自動走行・モビリティサービスの進展に貢献
2019-10-28 新エネルギー・産業技術総合開発機構
NEDOの「Connected Industries推進のための協調領域データ共有・AIシステム開発促進事業」で、ダイナミックマップ基盤(株)は自動走行用高精度3次元地図(HDマップ)整備の効率化・低コスト化の支援ツールの開発に着手します。
HDマップを作成するためには、道路の高精度な3次元位置情報や路上の物体情報を取得・解析し、それらを自動運転システムが活用しやすい構造に統合する膨大なデータ処理が必要であり、国内外での本格的なHDマップのデータ整備に向けて更なる効率化・低コスト化が求められています。
本事業では、安全・品質を確保した上で計測データを取得・解析・統合するためのシステムの構築と、HDマップ製作におけるリードタイム・コスト削減に向けたディープラーニングなどの最新技術を活用した新たなツールの開発を行い、高速道路・自動車専用道路のHDマップの維持・更新の低コスト化を目指します。また、今後の国内外の一般道路・高速道路・自動車専用道路のHDマップ整備に展開することで、自動走行・モビリティサービスの進展に貢献します。
図 事業の全体イメージ
1.概要
政府は、「Society 5.0※1」を実現するため、IoTや人工知能(AI)などさまざまなテクノロジーによって新たな付加価値の創出や社会課題の解決をもたらすべく、「Connected Industries」政策を推進しています。「Connected Industries」重点5分野の一つである自動走行・モビリティサービス分野では、自動走行車両の自車位置推定、認識性能を高めるため高精度3次元地図(HDマップ)の整備を推進しています。現在、日本国内の高速道路・自動車専用道路約3万km(リンク長)の初期整備が完了し、今後は維持・更新事業へ移行する一方、一般道路に対する整備範囲の拡大も2020年度から段階的に進められることが検討されています。また、日本国内でHDマップを搭載した自動走行車両は2019年からすでに販売されており、今後、国内外での販売台数の拡大が予想され、自動走行のデジタルインフラとして重要な役割を担うHDマップに対する世界的な期待が高まっています。
HDマップには、従来のドライバーが使用するためのナビゲーションシステム用電子地図では要求されない道路の車線単位の精度が必要なため、モービルマッピングシステム(MMS)※2を用いて、高精度な3次元位置情報(緯度・経度・高さ)が付与されたレーザー点群データとカメラ画像から抽出した車線区画線、路肩、標識などの路上の物体情報を取得し、それらを自動運転システムが活用しやすい構造に統合することが求められます。そのため膨大なデータ処理が必要であり、HDマップの協調領域のデータ整備に向けて、維持・更新の更なる効率化・低コスト化が求められています。
そこで、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の業界横断型AIシステムと業界共用データ基盤の連携開発を支援する「Connected Industries推進のための協調領域データ共有・AIシステム開発促進事業※3」において、ダイナミックマップ基盤株式会社は、HDマップの効率的な維持・更新を実現するために、以下の開発に取り組みます。
1)安全・品質を確保した上で計測データの取得・解析・統合を行うためのシステム開発
- データの不正利用防止のためのセキュリティ機能
- 小型で低価格なリアルタイムデータ収集機能(次期MMS技術開発)
- 収集したデータの位置精度を所要の精度に変換する機能
- HDマップの精度検証用グランドコントロールポイント(GCP)※4の設定機能
2)熟練技術者の経験値に頼る部分が大きいHDマップ製作過程におけるリードタイム・コスト削減を目的とした、ディープラーニングなどの最新技術を活用した半自動化・自動化ツールの開発
- 道路変化差分特定機能
- 点群データ自動接合機能
本事業を通じて、高速道路・自動車専用道路のHDマップの維持・更新の低コスト化を目指します。また、今後の国内外の一般道路・高速道路・自動車専用道路のHDマップ整備に展開することで、自動走行・モビリティサービスの進展に貢献します。
2.採択テーマと助成事業者
- 事業名:
- Connected Industries推進のための協調領域データ共有・AIシステム開発促進事業/
業界横断型AIシステムと業界共用データ基盤の連携開発/
自動走行用HDマップ整備の低コスト化などに係る外部連携システムとAIシステムの検討・開発
- 助成先:
- ダイナミックマップ基盤株式会社
- 事業期間:
- 2019年度から最長2020年度
【注釈】
- ※1 Society 5.0
- 第5期科学技術基本計画(2016年1月22日閣議決定)において、日本が目指すべき未来社会の姿として提唱された概念で、狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続くものとして、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、社会課題の早期解決と新産業の創出を両立する新たな社会を指します。
- ※2 モービルマッピングシステム(MMS:Mobile Mapping System)
- カメラ、LiDAR(レーザー計測技術)、GPSなどで構成される移動体計測システムのことです。
- ※3 Connected Industries推進のための協調領域データ共有・AIシステム開発促進事業
- Connected Industries重点5分野を中心に、海外や他分野に横展開可能で、スタートアップなどの新規プレーヤーに開放的なデータエコシステムの構築につながる業界横断型AIシステムの開発と業界共用データ基盤の開発を通じて、AIシステムとデータプラットフォームが一体となったAI・データエコシステムの成功事例を創出し、国内企業にとどまらない幅広いデータ連携による価値の創出を促進します。
- ※4 グランドコントロールポイント(GCP:Ground Control Point)
- 測量の精度を高めるために設置する基準点のことです。
3.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO IoT推進部 担当:山本、大宮、工藤