第2回タッチダウンへのアプローチ ~その3:行うべきか、行わざるべきか~

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4月5日に衝突装置(SCI)によって人工クレーターを小惑星リュウグウ表面に生成してから、その人工クレーター付近に降下する運用を4回行いました。すでにお話ししましたように、3回目の降下運用では、ターゲットマーカをタッチダウン候補地点に投下することにも成功しました。ここまで来ますと、最終的に、
タッチダウンを、「行うべきか、行わざるべきか、それが問題」
ということになります。

1回目のタッチダウンが成功しているのに「それが問題」であるのは、やはりタッチダウンはリスクが大きいためです。特に、リュウグウの場合、広い平らな場所がないわけで、岩だらけの場所に探査機を衝突させないように制御して降りる必要があります。これは1度成功したからと言って、楽にできると言うわけではありません。探査機は、宇宙の遙か遠方で、厳しい環境の中、我々が触れることもできない状態で動作しています。常に不具合や故障というリスク(危険性)と隣り合わせです。ですから、タッチダウンを実行することは、プロジェクトメンバーにとっても不安です。ですが、漠然と不安がっていても埒が明きません。科学的・技術的に検討する必要があります。

検討の課題は大きく2つあります。1つは2回目のタッチダウンを行うことに、理学的・工学的に大きな意義があるかどうかです。あまり意義がないのでしたら、すでに1回目のタッチダウンが成功しているので、敢えて2回目を行わなくてよいからです。もう1つの課題は、タッチダウン運用のリスクです。リスクが高いのでしたら、実行するのは無謀ということになります。

まず、2回目のタッチダウンを行うことが理学的そして工学的に価値があるかどうかです。観測により2回目のタッチダウンを行おうとしている場所には、クレーターからのイジェクタ(噴出物)があることは明らかになりました(図1)。つまり、タッチダウンを行えばリュウグウの地下物質を確実に採取できるわけですから、これは理学的に非常に価値が高いことになります。また、複数箇所からのサンプル採取にもなります。このことも、理学的な価値を高めることになります。なぜならば、リュウグウについて、より普遍的な情報を得ることができるからです。工学的にも、複数箇所からのサンプル採取や地下からのサンプル採取は世界初のことですから、当然、価値は高いものとなります。以上から、まずは理学的・工学的な価値が高いということは確認されました。


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図1 衝突装置(SCI)による人工クレーター生成による表面の反射率の変化。色が黒い部分は、衝突後に暗化したことを示す。タッチダウン予定地点は、図中のC01-Cと描かれた付近であり、人工クレーターが生成された後、表面の反射率が下がっている。つまり、人工クレーターからの地下物質が降り積もっていると考えられる。(※図のクレジット:JAXA, 東京大, 高知大, 立教大, 名古屋大, 千葉工大, 明治大, 会津大, 産総研, 神戸大学)

次に、運用のリスクです。運用のリスクが高いということですと、敢えて危険を冒すことはすべきではない、という議論にもなります。そこで、まずは、人工クレーター付近でタッチダウン出来そうな場所をいくつか選び、降下運用によって、タッチダウン候補地点の地形の詳細な情報を得ました。そして、そのうちの1つの地点にターゲットマーカを着地させることができたのです。そこが、最終的にタッチダウン予定地点となりました。

タッチダウン予定地点は、SCIによって生成されたクレーターから北の方向に約20m離れたところで、プロジェクトではC01-Cbと名付けた、半径が約3.5mの領域になります。周辺には、危険な岩塊(ボルダー)がありますし、C01-Cbの中にも岩塊はあります。それらの岩塊の高さなども推定し、3次元的な地図も作ってタッチダウンを行う場合の危険性を確認した結果、探査機がタッチダウンしても問題ないと判断されました。

もう1つの技術的な問題点は、1回目のタッチダウンで光学系(広角の光学航法カメラやレーザレンジファインダ)の受光量が減少したことです。これは、タッチダウンの時に舞い上がった塵(ダスト)が装置に付着したためだと思われます。この問題への対応については、影響があった光学系に切り替える高度を下げるなどして、受光量が減少したことを補うこととしました。実際、低高度運用のときにこのやり方がうまくいくことを確認しています。

以上の検討の結果、2回目のタッチダウンのリスクは、1回目のタッチダウンのリスクと同等かそれ以下になるということが確認されました。2回目のタッチダウンは、理学的・工学的にも価値が高いことであるので、プロジェクトとしては2回目のタッチダウンを実行すべしと判断しました。そして、6月21日には宇宙研において承認、6月25日にはJAXAとしても了承され、2回目のタッチダウンを行うことが決定されました。

2回目のタッチダウンは、7月11日に試みることになっています。とにかく慎重に、しかし、勇気を持って大胆に、ミッションを進めていきます。


※画像を引用する場合にはクレジットを記載してください。もしクレジットの短縮が必要な場合は「JAXA、東大など」と表記してください。

(この記事は、ISASニュース2019年7月号に掲載予定記事を、「はやぶさ2」Web掲載記事用に改編したものです。)

はやぶさ2プロジェクト
2019.07.08

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