〇向こう1か月の主要な病害虫の発生予察情報(発生予報)については次のとおりです。
・水稲では、斑点米カメムシ類の発生が北海道、北東北及び北陸の一部の地域で多くなると予想されています。水田の観察を行い、発生状況に応じて適期に防除を実施してください。
・野菜類では、ねぎのアザミウマ類の発生が北東北及び近畿の一部の地域で多くなると予想されています。ほ場の観察をきめ細かく行い、発生初期に防除を実施してください。
・果樹では、かんきつのハダニ類の発生が中国及び北九州の一部の地域で多くなると予想されています。園内を注意深く観察し、適期に防除を実施してください。このほか、なしの黒星病等、地域によっては多くなると予想されている病害虫があるので注意してください。
〇また、本年7月3日(水曜日)、鹿児島県において、国内で初めてツマジロクサヨトウの発生が確認されました。本虫の防除には、早期発見が重要であることから、疑わしい虫を見つけた場合は、都道府県病害虫防除所又は植物防疫所まで御連絡をお願いします。
国の発生予察情報について
国は都道府県の協力の下、植物防疫法(昭和25年法律第151号)に基づき、有害動植物の防除を適時で経済的なものにするため、気象、農作物の生育状況、有害動植物の発生調査結果等を分析し、有害動植物の発生予察情報及び防除対策に係る情報を提供しています。
本予報は、都道府県が提供する発生予察情報を取りまとめた情報になりますので、地域における情報の詳細は、都道府県病害虫防除所のホームページ等を参照してください。
発生予察について
参照URL:http://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/gaicyu/index.html
都道府県病害虫防除所
参照URL:http://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/boujyo/120105_boujosho.html
気象
気象庁の向こう1か月の予報(7月4日付け)では、気温は沖縄・奄美地方を除いて低く、降水量は東・西日本で平年並みか多いと予想されています。
気象庁ホームページ
参照URL:http://www.jma.go.jp/jp/longfcst/001_00.html (外部リンク)
水稲
水稲で各地の平年値より発生が「多い」・「やや多い」と予想される病害虫及びその地域
作物名 | 病害虫名 | 発生が「多い」と予想される地域 | 発生が「やや多い」と予想される地域 |
水稲 | いもち病 | 北海道、北東北、関東、北陸、東海、中国、四国、南九州 | |
ツマグロヨコバイ | 北陸、近畿、南九州 | ||
縞葉枯病 (ヒメトビウンカ) |
中国 | 四国 | |
紋枯病 | 南関東 | 東北、北陸、東海、中国 | |
斑点米カメムシ類 | 北海道、北東北、北陸 | 南東北、東海、四国、九州 |
注)表中の地域については、必ずしもその全域で発生が見られるものではありません。
・いもち病(葉いもち)の発生が、北海道、北東北、関東、北陸、東海、中国、四国及び南九州の一部の地域でやや多くなると予想されています。向こう1か月予報では、降水量が東・西日本で平年並みか多くなると予想されており、断続的な降雨がある場合には本病に感染しやすい条件となるため、急激に発生するおそれがあります。水田の観察を行い、本病の発生状況に応じて適期に防除を実施してください。また、補植用取置き苗は、密生して本病に感染しやすく発生源になりやすいので、放置せずに早期の除去を徹底してください。
なお、一部の薬剤に対して耐性菌が発生しているので、都道府県から発表される発生予察情報等を参考に薬剤を選定してください。
・斑点米カメムシ類の発生が、北海道、北東北及び北陸の一部の地域で多くなると予想されています。本虫は、水田周辺の雑草に生息し、出穂期になると水田に侵入し穂を加害します。近年は、移動性が高い飛翔性のアカスジカスミカメとアカヒゲホソミドリカスミカメの発生が多くなっています。
