2019/5/17 アメリカ合衆国・国立標準技術研究所 (NIST)
(NIST Team Demonstrates Heart of Next-Generation Chip-Scale Atomic Clock)
・ NIST が、微小な 3 枚のチップと電子・光学機器から構成される、次世代の小型光原子時計を開発。
・ NIST が 2004 年に開発したチップスケールの原子時計では、その商用版が高安定のタイミングを要するポータブルアプリケーション産業の標準となっているが、初期校正が必要な上、周波数のずれで生じる誤差が課題。光原子時計は大型・複雑な構造で、計量標準施設や大学での実験でのみ使用されている。
・ 今回開発の光原子時計は、ベーパーセルと呼ばれるチップ上のガラス容器内にあるルビジウム原子の振動をベースとしたもの。同原子による THz 光周波数帯域の振動がクロックレーザー(赤外レーザー)を安定化し、2 個の光周波数コムがこのクロックレーザーを従来の電子機器で測定可能な GHz マイクロ波クロック信号に変換する。
・ 同光原子時計の消費電力は 275mW と極めて低く、さらに技術を進展させることで手で持てるサイズにすることが可能。ナビゲーションシステムや通信ネットワーク等のアプリケーションで使用される発振器の代替や、衛星のバックアップ時計としての役割が考えられる。
・ 標準的な原子時計は、セシウム原子の自然な振動をベースにマイクロ波の周波数で作動。より高い周波数で作動する光原子時計は、時間をさらに小さな単位に分割して、高い Q 値(原子がそれ自体で振動できる時間の長さを表す)を有するため、より高い精度を提供する。1 秒の定義を書き換える役割を担う可能性もある。
・ 同光原子時計のルビジウムベーパーセルと光周波数コムは、コンピューターチップと同様に微細加工で製造できるため、電子・光学機器の追加的統合や量産が可能。小型光原子時計の商用化の道筋を示す。4,000 秒で 1.7×10-13 の周波数安定度で、チップスケールマイクロ波原子時計の約 100 倍優れる 。
・ 今後は低ノイズレーザーの使用により同光原子時計の安定性をさらに向上させ、電子・光学機器のさらに高度な統合による小型化を図る。
(関連情報)
Optica 掲載論文(フルテキスト)
Architecture for the photonic integration of an optical atomic clock
URL: https://www.osapublishing.org/DirectPDFAccess/82D77618-0AF5-0463- F851F363E27E29D5_412688/optica-6-5-680.pdf?da=1&id=412688&seq=0&mobile=no
<NEDO海外技術情報より>