2019-02-26 国立天文台
アルマ望遠鏡の観測にもとづいた、原始星MMS5/OMC-3の想像図。中央にある原始星から、細く絞られたものと幅が広いものの2種類のガス流が噴き出しているようすが描かれている。
アルマ望遠鏡による観測で、原始星から放出される低速と高速の2種類のガス流が、それぞれ独立に加速されていることがわかりました。原始星の成長過程を理解する、大きな一歩となります。
オリオン座方向、約1300光年の距離にある原始星「MMS5/OMC-3」では、成長過程にある星から、高速で絞られたガス流と低速で幅の広いガス流とが放出されています。このような2種類のガス流はいくつかの原始星で見つかっていますが、これまでの観測では両者の関係は明らかではありませんでした。
九州大学大学院生の松下祐子さんと町田正博准教授、国立天文台の高橋智子助教、富阪幸治教授の研究チームは、アルマ望遠鏡を使ってこの天体を観測し、ガス流の分布を詳細に描き出しました。その結果、2つの流れの吹き出す向きが傾いていること、低速ガス流が高速ガス流よりも先に放出され始めたことが明らかになりました。このことは、低速ガス流が高速ガス流に引きずられたものではなく、それぞれ独立なメカニズムで加速されたことを物語っています。
これらのガス流は原始星の成長に大きく影響します。ガス流の放出メカニズムを知ることは、恒星の質量がどのようにして決まるのかなど、まだ謎が多い恒星の誕生期についての理解を深める上で非常に重要です。アルマ望遠鏡の高い解像度が、この謎の解明に今後も威力を発揮していくことでしょう。
この研究成果は、Matsushita et al. ‘A Very Compact Extremely High Velocity Flow toward MMS 5/OMC-3 Revealed with ALMA’として2019年2月1日付けの米国の天体物理学専門誌『アストロフィジカル・ジャーナル』に掲載されました。