2018/07/10 産業技術総合研究所
今回の豪雨では、各地で斜面崩壊が発生しており、発生地域の充分な把握ができておりませんが、いくつかの場所について地質図に基づいて地質の解説をします。
広島県安芸郡熊野町川角5丁目の斜面崩壊
この地域の多くを占めるのは、8000-9000万年前(後期白亜紀)に地下でマグマがゆっくりと冷え固まってできた、広島花崗岩類に属する粗粒-中粒黒雲母花崗岩(GK1)です(図1)。団地の部分には、三石山のかつての斜面崩壊によってもたらされた崖錐堆積物(ty)が分布します。今回の斜面崩壊は、風化により真砂化した花崗岩が多量の降雨によって流出したものと考えられます。この周辺では坂町小屋浦をはじめ、多くの渓流で真砂化した花崗岩の流出による土石流が発生しています。
同様の災害は、2009年7月21日に山口県防府市で発生した土石流災害がありました。
一方、2014年8月20日の広島市安佐南区で発生した土石流災害は、花崗岩とは異なる岩石が崩壊して発生したものも多く、少し地質の状況は異なります。
図1 5万分の1地質図幅「呉」(東元ほか, 1985)。×印災害発生地。【地質図Naviで表示】
愛媛県宇和島市吉田町の斜面崩壊
この地域は、約1.1億年前(前期白亜紀)に海溝でたまった砂岩や砂岩泥岩互層からなる地層(Hs)でできています(図2)。これは海洋プレートの沈み込みによって、大陸の縁にくっついたもので、付加体と呼ばれます。今回の斜面崩壊は、風化した部分が多量の降雨によって流出したものと考えられます。
図2 5万分の1地質図幅「宇和島」(寺岡ほか, 1986) 。×印災害発生地。【地質図Naviで表示】
更新履歴
- 2018年7月10日:開設
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