触媒遺伝子「触媒シークエンシング」を発見 ~触媒インフォマティクスを駆使した新しい触媒開発に成功~

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2021-07-30 北海道大学,北陸先端科学技術大学院大学,科学技術振興機構

ポイント
  • 触媒遺伝子「触媒シークエンシング」を触媒ビッグデータから発見。
  • 触媒組成を従来の周期表の元素記号ではなく、ゲノム配列のように記号で表現。
  • 触媒遺伝子を用いた触媒設計を提案し、実験実証に成功。

北海道大学 大学院理学研究院の髙橋 啓介 准教授、髙橋 ローレン 学術研究員、藤間 淳 特任准教授、宮里 一旗 特任助教らの研究グループは、北陸先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 物質化学領域の谷池 俊明 教授らと共同で、触媒遺伝子「触媒シークエンシング」を触媒ビッグデータから発見しました。

これまで触媒組成は周期表の元素記号で表現されてきましたが、反応場での真の触媒の状態は複雑なため、触媒組成を記述する真の触媒記述子の決定が困難を極めています。そのため機械学習などを用いる触媒インフォマティクスにおいて、触媒物性を記述する上で情報的制約がありました。

そこで本研究では、独自に開発したハイスループット実験装置で得られたメタン酸化カップリング反応の触媒ビッグデータに対して、触媒インフォマティクス・信号処理・パターン認識・自然言語処理を駆使し、新たな触媒の記述方法である「触媒の遺伝子」を定義し提案しました。この「触媒の遺伝子」を用いることで、触媒組成の情報を、生物の塩基配列のように記号で表現することが可能となります。この触媒特有の配列を「触媒シークエンシング」と名付けました。この「触媒シークエンシング」を用いると、従来の元素記号での表記では全く異なる触媒組成であっても、同じ機能を持つ触媒は同じ「触媒の遺伝子」として表現することが可能となります。触媒組成は周期表の元素記号で表現されるのが一般的でしたが、本研究により提案された「触媒遺伝子」により、今後触媒は「触媒シークエンシング」で記述することが可能となります。

この「触媒遺伝子」の有効性を確認するため、同じ「触媒遺伝子」を持つ触媒群の元素を再編成することにより、同じ触媒遺伝子を持つ触媒の設計を行い、実験実証にも成功しました。結果、高いC2収率を達成する新規触媒が発見でき、「触媒遺伝子」が触媒設計に大変有用であることが証明されました。また発見された触媒が既知の触媒と似た遺伝子を持っているのか、もしくは全く新種の触媒遺伝子なのかなど、バイオインフォマティクスで見られる遺伝子解析のような、全く新しい視点での触媒情報の解析が可能となりより発展的かつ実用的な適用が期待できます。

本研究成果は、2021年7月30日(金)公開の「The Journal of Physical Chemistry Letters」誌にてオンライン版が掲載される予定です。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST研究領域「多様な天然炭素資源の活用に資する革新的触媒と創出技術」(研究総括:上田 渉)における「実験・計算・データ科学の統合によるメタン変換触媒の探索・発見と反応機構の解明・制御」(研究代表者:髙橋 啓介)の支援を受けて行われました。

詳しい資料は≫

<論文タイトル>
“Catalysis Gene Expression Profiling: Sequencing and Designing Catalysts”
DOI:10.1021/acs.jpclett.1c02111
<お問い合わせ先>
<研究に関すること>

髙橋 啓介(タカハシ ケイスケ)
北海道大学 大学院理学研究院 准教授

嶋林 ゆう子(シマバヤシ ユウコ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ

<報道担当>
北海道大学 総務企画部 広報課
北陸先端科学技術大学院大学 評価・広報室
科学技術振興機構 総務部 広報課

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