バーチャルリアリティー治療で緩和される幻肢痛の特徴

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痛みの性質に基づいたオーダーメイド医療の可能性をバーチャルリアリティーで確認

2019-03-29  東京大学

手足の切断後などでは、失われたはずの手足の存在を感じるだけでなく、その幻の手足(幻肢)が痛むことがあり、このような痛みは「幻肢痛」と呼ばれています。これまでの研究では、仮想現実(Virtual Reality:VR)システムで幻肢を随意的に動かすリハビリをすれば、幻肢痛が緩和されることが分かっていましたが、有効な患者さんもいれば無効な患者さんもいることが分かっていました。東京大学医学部属病院緩和ケア診療部の住谷昌彦准教授は、幻肢痛の当事者でありエンジニアである猪俣一則氏(株式会社KIDS代表)、畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター大住倫弘助教らと共同で、幻肢痛患者の痛みの性質に着目し、“どのような性質の痛み”にVR治療が有効なのかを分析しました。

実施したVR治療は、住谷准教授が研究を重ねてきた鏡療法が基盤となっており、対象者は健肢を動かすことによって、幻肢を随意的に動かしているような仮想体験をすることができます。このVRシステムでの神経リハビリ治療の結果、ほとんどの対象者は幻肢の随意運動を獲得するだけでなく、幻肢痛の緩和を経験することができました。また、今回参加した対象者の幻肢痛を多変量解析した結果、①“筋肉がひきつるような”などの運動感覚に関連した幻肢痛と、②“焼けるような”などの皮膚感覚に関連した幻肢痛に大別することができました。そして、VR治療は、前者の運動感覚に関連した幻肢痛を有する対象者において、その効果を発揮しやすいことが分かりました。この研究成果によって、VRリハビリによって緩和しやすい幻肢痛の特徴が明確にされたことになります。さらに、痛みの性質が治療反応性を規定する可能性を示したことから、痛みの性質に応じたオーダーメイド医療への発展的可能性を提案できます。この成果は、日本時間2018年12月21日にPain Medicine誌(オンライン先行)にて発表されました。

「痛みの問題はまだまだ未解決な健康課題です。私たちは、新しいテクノロジーを臨床応用し、痛みに苦しむ患者さん達が少しでも痛みから解放されればと考えて診療と研究をしています。今回の私たちの治療法開発は、技術革新が著しいバーチャルリアリティー(仮想現実)技術を用いた未来の治療の第一歩を踏み出しました」と住谷准教授は話します。「さらに、どのような患者さんがこのバーチャルリアリティー治療に適しているかを痛みの性質から明らかにすることができました。この発見は、痛みのオーダーメイド治療を実現する第一歩でもあります」と続けます。

幻肢痛患者さんがバーチャルリアリティー(仮想現実)治療を受けているイメージ図

幻肢痛患者さんがバーチャルリアリティー(仮想現実)治療を受けているイメージ図
患者さんの健肢の関節情報を赤外線カメラを用いて収集し、その情報を元にバーチャルリアリティー(仮想現実)空間にバーチャル健肢と180度反転したバーチャル幻肢を頭部装着型ディスプレイを通じて提示します。患者さんはバーチャルリアリティー空間で、右手と左手を対称性に動かすゲーム課題を実施し、このとき実際に感じている幻肢もバーチャル幻肢と同じ運動をするつもりで頭の中で動かします。
© 2019 住谷昌彦

論文情報

Michihiro Osumi, Kazunori Inomata, Yuji Inoue, Yuko Otake, Shu Morioka, Masahiko Sumitani, “Characteristics of phantom limb pain alleviated with virtual reality rehabilitation,” Pain Medicine: 2018年12月21日, doi:10.1093/pm/pny269.
論文へのリンク (掲載誌)

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