2022-05-16 愛媛大学
研究の概要
愛媛大学、高輝度光科学研究センター、山梨大学、理化学研究所からなる共同研究チームは、大型放射光施設SPring-8※のBL05XU、BL37XUビームラインにおける高強度の高エネルギーX線を活用することでSiO2ガラスの高圧下における構造変化の解明に成功しました。SiO2は地球に最もありふれた物質の一つです。地球内部におけるマグマから、我々の日常で利用するガラス材料など、様々な科学・技術分野においてSiO2液体・ガラスの構造と特性の理解は重要視されています。特に、SiO2液体・ガラスは圧力下において異常な密度変化や圧縮率変化をすることが知られています。そのようなSiO2の特異な物性のメカニズムを理解することは、物理学、地球科学、材料科学などの幅広い学術分野における重要課題です。これまでの理論研究によって、SiO2液体中の四面体構造の存在と、圧力・温度によるその割合の変化がSiO2の異常特性の構造的起源であることが提唱されてきました。しかし、その実験的な証拠は確認されていませんでした。本研究では、高圧その場環境下におけるX線構造解析の実験を行い、実験結果を逆モンテカルロ解析、分子動力学シミュレーションと組み合わせることで、四面体構造の存在やその高圧下における崩壊を実験的に捉えることに成功しました。
研究のポイント
- 大型放射光施設SPring-8の高強度・高エネルギーX線を活用することにより、高圧その場環境下におけるSiO2ガラスの高精度構造測定に成功しました。
- 理論研究により予測されていたSiO2ガラスに潜む四面体構造の存在とその高圧下における崩壊を実験的に捉えることに成功しました。
- 本研究で開発した実験手法は、液体・非晶質物質の構造を高圧・高温その場環境下で測定することを可能にしており、幅広い科学・技術分野の実験研究に貢献すると期待されます。
論文情報
掲載誌:Nature Communications
題名:Experimental evidence of tetrahedral symmetry breaking in SiO2 glass under pressure
(和訳:圧力下におけるSiO2ガラス中の四面体構造の崩壊の実験的証拠)
著者:Yoshio Kono, Koji Ohara, Nozomi M. Kondo, Hiroki Yamada, Satoshi Hiroi, Fumiya Noritake, Kiyofumi Nitta, Oki Sekizawa, Yuji Higo, Yoshinori Tange, Hirokatsu Yumoto, Takahisa Koyama, Hiroshi Yamazaki, Yasunori Senba, Haruhiko Ohashi, Shunji Goto, Ichiro Inoue, Yujiro Hayashi, Kenji Tamasaku, Taito Osaka, Jumpei Yamada, and Makina Yabashi
DOI:10.1038/s41467-022-30028-w
URL:https://www.nature.com/articles/s41467-022-30028-w
研究関係お問い合わせ先
愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター
准教授 河野 義生
広報関係お問い合わせ先
(愛媛大学に関すること)
愛媛大学 総務部 広報課
(SPring-8/SACLAに関すること)
公益財団法人高輝度光科学研究センター 利用推進部 普及情報課
(山梨大学に関すること)
山梨大学 企画部 広報企画課 広報企画グループ
(理化学研究所に関すること)
理化学研究所 広報室 報道担当