サブミリメートルの長距離にも渡る水素の表面拡散を観測~活性水素の利用に新しい道~

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2023-01-18 京都大学

菅大介 化学研究所准教授、鎌田太郎 同修士課程学生(研究当時)、島川祐一 同教授の研究グループと田中庸裕 工学研究科教授、細川三郎 京都工芸繊維大学准教授、湯村尚史 同教授は共同で、パラジウム(Pd)金属上で活性化された水素が0.6ミリメートル(600マイクロメートル)にも渡って酸化物表面を長距離拡散することを明らかにしました。

現在、水素社会の実現に向けて、水素の制御を可能にする現象の理解や材料の開発が極めて重要になっています。酸化物に担持された金属触媒上において生成した活性水素が酸化物表面上へと拡散する現象である水素スピルオーバーは、1964年に発見されて以来、様々な反応や物質開発に利用されてきました。しかしながら、水素はその軽さゆえに実験的に観測が難しいこともあって、水素スピルオーバーに関連する現象に対する理解は定性的なままであり、活性水素の拡散距離やその支配因子など、いまだ理解されていない点が多く残されていました。

研究グループでは、ペロブスカイト型鉄酸化物SrFeOx(x~2.8)のエピタキシャル薄膜をモデル触媒担体として、水素スピルオーバーが触媒担体に与える影響を調べ、Pd金属触媒から600マイクロメートルの広範囲においてSrFeOx担体が還元されることを見出しました。この結果は、水素スピルオーバーによって生成された活性水素が担体表面上を長距離拡散し担体を還元したためと理解できます。さらに、SrFeOx担体表面における水素拡散では、Feの価数が変化し、その際のエネルギー変化が265kJ/molと非常に大きいことが、長距離表面拡散の起源であることも明らかにしました。本研究成果は、これまで難しいと考えられてきた「水素スピルオーバーの制御」に向けた重要な情報であり、さらには活性水素の新しい利用法の開発につながる可能性があります。

本研究成果は、2023年1月10日に、国際学術誌「Journal of the American Chemical Society」にオンライン掲載されました。

詳しい研究内容≫

研究者情報
研究者名:菅 大介
研究者名:島川 祐一
研究者名:田中 庸裕

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