すばる望遠鏡が捉えた、生まれつつある惑星

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2022-04-05 国立天文台

すばる望遠鏡によるぎょしゃ座AB星の赤外線画像
すばる望遠鏡によるぎょしゃ座AB星の赤外線画像。すばる望遠鏡などの観測から、これまで知られていた渦巻き構造を伴った原始惑星系円盤だけでなく、今回新たに発見された原始惑星がはっきりと見えています。主星はこの円盤の中心(★印)の位置にありますが、観測装置によって隠されています。中心付近の楕円(破線)は、太陽系の海王星の軌道(半径が地球-太陽間の距離の約30倍)に相当します。(クレジット:T. Currie/Subaru Telescope) 文字なし (5.0MB)


木星のような巨大惑星が今まさに生まれつつある証拠が、すばる望遠鏡と新たな観測装置との組み合わせによる観測で、初めて捉えられました。このような若い巨大惑星が、主星から遠く離れた場所で捉えられたことは、惑星形成の理論に大きなインパクトを与える知見です。

「ぎょしゃ座AB星」は、生まれて200万年ほどのたいへん若い恒星です。すばる望遠鏡による観測で、惑星を形成する現場である原始惑星系円盤が、2004年にこの星の周囲に発見され、さらにその円盤に隙間やリング状の構造が2011年に確認されました。しかし、惑星の姿を直接捉えることはこれまでできていませんでした。

このたび、国立天文台ハワイ観測所や自然科学研究機構アストロバイオロジーセンターの研究者から成る国際研究チームが、すばる望遠鏡に新たに搭載された超補償光学系と赤外線観測装置を駆使して、ぎょしゃ座AB星の原始惑星系円盤の中に埋もれた成長しつつある「原始惑星」の像を、直接捉えることに成功しました。さらに詳細な解析から、この像は円盤中のガスや塵(ちり)の構造ではなく原始惑星本体であること、またこの惑星に大量の水素ガスが降り積もりつつあることも示したのです。このような成長途上の惑星の姿を直接捉えられたのは初めてのことです。

この惑星は木星の4倍程度の質量があり、惑星が主星を周回する軌道は地球-太陽間の距離の93倍の大きさです。巨大惑星が、若い主星からこれほど離れた場所で形成されつつあるのは、この惑星が太陽系の巨大惑星のように微惑星が成長ののちに周囲のガスを集めて巨大になったのではなく、自己重力によって形成されたからだと考えることができます。今回の研究は、惑星形成理論に、大きなインパクトを与える知見です。

この研究成果は、Currie et al. “Images of embedded Jovian planet formation at a wide separation around AB Aurigae”として、英国の天文学専門誌『ネイチャー・アストロノミー』に2022年4月4日付で掲載されました。

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