世界最大規模の試験高炉でCO2排出低減効果の検証試験を完了

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製鉄プロセスのCO2排出量約30%削減を実現する技術を確立へ

2018年2月23日 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 理事長 古川一夫

NEDOは、(株)神戸製鋼所、JFEスチール(株)、新日鐵住金(株)、新日鉄住金エンジニアリング(株)、日新製鋼(株)とともに、2016年度に新日鐵住金(株)君津製鐵所構内に建設した世界最大規模の試験高炉(容積12m3)において、CO2排出低減効果の検証試験を完了しました。

検証試験では、計4回の試験操業を行い、水素を鉄鉱石の還元材として利用することで高炉からのCO2排出量を削減する技術と、高炉ガスからCO2を分離・回収する技術を検証しました。

本検証試験の結果、CO2削減・分離・回収技術の確立にめどが立ち、製鉄プロセスのCO2排出量を約30%削減する目標達成に向けて、大きく前進しました。

試験操業を実施した試験高炉とCO2分離・回収設備を表した写真
図1 試験操業を実施した試験高炉とCO2分離・回収設備(新日鐵住金(株)君津製鐵所構内)

1. 概要

鉄鋼業から排出されるCO2は、1.8億トン(2013年度)と、産業・エネルギー転換部門の中で多く、日本のCO2排出量の14%を占めるため、鉄鋼業からのCO2排出量の削減が求められています。日本の鉄鋼業は、1970年代以降、省エネルギー化に取り組み、現在では鉄鋼生産におけるエネルギー効率は世界一ですが、さらなるCO2排出量削減には、革新的な製鉄プロセスの技術開発が必要です。

このような背景のもと、NEDOは、CO2排出の抑制とCO2の分離・回収により、製鉄所からのCO2排出量を約30%削減する技術の確立を目指して「環境調和型製鉄プロセス技術の開発/水素還元活用製鉄プロセス技術開発」を実施し、フェーズI-STEP1(2008~2012年度)では、要素技術の開発を行いました。

さらに、フェーズI-STEP2(2013~2017年度)において、NEDOは、(株)神戸製鋼所、JFEスチール(株)、新日鐵住金(株)、新日鉄住金エンジニアリング(株)、日新製鋼(株)とともに、フェーズI-STEP1の要素技術の開発成果と課題を反映させ、2016年度に新日鐵住金(株)君津製鐵所構内に世界最大規模の試験高炉(容積12m3、実高炉の数百分の1規模)を建設しました。

今般、本試験高炉において、製鉄プロセスにおけるCO2排出低減効果の検証試験を完了しました。検証試験では、計4回の試験操業を行い、(1)水素を鉄鉱石の還元材として利用することでコークス使用量を削減し高炉からのCO2排出量を削減する技術と、(2)高炉ガス※1からCO2を分離・回収する技術の実証を行いました。

2. 今回の成果
(1)高炉からのCO2排出量削減技術開発

高炉からのCO2排出量削減については、これまでに試験高炉において主として水素還元などの送風操作、水素還元に適したコークスを使用した反応操作などを検討するために、試験操業を計4回行いました。その結果、高炉内での複雑かつ非定常な反応を予測する3次元数学モデルを活用するとともに、長期間に渡る安定的な試験操業を進めることで、試験高炉からのCO2排出量削減を可能とする技術の確立にめどが立ちました。

(2)高炉ガスからのCO2分離・回収技術開発

高炉ガスからのCO2分離・回収については、これまでに開発した低い温度での反応性に優れる吸収液のさらなる改良に加え、製鉄所からの未利用廃熱を有効利用する技術などを総合的に組み合わせることにより、国内製鉄所内の諸元(CO2処理量、分離回収設備の配置や高炉の操業条件など)が変わった場合においても、CO21トン当たりの分離・回収コスト2,000円以下という目標を十分に達成できる見込みを得ました。

また、試験高炉の試験操業の中で、試験高炉からの高炉ガスをCO2分離・回収設備に通気することで、実際の運転環境に近い条件でCO2分離・回収の処理速度や連続操業への影響などの検証を行いました。その結果、CO2分離・回収設備と試験高炉との連動性に問題がないことを確認できました。

なお、今回の成果を基に、NEDOは、フェーズIIで試験高炉での操業条件の最適化、実高炉を用いた水素還元効果の部分検証と3次元数学モデルの精度向上などを進め、CO2排出低減効果を検証する予定です。これらの取り組みにより、2030年頃までに高炉からのCO2排出量を約30%削減する技術確立と実機1号機実用化※2、2050年までの普及※3を目指します。

新たな製鉄プロセスを表した概念図
図2 新たな製鉄プロセスの概念図

3. 事業内容
・事業期間:
2013~2017年度
・予算規模:
約160億円
・委託先:
(株)神戸製鋼所、JFEスチール(株)、新日鐵住金(株)、
新日鉄住金エンジニアリング(株)、日新製鋼(株)
・施設規模:
容積12m3(実高炉に対し、数百分の1)
【用語解説】
※1  高炉ガス
CO、CO2や窒素を主成分とする高炉から排出されるガス。
※2、3  2030年頃までに高炉からのCO2排出量を約30%削減する技術確立と実機1号機実用化、2050年までの普及
実機へ導入する際、(1)CO2貯留技術確立、(2)経済合理性成立を前提条件としています。
4. 問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO 環境部 担当:西岡、在間

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:鈴木(敦)、髙津佐、藤本、坂本

 

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