2020-01-17 情報・システム研究機構国立極地研究所,茨城大学,島根大学,有限会社アルプス調査所,神戸大学,復建調査設計株式会社,産業技術総合研究所,千葉大学,海洋研究開発機構,国立,学博物館, 大阪市立大学,東京学芸大学,千葉県環境研究センター,千葉県立中央博物館,滋賀県立琵琶湖博物館,九州大学,信州大学,文化財調査コンサルタント株式会社,農業・食品産業技術総合研究機構
- 千葉県市原市の地層「千葉セクション」を、国際境界模式層断面とポイント(GSSP)とする申請が、最終ステップであるIUGS(国際地質科学連合)の審査を通過した。
- 結果、千葉セクションはGSSPとなり、約77万4千年前〜約12万9千年前の地質時代の名称が「チバニアン」と名付けられることとなった。
- 千葉セクションは、日本の研究チームが2017年6月に地質時代の前期‐中期更新世境界のGSSPに申請し、同年11月に第1ステップの審査、続いて2018年11月に第2ステップの審査、2019年11月に第3ステップの審査を通過していたものである。
本日(2020年1月17日)午前、韓国釜山において開催された、IUGS(国際地質科学連合)の理事会においてGSSP(注1)の審議および投票が行われ「千葉セクションのGSSP提案」(注2)が承認されました。
これにより「千葉セクション」は前期‐中期更新世境界のGSSPとして認定され、地質時代の中期更新世(約77万4千年前〜約12万9千年前)が、「チバニアン(Chibanian)」と名付けられることとなりました。
前期‐中期更新世境界のGSSP審査は、2017年6月に開始されました。千葉セクションは、2017年11月、審査の第1ステップ(注3)にあたる下部−中部更新統境界作業部会(WG)で、申請された3つの地層の中からGSSP候補に選ばれ、続いて2018年11月に第2ステップにあたる第四紀層序小委員会(SQS)での審査を通過。そして、2019年11月には第3ステップとなる国際層序委員会(ICS)を通過し、最終段階である、国際地質科学連合(IUGS)の理事投票結果を待つのみ、となっていました。
これまで、日本にGSSPはありませんでした。本日、千葉セクションが日本初のGSSPとして認定されたことにより、日本の地名に由来した地質時代の名称が誕生しました。これは、地質学だけでなく、日本の科学史においても大きな出来事になります。また、地質学の一般への普及や小・中・高校生などへの教育においても大きな波及効果が期待されます。
コメント
「千葉セクション」を申請した研究チーム代表の岡田誠・茨城大学理学部教授
申請から2年半、本当にいろいろな事がありました。本日チバニアンが承認され、初めて日本の地名が地球史に刻まれることに感極まります。研究チームの研究・申請活動は、これまで多くの方々に支えられてきました。地元の田淵町会や市原市、千葉県の関係各位、そしてチバニアンを応援して下さった全ての方々に深く感謝申し上げます。
その他
注
注1:GSSP
GlobalBoundaryStratotypeSectionandPoint(国際境界模式層断面とポイント)。IUGSは、それぞれの地質時代の境界を地球上で最もよく示す地層を1つだけ選び、GSSPに認定している。GSSPは現在、日本が認定された事で世界に74カ所となった。
注2:千葉セクション
千葉県市原市にある養老川セクション(35 ̊17.66’N; 140 ̊8.79’E)の中の地層断面の名。提案申請書では養老川セクションのほかに、養老田淵セクション(35 ̊17.69’N;140 ̊8.82’E)、柳川セクション(35 ̊17.15’N; 140 ̊7.88’E)、浦白セクション(35°16.85’N; 140°7.47’E)、小草畑セクション(35 ̊18.52’N; 140 ̊11.89’E)から得られたデータが用いられている。これらのセクションをまとめて千葉複合セクションと呼ぶ。
注3:
GSSP決定までの審査ステップは以下のとおり。
①下部−中部更新統境界作業部会(WG)で審査。・・・2017年11月通過。
審査結果を第四紀層序小委員会(SQS)へ答申。
↓
②SQSで答申を認めるか投票。・・・2018年11月通過。
↓
③ICS(国際層序委員会)にて投票。60%以上の得票が必要。・・・2019年11月通過。
↓
④IUGS(国際地質科学連合)にて投票。60%以上の得票が必要。・・・2020年1月通過。
↓
GSSP決定!