また、水田周辺雑草の除草は本虫の発生量の抑制に効果的ですが、出穂期直前の除草は、本虫の水田への侵入を助長し被害を増加させるおそれがあるため、出穂期の10日前までに完了してください。
野菜・花き
野菜・花きで各地の平年値より発生が「多い」・「やや多い」と予想される病害虫及びその地域
作物名 | 病害虫名 | 発生が「多い」と予想される地域 | 発生が「やや多い」と予想される地域 |
きゅうり | アブラムシ類 | 北東北、南関東、四国 | |
べと病 | 北陸 | 東北、南九州 | |
トマト | コナジラミ類 | 南関東、四国 | |
なす | アザミウマ類 | 近畿 | 南九州 |
ハダニ類 | 南関東、四国 | ||
ねぎ | アザミウマ類 | 北東北、近畿 | 北陸、中国、四国、北九州 |
さび病 | 北東北、北陸 | ||
アブラナ科全般 | コナガ | 北海道、北関東、中国 | |
野菜共通 | オオタバコガ | 北陸、近畿、四国、南九州 | |
シロイチモジヨトウ | 北陸、近畿、四国 | ||
ハスモンヨトウ | 近畿、南九州 | 中国、四国 | |
きく | アザミウマ類 | 南東北、北陸、近畿、南九州 | |
アブラムシ類 | 南東北、北陸 |
注)表中の地域については、必ずしもその全域で発生が見られるものではありません。
ねぎ
・アザミウマ類の発生が、北東北及び近畿の一部の地域で多くなると予想されており、京都府では注意報が発表されています。本虫は作物を加害するほか、多くの病原ウイルスを媒介することが知られています。発生密度が高くなってからでは防除が困難となるため、ほ場の観察をきめ細かく行うとともに、発生初期に防除を実施してください。
また、本虫は薬剤抵抗性を獲得しやすいので、都道府県から発表される発生予察情報等を参考に薬剤を選定するとともに、天敵生物等の各種防除手段を組み合わせた防除の実施についても検討してください。
野菜共通
・ハスモンヨトウの発生が、近畿及び南九州の一部の地域で多くなると予想されており、京都府では注意報が発表されています。ほ場内の発生状況に注意しつつ、都道府県から発表される発生予察情報等を参考に、適期に防除を実施してください。
果樹
果樹で各地の平年値より発生が「多い」・「やや多い」と予想される病害虫及びその地域
作物名 | 病害虫名 | 発生が「多い」 と予想される地域 |
発生が「やや多い」 と予想される地域 |
かき | カイガラムシ類 | 北陸 | 四国 |
かんきつ | かいよう病 | 南関東、四国、 九州、沖縄 |
|
そうか病 | 東海 | 北九州、沖縄 | |
ハダニ類 | 中国、北九州 | 南関東、東海、 近畿、四国 |
|
なし | 黒星病 | 南東北、北陸 | 東海、近畿、南九州 |
黒斑病 | 近畿、中国 | ||
ハダニ類 | 北東北 | 南関東、南九州 | |
ぶどう | べと病 | 東海 | 甲信、北陸 |
もも | せん孔細菌病 | 中国 | 東北、甲信、 北陸、東海 |
りんご | 黒星病 | 北海道 | 東北 |
果樹全般 | 果樹カメムシ類 | 南関東 | 北東北、北関東、 東海、近畿、 中国、四国 |
茶 | カンザワハダニ | 近畿、北九州 | 南関東 |
ハマキムシ類 | 南関東、北九州 | 南九州 | |
炭そ病 | 南関東、東海、 近畿、南九州 |
注)表中の地域については、必ずしもその全域で発生が見られるものではありません。
かんきつ
・ハダニ類の発生が、中国及び北九州の一部の地域で多くなると予想されています。園内を注意深く観察し、発生状況に応じて防除を実施してください。
なお、本虫は薬剤抵抗性を獲得しやすいので、都道府県から発表される発生予察情報等を参考に同一系統の農薬の連続使用を避けてください。
なし
・黒星病の発生が、南東北及び北陸の一部の地域で多くなると予想されています。対策にあっては、り病部の除去、薬剤散布等の防除を実施してください。
また、一部の薬剤に対して耐性菌が発生しているので、都道府県から発表される発生予察情報等を参考に効果的な薬剤による防除を実施してください。
りんご
