原子力発電所の「廃炉」、決まったらどんなことをするの?

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2019-03-15 資源エネルギー庁

JPDRの解体前後の写真

日本で唯一廃炉が終了した「JPDR」、解体前(左)と解体後(右)

原子力発電所(原発)で使われている原子炉の運転を終了させ、原発を廃止して解体する「廃炉」。廃炉と聞くと、東京電力福島第一原子力発電所(福島第一原発)で進められている廃炉作業を思い起こす人が多いかもしれません。現在、福島第一原発では、ロードマップにもとづいて着実に廃炉作業が進められています。その一方で、福島以外にも、廃炉作業に取り組む必要のある原発があります。それは、運転期間を終えた原発です。こうした原発の廃炉は、これまでの原発建設や保守メンテナンスなどでつちかってきた技術を活用しながら実施することが可能なものです。今回は、福島以外の原発でおこなわれる廃炉について、どのようなプロセスを経るのか、現状や課題についてご紹介しましょう。

日本の原発における「廃炉」の現状

現在、日本における廃炉の状況は、以下のようになっています(2019年3月時点)。

日本の原子力発電所の現状を図で示しています

1966年に日本で初めて商業用原発として営業運転を始めた東海発電所は、1998年に営業運転を停止し、2001年から廃炉作業をスタートしています。以後、2008年に浜岡原発1・2号機が廃炉を決定、また2011年の東日本大震災の後は、次の原子炉が廃炉を決定、または廃炉の方向で検討をおこなっています。

敦賀1号機/美浜1・2号機/島根1号機/玄海1・2号機/伊方1・2号機/大飯1・2号機/女川1号機/福島第二1~4号機

廃炉を決定、または廃炉の方向で検討をおこなっている原子炉は、福島第一原発を含めると、現在、合計24基となっています。

今後も、40年の運転年数を迎えるプラントが多く存在することから、廃炉を選択するプラントが増加すると見込まれています。

各プラントの運転年数と廃炉決定状況
プラントの廃炉決定状況を運転年数ごとにグラフで示しています

廃炉ってどんなプロセスをたどるの?

実際の「廃炉」は、どのようなプロセスで進められるのでしょう。

廃炉をおこなうには、まず、①原子力規制委員会に「廃止措置計画」を提出し、認可を受ける必要があります。次に、②発電に使用された「使用済燃料」の搬出や、③汚染状況の調査と除染がおこなわれます。それが済むと、④周辺設備がまず解体されます。その後、いよいよ⑤原子炉などの解体がおこなわれ、最後に⑥建屋などが解体されます。

廃炉の主な手順
廃炉の主な手順を図で示しています

原子炉の運転を停止すると、運転中にくらべて放射性物質の量は大幅に減少します。廃炉作業が始まると、「使用済燃料」を使用済燃料プールから搬出する作業(プロセス②)によって、さらに放射性物質は大幅に減少。核分裂反応は起こらず、「静的」な状態となり、核燃料による事故の危険性も消失します。さらに、原子炉の解体(プロセス⑤)やその周辺設備の解体(プロセス④、⑥)など、廃炉のプロセスが進むにしたがって、放射性物質の量は段階的に低減されていきます。このような廃炉作業が始まった原子炉については、現在、運転中の原子炉とほとんど同じ安全規制が適用されています。今後は、安全を第一としつつも、廃炉の各プロセスにおけるリスクに応じた安全規制を検討することも必要になると考えられます。

廃止決定後の放射性物質の減少を図で示しています

この廃炉作業には、比較的長い期間がかかります。それは、解体作業を進めるとともに、そのプロセスで生じる放射性廃棄物の処分に至るまで、さまざまな工程を丁寧に、安全に進める必要があるためです。

先ほど日本の廃炉の現状についてお伝えしましたが、そのうち、東日本大震災の発生前に廃炉作業を始めた日本原子力発電東海発電所と中部電力浜岡原子力発電所1・2号機は、原子炉周辺設備の解体に着手しています。それ以外のものは、現在解体準備の段階にあり、実際に解体作業が始まるのは数年先になると見込まれています。

廃止措置計画におけるスケジュールを示した表です

廃炉によって発生した廃棄物はどうなるの?

廃炉では、推定で約50万トンの廃棄物が発生すると見られています(大型の沸騰水型原子炉(BWR)、加圧水型原子炉(PWR)の場合)。そのうち約98%が「放射性廃棄物でない廃棄物」あるいは人の健康に対する影響を無視できるレベルの「クリアランス対象廃棄物」です(「廃炉からのゴミをリサイクルできるしくみ『クリアランス制度』」参照)。

解体によって生じる放射性廃棄物は、低レベル放射性廃棄物(「放射性廃棄物の適切な処分の実現に向けて」参照)のみであり、その量は約2%(沸騰水型原子炉(BWR)の場合)と、ほんのわずかですが、これらを安全かつ効率的に処分することが重要です。

汚染分布(BWRの場合)
沸騰水型原子炉(BWR)の汚染分布を図で示しています

解体によって生じる放射性廃棄物の処理・処分については、「発生者責任」(発生させた主体が責任を持つ)の原則の下、原子力事業者などが処分場の確保に向けた取り組みを着実に進めることが基本となっていますが、政府としても必要な取り組みを進めていくことにしています。

低レベル放射性廃棄物の中でも、たとえば発電する際に使用されていた「制御棒」や、原子力発電所の炉内にあった構造物などは、放射能レベルの比較的高い廃棄物に分類されます。一方で、原子力発電所で建物に使われていたコンクリートなどは、放射能レベルのきわめて低い廃棄物として扱われ、放射能レベルに応じて適切に処分することが法律でさだめられています。

現在、低レベル放射性廃棄物のうち、放射能レベルのきわめて低いものを対象とした処分場を、東海発電所の敷地内に設置するため、日本原子力発電株式会社が原子力規制委員会へ申請をおこなっているところです。

すでに廃炉完了したケースも

とはいえ、廃炉がすでに終了している原子炉もあります。日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)のJPDR(Japan Power Demonstration Reactor、動力試験炉)です。日本初の発電用原子炉として1963年に運転を開始、1976年に運転を終了し、その後1982年から1996年にかけて廃炉作業がおこなわれました。

廃炉作業には、原子炉の解体・撤去に関する技術開発とその実証を目的として、ゼネコン・メーカーなどの技術者が参加しました。これにより、高放射化構造物を遠隔で解体する技術や、残存する放射能の評価手法など、さまざまな知見が得られています。

日本ではこの1件が廃炉を終了した実例となりますが、世界を見ると、米国では13基の廃炉が、ドイツでは3基の廃炉が完了しています。そこで、資源エネルギー庁が主催した「原子力発電所の廃止措置に関する国際ワークショップ」(2017年6月30日開催)や「日米廃炉フォーラム」(2018年8月7日開催)などの場を通じて、廃炉に関わる知見やノウハウの共有もおこなわれています。

今後も世界各国の知見を得ながら、上述した課題を克服し、安全を大前提としつつ、どのように廃炉プロセスを最適化して進められるか、産官学が連携して検討を進めていきます。

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