提案申請書について
タイトル: The Chiba Section, Japan: a proposed Global Boundary Stratotype Section and Point (GSSP) for the Chibanian Stage/Age and Middle Pleistocene Subseries/Subepoch
申請者:
千葉セクション申請チームメンバー(姓のアルファベット順)
羽田 裕貴(茨城大学大学院理工学研究科、現:国立極地研究所)
林 広樹(島根大学大学院総合理工学研究科、現:島根大学大学院自然科学研究科)
本郷 美佐緒(有限会社アルプス調査所)
堀江 憲路(国立極地研究所/総合研究大学院大学極域科学専攻)
兵頭 政幸(神戸大学内海域環境教育研究センター)
五十嵐 厚夫(復建調査設計株式会社)
入月 俊明(島根大学大学院総合理工学研究科、現:島根大学大学院自然科学研究科)
石塚 治(産業技術総合研究所地質調査総合センター)
板木 拓也(産業技術総合研究所地質調査総合センター)
泉 賢太郎(千葉大学教育学部)
亀尾 浩司(千葉大学大学院理学研究院)
川又 基人(総合研究大学院大学極域科学専攻)
川村 賢二(国立極地研究所/総合研究大学院大学極域科学専攻/海洋研究開発機構)
木村 純一(海洋研究開発機構)
小島 隆宏(茨城大学理学部)
久保田 好美(国立科学博物館)
熊井 久雄(大阪市立大学名誉教授、故人)
中里 裕臣(農業・食品産業技術総合研究機構農村工学研究部門)
西田 尚央(東京学芸大学教育学部)
荻津 達(千葉県環境研究センター)
岡田 誠(茨城大学理学部)
奥田 昌明(千葉県立中央博物館)
奥野 淳一(国立極地研究所/総合研究大学院大学極域科学専攻)
里口 保文(滋賀県立琵琶湖博物館)
仙田 量子(九州大学大学院比較社会文化研究院)
紫谷 築(島根大学大学院総合理工学研究科(研究実施当時))
Quentin Simon(Aix-MarseilleUniversity(フランス))
末吉 哲雄(国立極地研究所)
菅沼 悠介(国立極地研究所/総合研究大学院大学極域科学専攻)
菅谷 真奈美(技研コンサル株式会社)
竹下 欣宏(信州大学教育学部)
竹原 真美(国立極地研究所)
渡邉 正巳(文化財調査コンサルタント株式会社)
八武崎 寿史(千葉県環境研究センター)
吉田 剛(千葉県環境研究センター)
関連論文
【関連論文1】
Kazaoka O., Suganuma Y.*, Okada M., Kameo K., Head M. J., Yoshida T., Sugaya M., Kameyama S., Ogitsu I., Nirei H., Aida N., Kumai H., Stratigraphy of the Kazusa Group, Boso Peninsula: an expanded and highly-resolved marine sedimentary record from the Lower and Middle Pleistocene of central Japan, Quaternary International (2015)
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1040618215002128
【関連論文2】
Suganuma Y.*, Okada M., Horie K., Kaiden H., Takehara M., Senda R., Kimura J., Kawamura K., Haneda Y., Kazaoka O., Head J. M., Age of Matuyama-Brunhes boundary constrained by U-Pb
zircon dating of a widespread tephra, Geology (2015)
http://geology.gsapubs.org/content/early/2015/04/24/G36625.1.abstract
【関連論文3】
Nishida N.*, Kazaoka O., Izumi K., Suganuma Y., Okada M., Yoshida T., Ogitsu I., Nakazato H., Kameyama S., Kagawa A., Morisaki M., Nirei H., Sedimentary processes and depositional environments of a continuous marine succession across the Lower-Middle Pleistocene boundary: Kokumoto Formation, Kazusa Group, central Japan, Quaternary International (2016)
https://doi.org/10.1016/j.quaint.2015.06.045
【関連論文4】
Okada M.*, Suganuma Y., Haneda Y., Kazaoka O., Paleomagnetic direction and paleointensity variations during the Matuyama-Brunhes polarity transition from a marine succession in the Chiba composite section of the Boso Peninsula, central Japan, Earth, Planets and Space (2017)
https://earth-planets-space.springeropen.com/articles/10.1186/s40623-017-0627-1
【関連論文5】
