スタンフォード大学エンジニアらが皮膚に貼り付けて健康状態をモニタリングするワイヤレスセンサーを開発 (Stanford engineers have developed wireless sensors that stick to the skin to track our health)
2019/8/16 アメリカ合衆国スタンフォード大学
・ スタンフォード大学が、皮膚が発信する生体信号を検出し、その測定値を衣服に留められた受信機に無線で送信するシステム、BodyNet を開発。次世代のオーダーメイド医療・健康管理システムへの応用が期待できる。
・ 皮膚が発する様々な身体保護的な信号は、普段は当然のこととして受け止められ、その機能は無視されがちである。本研究ではその機能に着目し、バンドエイドのように皮膚に張り付けたセンサーが検出する信号を、衣服に留めた受信機に無線で送信する、ウェアラブルセンサー技術を実証。研究者たちが被験者となり、手首と腹部にセンサーを貼りつけて、心拍や呼吸ごとに皮膚がどのように伸縮するかを検出して、脈拍や呼吸をモニタリング。同様に、肘と膝にもセンサーを貼り、筋肉の収縮ごとの皮膚の締め付けや弛緩具合を測定して、腕や足の動きを追跡した。
・ 研究室では、設計に 3 年かけ、皮膚の伸縮を妨げずに着心地がよく、バッテリーや硬い回路が不要なステッカー型センサーの作製を目指した。その結果、施錠した部屋のキーレスエントリーの制御に使用されている技術、無線周波数識別(RFID)技術の応用に行き着いた。ID カードを RFID 受信機にかざすと、ID カードに内蔵されたアンテナが、受信機から RFID のエネルギーを少量収集し、コードを生成して、受信機に無線で送り返す。
・ BodyNet のステッカー型センサーは、この ID カードに似ていて、衣服に留めた受信機から微量の RFID のエネルギーを収集するアンテナを内蔵し、センサーに電力を供給。その後、皮膚から測定した値を近くの受信機に無線で送り返す。
・ この無線のステッカー型センサーを機能させるためには、皮膚のように伸縮するアンテナを作製しなければならなかったが、本研究では、ゴム製のステッカーに金属インクをスクリーン印刷して対応。しかし、アンテナが伸縮する度にその動きが信号を弱くさせ、不安定となってしまった。
・ この課題を解決するために、常に動いていても、強力で正確な信号を受信機に送信できる新しいタイプの RFID システムを開発。バッテリー駆動の受信機は、Bluetooth を使用、ステッカーからスマートフォン、コンピューターや他の貯蔵システムに、データを定期的にアップロードする。・ ステッカーの初期バージョンは、呼吸や脈拍の測定を極小の運動センサーに依存していた。現在、汗、温度や他のセンサーをアンテナシステムに取り込む方法を研究中。
・ 本技術を臨床アプリケーションよりさらに消費者に優しいデバイスに移行するためには、センサーと受信機を互いに近づけておく必要がある。実験では、各センサーのほぼ真上の位置の衣服上に、受信機を留めた。一つのセンサーに対して一つの受信機というペアリングは、医療モニタリングには適しているものの、運動時に装着できる BodyNet を形成するためには、センサーを体のどこに張り付けても信号を送受信できるアンテナを衣服に織り込まなければならず、今後の課題。
・ 研究者たちは、BodyNet は、睡眠障害や心臓疾患の患者のモニタリング等、医療現場で役に立つ、と考えている。研究室ではすでに、汗や他の分泌物から発熱やストレス度を検出する新しいタイプのステッカー型センサーを開発中。最終的には、皮膚に密着し、スマートウェアと連動して動くワイヤレスセンサーのアレイを作製して、スマートフォンやスマートウォッチで観測されるよりもさらに高精度で、広範囲なモニタリングを目指す。今後は、人間の日常の動作を妨げることなく生体データを収集可能な、全身の皮膚センサーアレイを開発する予定。
・ 本研究は、サムソン電気(Samsung Electronics)、Singapore Agency for Science, Technology and Research 、 日 本 学 術 振 興 会 、 Stanford Precision Health and Integrated Diagnosis Center (https://med.stanford.edu/phind.html )の支援を受けた。
URL: https://news.stanford.edu/2019/08/16/wireless-sensors-stick-skin-track-health/
(関連情報)
Nature Electronics 掲載論文(アブストラクトのみ:全文は有料)
A wireless body area sensor network based on stretchable passive tags
URL: https://www.nature.com/articles/s41928-019-0286-2
<NEDO海外技術情報より>
Abstract
A body area sensor network (bodyNET) is a collection of networked sensors that can be used to monitor human physiological signals. For its application in next-generation personalized healthcare systems, seamless hybridization of stretchable on-skin sensors and rigid silicon readout circuits is required. Here, we report a bodyNET composed of chip-free and battery-free stretchable on-skin sensor tags that are wirelessly linked to flexible readout circuits attached to textiles. Our design offers a conformal skin-mimicking interface by removing all direct contacts between rigid components and the human body. Therefore, this design addresses the mechanical incompatibility issue between soft on-skin devices and rigid high-performance silicon electronics. Additionally, we introduce an unconventional radiofrequency identification technology where wireless sensors are deliberately detuned to increase the tolerance of strain-induced changes in electronic properties. Finally, we show that our soft bodyNET system can be used to simultaneously and continuously analyse a person’s pulse, breath and body movement.