2019–9-27 国立天文台
今回発見された観測史上最も遠方にある原始銀河団(z66OD 原始銀河団)の擬似カラー画像。すばる望遠鏡による3色の観測データを合成することで、画像に色をつけています。青色の部分がz66OD 原始銀河団で、青色の濃さは原始銀河団を構成する銀河の天球面密度を表しています。拡大図の中心にある赤い天体が、原始銀河団に存在する12個の銀河です。画像全体の視野は24分角×24分角(129.7億光年かなたの宇宙における実スケールで1.98億光年×1.98億光年)、各拡大図の視野は16秒角×16秒角(220万光年×220万光年)に相当します。(クレジット:国立天文台/Harikane et al.) オリジナルサイズ(4.7MB)
すばる望遠鏡、ケック望遠鏡、およびジェミニ北望遠鏡を使った観測により、地球から130億光年かなたの宇宙に12個の銀河からなる「原始銀河団」が発見されました。これは現在知られている中で最も遠い原始銀河団となります。
現在の宇宙には、1000個程度の銀河が集まった「銀河団」が存在しています。銀河団は宇宙で最も質量の大きな天体であり、銀河団同士がお互いに結びつき合ってさらに大きな構造(宇宙の大規模構造)を作っています。138億年の長い宇宙の歴史の中でどのように銀河団ができていったのかは天文学における重要な問題です。
国立天文台の播金優一(はりかね ゆういち)さん(日本学術振興会特別研究員)を中心とする国際研究チームは、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラHyper Suprime-Cam(ハイパー・シュプリーム・カム、HSC)を使い、初期宇宙に存在する形成途中の銀河団「原始銀河団」の探査を行いました。その結果、くじら座の方角に原始銀河団の候補「z66OD」を発見しました。ケック望遠鏡およびジェミニ北望遠鏡による分光観測により、z66ODに含まれる12個の銀河がいずれも同じ約130億光年の距離にあることを突き止めました。また、これらの銀河の中では、驚くほど激しく星が生まれていたことも分かりました。
この原始銀河団の中には、過去にすばる望遠鏡が発見した巨大ガス雲天体「ヒミコ」が位置しています。しかしヒミコは、原始銀河団の中心ではなく、中心から5000万光年も離れた位置にいたのです。どうしてヒミコが中心にいないのかはまだ分かっていませんが、これは銀河団と巨大銀河の関係を理解する上で重要な手がかりになるでしょう。
今回の発見は、以前すばる望遠鏡が見つけた最遠方の原始銀河団の記録等を塗りかえて、現在知られている中で最も遠い原始銀河団の発見となりました。宇宙年齢が8億年の時代(現在の宇宙年齢の6パーセント以下の時代)の初期宇宙に、活発に星を作りながら成長する原始銀河団が存在したことを示す、重要な成果です。
この研究成果は、米国の天体物理学専門誌『アストロフィジカル・ジャーナル』に2019年9月30日付で掲載される予定です。