星形成領域は大型有機分子の宝庫

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2021-10-20 国立天文台

アミノ酸は、アミノ基(NH2)とカルボキシル基(COOH)を持つ分子化合物です。複数のアミノ酸のアミノ基とカルボキシル基が結合し、-NH-CO-の構造を持つものをペプチドと呼び、約50個以上のアミノ酸がペプチド結合した分子化合物をタンパク質と呼んでいます。ペプチドやタンパク質は、生命活動や生命現象においてなくてはならない生体高分子であることはよく知られています。現在までに240種ほどの分子が宇宙から検出されていますが、ペプチドに類似する分子はわずか4種しか見つかっていません。

天の川銀河の中心方向に位置する「いて座B2」は、複雑な有機分子の最良の狩場の一つであることが知られており、これまでも多くの生命の材料物質となる有機分子が検出されてきました。しかし、いて座B2は非常に多くの分子が存在するため、周波数分解能の低い電波望遠鏡で観測すると複数の分子からの電波が混信してしまい、新しい分子の同定は非常に困難でした。

上海天文台のジュアン・リー氏ならびに国立天文台のシン・ルー特任研究員(現在の所属は上海天文台)が率いる国際研究チームは、アルマ望遠鏡で取得された「いて座B2」の観測データから、これまでに宇宙から検出されたペプチドに似た分子としては最大のものとなるプロピオン酸アミド(C2H5CONH2)が放つ電波を検出したと天体物理学専門誌「アストロフィジカル・ジャーナル」に報告しました。比較的大きなペプチド分子がいて座B2に存在すれば、同領域の星間化学が非常に複雑で、かつ大規模な星形成の過程で小さな分子からより大きな分子が成長する可能性を示しています。今回の観測結果から、オリオンKLなどのような大規模な星形成領域においてもプロピオン酸アミドが存在する可能性があると予想され、今後のアルマ望遠鏡による観測が期待されます。

アルマ望遠鏡で観測した、いて座B2領域の一部。等高線で13CH3CN、カラースケールでプロピオン酸アミドの分布を示しています。N1と示された位置には高温ガスが集まったホットコアがあることが知られています。
Credit: Li et al. “Propionamide (C2H5CONH2): The Largest Peptide-like Molecule in Space”, the Astrophysical Journal, 919, 4. September 16, 2021. Copyright: AAS. Reproduced with permission

論文情報

この研究成果は、Juan Li et al. “Propionamide(C2H5CONH2): The Largest Peptide-like Molecule in Space”として、米国の天体物理学専門誌「アストロフィジカル・ジャーナル」に2021年9月に掲載されました。

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