光で窒化シリコン薄膜の熱伝導率を倍増 ~半導体デバイスの高性能化につながる新たな放熱機構~

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2020-10-01 東京大学

ポイント

  • 高集積化の進んだ半導体デバイスでは、熱を運ぶフォノンが散乱されて放熱が困難になるため、高性能化に向けて新しい放熱機構や材料が求められている。
  • 光とフォノンの混合状態である表面フォノンポラリトンを用い、窒化シリコン薄膜の熱伝導率を倍増することに成功した。
  • 新しい放熱機構として、半導体デバイスの高性能化への貢献が期待される。

JST 戦略的創造研究推進事業において、東京大学 生産技術研究所のユンフイ・ウー 特任研究員と野村 政宏 准教授らは、光とフォノンの混合状態である表面フォノンポラリトンを用いて窒化シリコン薄膜の熱伝導率を倍増することに成功しました。

固体中の熱伝導は、熱の運び手であるフォノンの移動で説明され、薄膜においては表面における散乱によって移動が妨げられるため熱伝導率が大きく低下し、温度が高くなるとますます低下していきます。高集積化と微細化が進んだ半導体デバイスでは、小さい領域に大きなエネルギーが注入されるため、局所的な発熱によってデバイス性能が制限されることが多く、放熱を促進するさまざまな工夫がなされています。

本研究では、表面フォノンポラリトンに注目し、熱伝導率の低い薄膜構造において、伝搬速度が桁違いに速い光の力を借りることで熱伝導率を増強し、伝導、対流、放射に次ぐ第4の放熱機構としての可能性を探求しました。

異なる膜厚を持つ窒化シリコンナノ薄膜における熱伝導率を室温から500度の間で測定した結果、厚さが100ナノメートル(nm)の薄膜では、温度が上がるにつれて熱伝導率が低下したのに対し、50nm以下の薄膜では、逆に上昇し続け倍増することが分かりました。これは、薄膜では表面フォノンポラリトンが熱伝導に大きく寄与し、固体熱伝導と同等以上の放熱機構になり得ることを示す成果です。放熱問題を抱える半導体デバイスやシリコンフォトニクス分野への波及効果が期待されます。

本研究は、フランス国立科学研究センターのセバスチャン・ヴォルツ 教授と共同で行いました。

本成果は、2020年9月30日(米国東部夏時間)に米国科学誌「Science Advances」オンライン版で公開されます。

本成果は、以下の事業・研究領域・研究課題によって得られました。

戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)

研究領域「微小エネルギーを利用した革新的な環境発電技術の創出」
(研究総括:谷口 研二 大阪大学 名誉教授)
研究課題「フォノンエンジニアリングに立脚した熱電給電センシングシステム」
研究代表者野村 政宏(東京大学 生産技術研究所 准教授)
研究領域「ナノスケール・サーマルマネージメント基盤技術の創出」
(研究総括:丸山 茂夫 東京大学 大学院工学系研究科 教授)
研究課題「二次元表面フォノンポラリトンの熱伝導制御」
研究代表者セバスチャン・ヴォルツ(フランス国立科学研究センター 教授)
詳しい資料は≫
<論文タイトル>
“Enhanced thermal conduction by surface phonon-polaritons”
(表面フォノンポラリトンによる熱伝導の増強)
DOI:10.1126/sciadv.abb4461
<お問い合わせ先>

<研究に関すること>

野村 政宏(ノムラ マサヒロ)
東京大学 先端科学技術研究センター 極小デバイス理工学分野/生産技術研究所 附属マイクロナノ学際研究センター 准教授

<JST事業に関すること>

嶋林 ゆう子(シマバヤシ ユウコ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ

<報道担当>

科学技術振興機構 広報課
東京大学 生産技術研究所 広報室

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