2024-04-30 京都大学
野口高明 理学研究科教授、松本徹 同特定助教、木村勇気 北海道大学教授、加藤丈晴 ファインセラミックスセンター主席研究員、穴田智史 同上級研究員、吉田竜視 同上級技師、山本和生 同主席研究員、谷垣俊明 株式会社日立製作所主任研究員、黒澤耕介 神戸大学准教授、中村智樹 東北大学教授、佐藤雅彦 東京大学助教(現:同准教授)、橘省吾 同教授らの研究グループは、探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウから回収した試料(砂粒)の表面を、電子線ホログラフィーと呼ばれるナノスケールの磁場を可視化できる電子顕微鏡を用いた手法で調べました。その結果、磁鉄鉱(マグネタイト;Fe3O4)粒子が還元して非磁性になった木苺状の擬似マグネタイトと、それを取り囲むように点在する渦状の磁区構造を持った多数の鉄ナノ粒子からなる新しい組織を発見しました。磁性鉱物は、初期太陽系の環境情報を記録できる天然の磁気記録媒体と言えます。これまで知られていた記録媒体は小惑星内で水質変質時に形成するマグネタイトや磁硫鉄鉱にほぼ限られていました。今回発見した新しい組織、とりわけ多数の鉄ナノ粒子は、これまで情報の無かった水質変質後の時代における初期太陽系内の磁場情報を記録している可能性があります。そのため、今後は未踏の太陽系形成史に迫ることのできる新たな磁気記録媒体として利用されることで、太陽系形成に関する新しいサイエンスが切り拓かれることが期待されます。
本研究成果は、2024年4月29日に、国際学術誌「Nature Communications」に掲載されました。
宇宙の塵が小惑星リュウグウへ衝突した跡から、はやぶさ2探査機が持ち帰った試料と、その試料に記録されていた磁場の渦を電子の波で観察したイメージ図
詳しい研究内容について
リュウグウ試料に初期太陽系の新しい磁気記録媒体を発見~太陽系磁場の新たな研究手法の確立に期待~
研究者情報
研究者名:野口 高明
研究者名:松本 徹