・黒星病の発生が、北海道の一部の地域で多くなると予想されています。昨年の発生量が多かった地域では、伝染源が多くなっていると予想されることから、特に注意が必要です。対策に当たっては、伝染源となるり病部の除去、薬剤散布等の防除を実施してください。
また、一部の薬剤に対して耐性菌が発生しているので、都道府県から発表される発生予察情報等を参考に効果的な薬剤による防除を実施してください。
茶
・カンザワハダニの発生が、近畿及び北九州の一部の地域で多くなると予想されています。三番茶摘採園で多発が予想される場合には、薬剤の使用前日数等に留意しつつ適切な防除を実施してください。
・ハマキムシ類の発生が、南関東及び北九州の一部の地域で多くなると予想されています。ハマキムシ類は、地域及び薬剤の種類により効果が異なることが知られています。また、幼虫が葉をつづり合わせてからでは薬剤がかかりにくくなるため、ふ化期~若齢幼虫期を対象とした薬剤散布が効果的です。都道府県から発表される発生予察情報等を参考に、適切な薬剤を選定し、地域の予察灯やフェロモントラップによる前世代成虫の誘殺最盛日の7日後程度を目安に防除を実施してください。
都道府県が発表した警報、注意報及び特殊報
令和元年6月11日以降、都道府県が発表している警報、注意報及び特殊報は以下のとおりです。
警報
重要な病害虫が大発生することが予測され、かつ、早急に防除措置を講ずる必要がある場合に発表します。
発表はありません。
注意報
警報を発表するほどではありませんが、重要な病害虫が多発することが予測され、かつ、早めに防除措置を講じる必要がある場合に発表します。
発表月日 | 都道府県 | 対象作物 | 対象病害虫 |
6月12日 | 北海道 | 野菜類 | ヨトウガ |
6月12日 | 兵庫県 | 果樹全般 | 果樹カメムシ類 |
6月13日 | 新潟県 | なし | ナシ黒星病 |
6月20日 | 宮崎県 | 水稲 | 斑点米カメムシ類 |
6月25日 | 徳島県 | さつまいも | シロイチモジヨトウ |
6月26日 | 京都府 | 野菜類、豆類 | アザミウマ類 |
6月26日 | 京都府 | 野菜類、豆類 | ハスモンヨトウ |
6月26日 | 京都府 | 茶 | カンザワハダニ |
7月1日 | 大分県 | ねぎ | シロイチモジヨトウ |
7月2日 | 愛知県 | ぶどう | ブドウべと病 |
7月8日 | 埼玉県 | 茶 | チャハマキ |
特殊報
各都道府県において、新たな病害虫を発見した場合並びに重要な病害虫の生態及び発生消長に特異な現象が認められた場合であって、従来と異なる防除対策が必要となるなど、生産現場への影響が懸念される場合に発表します。
病害虫の生態等の生物学的情報や防除に関する情報の詳細については、各都道府県の病害虫防除所のホームページ等を参照してください。
発表月日 | 都道府県 | 対象作物 | 対象病害虫 |
6月11日 | 和歌山県 | ばら | ノイバラハオレタマバエ |
6月12日 | 滋賀県 | なす、 ばれいしょ |
タバコノミハムシ |
6月20日 | 岡山県 | なす | タバコノミハムシ |
6月28日 | 神奈川県 | ブルーベリー | オウトウショウジョウバエ |
7月1日 | 熊本県 | トルコ ギギョウ |
トルコギキョウ 萎凋細菌病 |
7月5日 | 群馬県 | トルコ ギギョウ |
トルコギキョウ 斑点病 |
7月5日 | 和歌山県 | さつまいも | ヨツモンカメノコハムシ |
7月5日 | 鹿児島県 | 飼料用 とうもろこし |
ツマジロクサヨトウ |
ツマジロクサヨトウ対策について
本年7月3日(水曜日)、鹿児島県において、国内で初めてツマジロクサヨトウの発生が確認されました。これを受け、農林水産省では、同年7月9日(火曜日)、本虫について、まん延の防止に向けた対策を緊急的に実施することとし、プレスリリースを行いました。
ツマジロクサヨトウ対策について
参照URL:http://www.maff.go.jp/j/press/syouan/syokubo/190709.html
