国立天文台
2018年4月25日から27日、パシフィコ横浜で開催された「宇宙・天文光学EXPO 2018」に、国立天文台はブース出展しました。光学技術に関する企業や技術者を対象としたこの展示会には、国際協力による口径30メートルの望遠鏡を建設中のTMT推進室が中心となって、2013年から出展しています。今年の展示会での国立天文台ブースの様子をご紹介します。
今年の出展テーマは「TMTとひので」。いちばん遠い銀河から伝わるかすかな光を捉えるTMTと、いちばん近くの恒星である太陽を観測する太陽観測衛星「ひので」、この対照的な2つの望遠鏡に関する展示が並びました。
展示の目玉、TMT分割鏡
国立天文台のブースで一番人目を引いたのは、TMT分割鏡試作品の展示です。多くの方々が足を止めて見ていきます。口径30メートルの鏡を1枚で作るのは難しいので、複数の小さな鏡を組み合わせて一つの鏡として働かせます。展示してあるのは、この分割した鏡の試作品です。1枚でも小さい子が寝転がれそうなくらいの大きさがあるのですが、これが492枚並ぶというのは、やはり驚かれるようです。
分割鏡の周りではTMT推進室のメンバーが来場者の質問に答えていました。中には、TMT推進室の重鎮、家正則名誉教授の姿もありました。
「これは試作時のだから、今は少し変わっているところもあるのですよ。真ん中の銀色をした円いところとか…。」家名誉教授は、丁寧に説明していました。地震などがあっても落ちないように、改良しているそうです。
不思議な形、「ひので」可視光・磁場望遠鏡の主鏡
TMT分割鏡の隣には、「ひので」可視光・磁場望遠鏡の主鏡・副鏡の展示がありました。大きな鏡を宇宙へ打ち上げるためには、重量を軽くし、かつ歪まないようにする必要があります。そのため、「ひので」可視光・磁場望遠鏡の主鏡は裏面からハチの巣状にくり抜いた形になっています。展示では、その特徴的な形状を下から覗き込んで観察できるようになっていました。
会場に3日間張り付いていた井上特定技術職員は「光学技術の展示会なのですが、技術的な話だけではなく、サイエンスのこともよく訊かれます」と感想を述べていました。国立天文台の技術と研究に興味を持ってもらえるのは、うれしいことです。
周りにはこんな出展も
国立天文台のブースの周りでは、TMTの鏡材を製作している株式会社オハラや、「おウチで国立天文台(国立天文台の施設が見られる、スマートフォンを使った簡易なVRゴーグル)」を作成した太陽企画株式会社など、国立天文台と関わりの深い企業も出展していました。
講演会も大盛況
27日午前中には、特別講演会「国立天文台の研究者が語る天文コース」が開催されました。講演は、TMT推進室の齋藤正雄教授による「TMT望遠鏡のすごさが切り開く宇宙」、チリ観測所の下条圭美助教による「ALMAで見た太陽」、Solar-C準備室の石川遼子助教による「太陽からの微弱な偏光を捉えろ!~観測ロケットによる5分間の挑戦~」の3本。話の内容は一般向けの国立天文台講演会などよりはやや難しめで、聞きごたえのあるものでしたが、皆さん、メモを取りながら熱心に聞き入っていました。
講演会は事前申込で満席になっており、大盛況でした。講演の後にも質問者が次々と講演者の元へ話しかけに来ており、関心の高さを感じました。特に最後の石川助教の講演の後には、名刺を持った方の列ができていました。
講演が終わった後は、下条助教、石川助教はブースにやってきて、来場者の質問に答えていました。話しかけている方の中には、午前中の講演会に参加された方もいました。講演会だけでは質問の時間が足りなかったのか、長い時間話し込んでいる姿も見られました。
今回は一般の方向けの科学イベントや講演会とは少し毛色の違う展示会の様子をお伝えしました。国立天文台では、様々な展示会やイベントで研究や技術について紹介していますので、機会がありましたら足を運んでみてください。
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