2020-03-25 株式会社富士通研究所,Quantum Benchmark Inc.
株式会社富士通研究所(注1)とカナダのQuantum Benchmark Inc.(以下、QB社)(注2)は、このたび、量子コンピュータの実用化に向けて、ノイズ耐性の高い量子アルゴリズムの共同研究を開始することに合意しました。
QB社は、量子コンピュータのノイズ診断・対策技術で世界をリードするウォータールー大学(注3)エマーソン教授が設立したベンチャー企業です。本共同研究では、富士通研究所がこれまで培ってきたAIアルゴリズム開発技術と「デジタルアニーラ(注4)」の応用展開で得られた金融・創薬・材料開発などの実問題に関する知見、ならびにQB社が有する量子コンピュータのノイズ診断・対策技術を融合することで、実用的な量子アルゴリズムの開発を進めます。そして、金融・創薬・材料などの分野において、現在のコンピュータでは求解が困難な課題の解決を目指します。
背景と課題
量子コンピュータは、情報の最小単位である0か1のビット情報により計算を行う現在のコンピュータと異なり、0と1の両方を同時に扱うことができるため、多数の計算を同時並行、かつ高速で実行可能な新しいコンピュータとして期待されています。
しかし、量子コンピュータはノイズに対して脆弱であるため、時間とともにノイズの影響が積み重なって計算結果が不正確になるという問題があり、ノイズの影響を緩和するノイズ耐性アルゴリズムの実現が求められています。
共同研究の概要
- 期間
2020年4月1日から2021年3月(2021年4月以降も継続予定)
- 役割分担
富士通研究所
- 量子化学、機械学習などに適用する量子アルゴリズムの開発
- シミュレーションによる量子アルゴリズムの性能解析技術の開発
QB社
- 量子コンピュータのノイズ診断技術の提供
- 量子コンピュータのノイズ対策技術の開発とその評価
- 量子アルゴリズムの開発支援
図. 量子コンピュータの階層と共同研究のイメージ
今後
今後、富士通研究所とQB社は、本共同研究の取り組みを発展させ、金融、創薬、材料に留まらず、現在のコンピュータでは求解が困難な様々な応用分野に向けて、量子コンピュータへの実装による展開を進めます。そして、まずは2023年までに100量子ビット級の量子コンピュータ上でのアルゴリズム実証を目指します。
商標について
記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。
以上
注釈
- 注1 株式会社富士通研究所:
- 本社 神奈川県川崎市、代表取締役社長 原 裕貴。
- 注2 Quantum Benchmark Inc.:
- 本社 カナダ オンタリオ州、最高経営責任者 ジョセフ エマーソン。
- 注3 ウォータールー大学:
- 所在地 オンタリオ州、学長 フェリドゥン ハンデゥラパー。
- 注4 デジタルアニーラ:
- 富士通株式会社の量子現象に着想を得た組合せ最適化問題を高速に解く新アーキテクチャー。
本件に関するお問い合わせ
株式会社富士通研究所
ICTシステム研究所
Quantum Benchmark