電気エネルギーを使った有機酸と水からの高効率なアミノ酸合成に成功

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再生可能電力を用いた低環境負荷型の化学合成プロセスとして注目

2019-11-01 九州大学,科学技術振興機構

ポイント
  • 電気エネルギーを使って、水とバイオマスから入手可能なα-ケト酸からの高効率アミノ酸合成を達成した。
  • 世界で初めて電力を使ってアミノ酸を連続的に合成するフロー型リアクターを構築した。
  • 本プロセスは新しい低環境負荷型のファインケミカル製造法として注目される。

九州大学 カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所の福嶋 貴 学術研究員と山内 美穂 教授の研究グループは、再生可能エネルギーから調達できる電気エネルギーと水を使って効率よくアミノ酸を合成することに世界で初めて成功しました。

アミノ酸は、生物の重要な構成要素であるだけでなく、飼料添加物、風味増強剤、医薬品などのさまざまな機能性材料に関与する基本的な物質です。

現在、発酵法によりアミノ酸が生産されていますが、微生物培養に大量のエネルギーが必要であることや分離・精製工程が煩雑であるなどの問題があります。一方、化学的に合成する既存の方法では、有毒な物質が用いられるため、食品・医薬品用途には、使用が敬遠されています。

本研究では、電力をエネルギー源、水を水素源として、木質バイオマスから抽出可能なα-ケト酸と呼ばれる有機酸と含窒素化合物を高選択的に反応させることにより、アラニン、グリシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ロイシン、フェニルアラニンおよびチロシンの7種類のアミノ酸を高効率で合成することができました。アスパラギン酸、ロイシン、フェニルアラニンおよびチロシンの4種類のアミノ酸は、本研究で電気エネルギーを使って初めて合成されました。さらに、アミノ酸を連続的に合成するフロー型リアクターの構築にも世界で初めて成功しました。

これまで、有毒な鉛や水銀、あるいは高価な白金の電極上でアミノ酸合成が行われた例はありましたが、合成効率は非常に低いものでした。一方、本研究では、電極触媒として、より安全で安価な酸化チタン(TiO)を用いることで高選択的にアミノ酸を合成することに成功しました。この新しい合成法は、経済的で環境に優しい持続可能なアミノ酸の製造を実現できるという点で他のどの方法よりも優れているため、将来の画期的な合成法となる可能性を秘めています。

本研究成果は、2019年10月31日(英国時間)にイギリスの王立化学会の速報誌である「Chemical Communications」でオンライン公開されます。

本研究は、科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業 CREST 研究領域「再生可能エネルギーからのエネルギーキャリアの製造とその利用のための革新的基盤技術の創出」(研究総括:江口 浩一 京都大学 大学院工学研究科 教授)研究課題名「ナノハイブリッド材料創製に基づくクリーンアルコール合成システムのデザインと構築」(研究代表者:山内 美穂)と日本学術振興会 新学術領域研究「ハイドロジェノミクス:高次水素機能による革新的材料・デバイス・反応プロセスの創成」(領域代表者:折茂 慎一)、課題番号:18H05517、研究課題:A04「高活性水素の精密制御による新規反応プロセスの創出」(研究代表者:山内 美穂)の支援によって行われました。

<研究者からひとこと>

原始地球では雷の電気エネルギーがもとになって作られたアミノ酸から生命が形作られたという生命の起源説が提唱されています。電力を使ったアミノ酸生成プロセスを深く探求することで、生命の起源の謎を解く、大きなヒントが得られるかもしれません!

<参考図>

図1 フロー型アミノ酸合成電気化学セルの構成

図1 フロー型アミノ酸合成電気化学セルの構成

 

図2 バイオマスと水を原料とするアミノ酸合成のフロー

図2 バイオマスと水を原料とするアミノ酸合成のフロー

 

図3 電力からアミノ酸への変換効率を表すファラデー効率

図3 電力からアミノ酸への変換効率を表すファラデー効率

<論文タイトル>
“Electrosynthesis of amino acids from biomass-derivable acids on titanium dioxide”
DOI:10.1039/C9CC07208J
<お問い合わせ先>
<研究に関すること>

山内 美穂(ヤマウチ ミホ)
九州大学 カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所 教授

<JST事業に関すること>

中村 幹(ナカムラ ツヨシ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ

<報道に関するお問合せ>

九州大学 広報室

科学技術振興機構 広報課

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