Suganuma Y.*, Haneda Y., Kameo K., Kubota Y., Hayashi H., Itaki T., Okuda M., Head J. M., Sugaya M., Nakazato H., Igarashi A., Shikoku K., Hongo M., Watanabe M., Satoguchi Y., Takeshita Y., Nishida N., Izumi K., Kawamura K., Kawamata M., Okuno J., Yoshida T., Ogitsu I., Yabusaki H., Okada M., Paleoclimatic and paleoceanographic records through Marine Isotope Stage 19 at the Chiba composite section, central Japan: A key reference for the Early–Middle Pleistocene Subseries boundary, Quaternary Science Reviews (2018)
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0277379117302251
【関連論文6】
Simon, Q. *, Suganuma, Y., Okada, M., Haneda, Y., ASTER Team, High-resolution 10Be and paleomagnetic recording of the last polarity reversal in the Chiba composite section: Age and dynamics of the Matuyama-Brunhes transition, Earth and Planetary Science Letters (2019)
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0012821X19302651
【関連論文7】
Haneda, Y. *, Okada, M., Kubota, Y., Suganuma, Y., Millennial-scale hydrographic changes in the northwestern Pacific during marine isotope stage 19: teleconnections with ice melt in the North Atlantic. Earth and Planetary Science Letters (2019)
https://doi.org/10.1016/j.epsl.2019.115936
*は責任著者。
参考
これまでの経緯については、過去のプレスリリースをご参照ください。
国立極地研究所、茨城大学、海洋研究開発機構プレスリリース「地球最後の磁場逆転は従来説より1万年以上遅かった〜千葉県市原市の火山灰層の超微量・高精度分析により判明」2015年5月20日
https://www.nipr.ac.jp/info/notice/20150520.html
国立極地研究所、茨城大学、千葉大学、国立科学博物館ほかプレスリリース「千葉県市原市の地層を地質時代の国際標準として申請認定されれば地質時代のひとつが『チバニアン』に」2017年6月7日
https://www.nipr.ac.jp/info/notice/20170607.html
国立極地研究所、茨城大学、千葉大学、国立科学博物館ほかプレスリリース「国際標準模式地の審査状況について〜地層「千葉セクション」の認定へ向けて〜」2017年11月14日
https://www.nipr.ac.jp/info/notice/20171114.html
国立極地研究所、茨城大学プレスリリース「千葉時代(チバニアン)提案に不可欠な環境変動記録の復元」2018年7月5日
https://www.nipr.ac.jp/info/notice/20180705.html
国立極地研究所、茨城大学、千葉大学、国立科学博物館ほかプレスリリース「お知らせ国際標準模式地の審査状況について〜地層「千葉セクション」の認定へ向けて〜(2018年7月)」2018年7月24日
https://www.nipr.ac.jp/info/notice/20180724.html
国立極地研究所、茨城大学、千葉大学、国立科学博物館ほかプレスリリース「お知らせ地層「千葉セクション」の審査状況について〜GSSP認定へ向けて〜(2018年11月)」2018年11月19日
https://www.nipr.ac.jp/info/notice/20181119.html
国立極地研究所、茨城大学、千葉大学、国立科学博物館ほかプレスリリース「お知らせ地層「千葉セクション」の審査状況について〜“国際境界模式層断面とポイント”認定に向け、第3段階の審査機関に申請書を提出〜(2019年8月)」2019年8月19日
https://www.nipr.ac.jp/info/notice/20190819.html
国立極地研究所、茨城大学、国立科学博物館プレスリリース「気候変動予測に貢献、「千葉セクション」の有孔虫化石〜約80万年前の海洋環境の変遷が明らかに〜」2019年11月29日
https://www.nipr.ac.jp/info/notice/20191129.html
国立極地研究所、茨城大学、千葉大学、国立科学博物館ほかプレスリリース「お知らせ地層「千葉セクション」の審査状況について〜GSSP認定へ向けて〜(2019年11月)」2019年11月29日
https://www.nipr.ac.jp/info/notice/20191129-2.html
本件に関するお問い合わせ先(報道について)
国立極地研究所 広報室
茨城大学広報室
(申請内容について)
国立極地研究所 地圏研究グループ 准教授 菅沼悠介(すがぬまゆうすけ)
(GSSP全般について)
茨城大学 教授 岡田誠(おかだまこと)