都市鉱山活用に向けた集中研究施設「分離技術開発センター(CEDEST)」を開設

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自動選別システムの試験装置群を導入、金属リサイクルの高度化を目指す

2018/06/20 産業技術総合研究所

NEDOプロジェクトにおいて、産業技術総合研究所(産総研)は、廃製品に含まれる金属資源の自動選別システムの試験装置群を導入した集中研究施設「CEDEST」を産総研つくばセンター内に開設しました。

NEDOは、産総研を中心とする企業・大学・研究機関とともに、小型家電などの廃製品に含まれるレアメタルなどの金属資源の有効活用に向けて、低コストで高効率なリサイクルを可能にする革新的な基盤技術の開発を推進しています。今回のCEDEST開設により、金属リサイクルの高度化と省人化を両立する世界初の自動・自律型のリサイクルプラントの開発・構築に向けた本格的な装置開発に着手します。

今後、従来の手作業による廃製品の解体・選別プロセスの10倍以上の処理速度と、廃部品を分離効率80%以上で選別する性能を実現し、さらにこれらを無人で一貫制御する選別システムを確立することで、都市鉱山の有効活用を目指します。

図1

図1 集中研究施設「CEDEST」の外観と同施設で開発する技術

1.概要

現在、リサイクルされている金属は、鉄、アルミなどの主要な構造材料や、銅、貴金属など採算の合う付加価値の高い金属に限定されています。一方、レアメタルやレアアースは、価格が下落した現在、国内で経済的なリサイクルビジネスの成立は困難といわれ、選別されないまま路盤材の原料となるスラグに混入されたり、リサイクルコストの安い海外へ流出している状況です。レアメタルなどを再び本来の金属資源として国内利用するには、廃製品から回収される金属を高純度化する技術とリサイクルコストを低減する技術の確立が必要となります。

このような背景のもと、小型家電などの廃製品に含まれるレアメタルなどの金属資源の有効活用に向けて、NEDOの「高効率な資源循環システムを構築するためのリサイクル技術の研究開発事業」※1では、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)が中心となり、大栄環境株式会社、佐藤鉄工株式会社、株式会社リーテム、DOWAエコシステム株式会社、株式会社三徳、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構、国立大学法人京都大学、国立大学法人大阪大学、国立大学法人佐賀大学とともに、低コストで高効率なリサイクルを可能とする革新的な基盤技術の開発を推進しています。具体的には、自動・自律型※2リサイクルプラントや少量多品種の金属高効率製錬技術の実用化を目指した研究開発を実施しています。自動・自律型リサイクルプラントの開発においては、従来の手作業による解体・選別プロセスの10倍以上の処理速度と、廃部品を分離効率80%以上で選別する高度化技術の開発、さらにこれらの要素技術を連動させ、手作業なしで自動・自律的に一貫制御する低コストな選別システムの確立を目指した開発を実施しています。

今般、NEDOプロジェクトにおいて、産総研は、廃製品に含まれる金属資源の自動選別システムの試験装置群を導入した集中研究施設「CEDEST※3」を産総研つくばセンター内に開設しました。CEDESTでは、世界初となる自動・自律型リサイクルプラントを集中的に開発・構築することで、都市鉱山※4の有効活用を目指します。

2.CEDESTでの技術開発内容

今回、CEDESTに廃製品・廃部品自動選別システム開発を進めるための試験装置群の導入が完了し、世界初の自動・自律型リサイクルプラントを構成する装置の開発を本格的に開始します。CEDESTでは、装置開発の鍵となる2つの主要な技術開発を行い、金属リサイクルの高度化と省人化を目指します。

1 廃製品自動選別技術の開発

多様な金属を高度回収するには、さまざまな製品形態と頻繁なモデル変動への対応が不可欠であり、リサイクル工場での廃製品の解体・選別には高い汎用性が必要です。現状、モバイル機器からの電池の取り外しや高度な金属回収は、作業員の手作業に頼らざるを得ず、高コストの要因となっています。

そこで、廃製品の特徴を複数の高解像センサにより検知し、これを製品情報と照合・解析して、製品の種類を自動認識した上で、金属組成に基づいて資源価値別に廃製品を選別するソータ技術※5を開発します。また、検知した廃製品情報に基づく易解体加工技術、遺伝アルゴリズム※6を応用した破壊機構最適化技術を開発し、電池やプリント基板などのモジュール※7を破壊せずに筐体(きょうたい)※8のみを優先破砕する廃製品の筐体解体機を開発します。さらに、各モジュールを種類別に選別するソータ技術の開発も行います。

図2

図2 廃製品自動選別技術のイメージ

2 廃部品自動選別技術の開発

現在、リサイクル工場において、廃部品(細粒部品)の選別は作業員の経験的な操作に基づいて実施されますが、廃部品の形態は多種多様であるため理想的な選別が実現できず、各種レアメタルを製錬向けの原料にする技術は確立されていません。

そこで、プリント基板から電子素子などの廃部品を、単体分離※9する技術を開発します。また、単体分離した廃部品の各種選別機内の挙動を精度よく理論予測する技術を構築し、回収産物が製錬原料となるよう、部品情報に基づいて選別プロセスや運転条件を最適制御する技術を開発します。さらに、従来固定されていた選別装置ラインを、自由に組み替え可能にし、選別装置への部品の搬送順序を自在に変更できる供給システムを開発し、さらなる高度化を目指します。

図3

図3 廃部品自動選別技術のイメージ

最終的には、廃製品から廃部品の自動・自律的な一貫統合選別システムを開発し、まずはスマートフォンやデジタルカメラなどの小型デジタル家電を対象に、リサイクル工場での廃製品製錬原料化における、高度化と省人化を両立する技術の実用化を目指します。

注釈

※1 「高効率な資源循環システムを構築するためのリサイクル技術の研究開発事業」
事業期間:2017~2022年度の6年間
予算:5億円(2018年度)
内容:自動・自律型リサイクルプラントおよび少量多品種金属の高効率製錬技術の実用化によって、都市鉱山の有効活用を目指すNEDOの研究開発プロジェクト。
※2 自動・自律型
決められた選別条件で自動運転するだけでなく、供給物に応じて装置自身が運転を最適化するシステム。
※3 CEDEST
分離技術開発センター(Center for Developing Separation Technology)の略称。
※4 都市鉱山
天然資源(天然鉱山)に対して、電気・電子機器などの廃製品を人工資源とみなした呼称。
※5 ソータ技術
対象物の集合体を設定した条件に基づき選別する技術。
※6 遺伝アルゴリズム
生物の進化の過程を模して、情報(最適条件など)の選択、交叉、突然変異などの過程を計算し、未知の最適条件などの近似解を探索する手法。本事業では、粒子破壊シミュレーションと組み合わせて、破砕装置の最適化に利用。
※7 モジュール
製品を構成する部材。ここでは、筐体、基板、電池などを指す。
※8 筐体(きょうたい)
製品の外装。
※9 単体分離
粒子が単一成分で構成されている状態。本事業では、電子素子が基板から剥離(電子素子が単離)した状態を示す。
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