アマチュア天文家が発見した最近傍の重力レンズ系外惑星

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2019-11-01 国立天文台

今回の増光現象の想像図今回の増光現象の想像図。

全体図の左側に描かれている2本の矢印は、光源となった星(3つの明るい天体のうち、一番左側)の光がレンズ星の重力で曲げられて太陽系(同右側)に届く光線を示している。これまでに重力レンズ法で発見された系外惑星(全体図に赤色で示された点)はいずれも銀河中心方向(全体図右上)に位置していて、今回のレンズ星に比べて距離が遠い。

挿入図はレンズ星が持つ惑星系を拡大した想像図。

(クレジット:東京大学) オリジナルサイズ(2.5MB)

日本のアマチュア天文家が発見した重力レンズ現象において、レンズの役割となった恒星(レンズ星)に惑星が発見されました。詳しく調べた結果、重力レンズ現象に伴って発見された太陽系外惑星としては私たちから最も近くにあるものと判明しました。これまで重力レンズ現象で発見された惑星のなかでも主星からの距離が近く、この距離域にも惑星が多く存在することが示唆される成果です。

星同士が一直線上に並ぶとき、背後の星からの光が手前の星の重力で曲げられ、本来は地球に届かない方向に発せられた光が地球に届くために星が明るく見えることがあります。重力レンズ(マイクロレンズ)現象です。手前のレンズ星を惑星が公転していると、明るさの変化にその惑星の重力も影響します。これまで100個ほどの系外惑星がこの手法で発見されてきましたが、いずれも地球からの距離が遠いものばかりで、主星を詳しく観測することは困難でした。

2017年11月1日、群馬県の天体捜索者小嶋正(こじまただし)さんは、おうし座の方向で平常よりも明るくなった星に気付きました。増光直後から国内外で追跡観測が行われた結果、明るさの変化のようすから、惑星を伴う重力レンズ現象であることが判明しました。東京大学や国立天文台などの研究者から成る国際研究チームは、国立天文台の岡山天体物理観測所(当時)の188cm望遠鏡などを用いてこの現象を詳しく観測しました。その結果、レンズ星までの距離は1600光年で主星の質量は太陽の0.6倍、惑星の質量は地球の約20倍で主星と惑星の距離は1天文単位と推定されました。これまでに重力レンズ現象に伴って発見された系外惑星としては私たちからの距離が格段に近いものです。

主星から惑星までの距離は、惑星が誕生した頃にはちょうど水が氷になるような温度の領域でした。このような領域では惑星が多く形成されると予想されていましたが、実際に惑星が存在していることが確認されたことになります。このような惑星の数の推定にもつながると期待される、重要な成果です。

この研究成果は、米国の天文学専門誌『アストロノミカル・ジャーナル』に2019年11月1日に掲載されました。

1701物理及び化学
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