALPINE team) オリジナルサイズ(126KB)


アルマ望遠鏡を用いた観測から、初期宇宙で成長途上にある銀河を多数調べたところ、多くの銀河が大量の塵(ちり)や重い元素を含むという結果となり、従来の予想に反して銀河の成長が進んでいたことが明らかになりました。さらに研究を進展させることで、銀河の成長が早かった理由や、その後の銀河の進化について、解明が進められると期待されます。

ほとんどの銀河は、宇宙がごく若い時期に形成されました。たとえば天の川銀河は、宇宙の誕生から2億年後にあたる、現在から136億年前に形成され始めたと考えられています。宇宙が誕生してから10ないし15億年後の初期の宇宙では、多くの銀河が急速に成長しました。大量の星、星間塵(せいかんじん)や重い元素の量の増加、渦巻き状の円盤構造といった現在の宇宙で見られる銀河の特徴は、この成長期に作られていったとされています。銀河の形成・成長史を理解するには、この初期宇宙にある銀河を観測し研究することが重要になります。

アルマ望遠鏡ではこれまで、初期宇宙の銀河がいくつか観測されてきましたが、そこで捉えられた成長の特徴が初期宇宙に普遍的なものなのか、それとも特殊なものなのかは未解明でした。今回の研究を進めた国際研究チームは、118個という多数の銀河を観測し、一般的な銀河がこれまでに考えられていたよりも早く成長した可能性があることを示しました。研究チームは今後、アルマ望遠鏡の電波観測に加え、可視光線や赤外線での観測データを収集し、初期宇宙における銀河進化の謎の解明にこれからも挑んでいきます。

この研究チームでは、東京大学のJohn D. Silverman(ジョン・シルバーマン)准教授が代表研究者の一人を務めています。また、国立天文台および早稲田大学の札本佳伸(ふだもと よしのぶ)研究員など日本の研究者らが、観測される塵の特性が初期宇宙では現在と異なっていたと示したこと、ある銀河では重い元素を多く含むガスが銀河円盤を予想以上に大きく包んで回転しているのを見いだしたことといった、重要な貢献を果たしています。

前者の塵の特性に関する研究は、Fudamoto et al. “The ALPINE-ALMA [CII] survey. Dust attenuation properties and obscured star formation at z~4.4-5.8”として、近日中に欧州の天文学専門誌『アストロノミー&アストロフィジックス』に掲載される予定です。また、後者の回転するガスに関する研究は、Fujimoto et al. “The ALPINE-ALMA [C II] Survey: Size of Individual Star-forming Galaxies at z = 4-6 and Their Extended Halo Structure”として、2020年8月27日に出版された米国の天体物理学専門誌『アストロフィジカル・ジャーナル』に掲載されました。これらの研究成果は17編の論文にまとめられています。

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