本虫の防除には、早期発見が重要であることから、疑わしい虫を見つけた場合は、都道府県病害虫防除所又は植物防疫所まで御連絡をお願いします。
都道府県病害虫防除所及び植物防疫所の連絡先は、以下のURLに掲載されています。
都道府県病害虫防除所の所在地一覧
参照URL:http://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/boujyo/120105_boujosho.html
各植物防疫所(国内検疫担当)の問合せ先
参照URL:http://www.maff.go.jp/pps/j/guidance/outline/contact.html
病害虫防除に関する留意事項
一般
病害虫の防除を効果的に実施するためには、注意深くほ場観察を行うことにより、病害虫の発生状況を的確に把握することが必要となります。病害虫の発生は天候の影響を大きく受けるので、天気の推移に注意しつつ、各都道府県の防除指針に従い、適期に適切な防除を実施してください。
薬剤防除を実施する場合は、病害虫が薬剤抵抗性を獲得しないように、同じ作用機作の薬剤の連続使用を避けてください。また、農薬の使用基準を遵守して適切な薬剤を選択するとともに、散布対象外の農作物等に農薬が飛散しないよう対策を講じてください。
露地栽培
引き続きほ場観察を行い、病害虫の早期発見に努め、発生を認めた場合は適期に適切な防除を実施してください。
施設栽培
ウイルス病を媒介するアザミウマ類、アブラムシ類、コナジラミ類等の侵入や野外への飛び出しを防止するため、施設の開口部に防虫ネットを設置する等の対策を実施してください。また、雑草はこれら害虫の発生源となるので、施設内及び周辺の除草を定期的に行うよう努めてください。引き続きほ場観察を行い、病害虫の早期発見に努め、発生を認めた場合は適期に適切な防除を実施してください。
作物残さは、害虫の発生源となり、り病葉及びり病果は、病害の伝染源となります。栽培終了後は、作物を枯死させ餌をなくすことで生存虫を死滅させてから搬出し、土中に埋める等、確実に処分をしてください。
施設内が過湿になると、病害の発生が助長されるため、雨水が施設内に入らないように留意するとともに、過度なかん水を回避する、循環扇を設置する、換気を行う、作物の株間の通風を図る等により、施設内が過湿にならないように管理してください。また、病害の早期発見に努め、伝染源となるり病葉及びり病果は除去し、適期に薬剤防除を実施してください。
用語解説
(地域)
北海道:北海道
東北:青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県
北東北:青森県、岩手県、秋田県
南東北:宮城県、山形県、福島県
関東:茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県
北関東:茨城県、栃木県、群馬県
南関東:埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県
甲信:山梨県、長野県
北陸:新潟県、富山県、石川県、福井県
東海:岐阜県、静岡県、愛知県、三重県
近畿:滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県
中国:鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県
四国:徳島県、香川県、愛媛県、高知県
九州:福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県
北九州:福岡県、佐賀県、長崎県、大分県
南九州:熊本県、宮崎県、鹿児島県
沖縄:沖縄県
(発生量(程度))
多い(高い):やや多いの外側10%の度数の入る幅
やや多い(やや高い):平年並の外側20%の度数の入る幅
平年並:平年値を中心として40%の度数の入る幅
やや少ない(やや低い):平年並の外側20%の度数の入る幅
少ない(低い):やや少ないの外側10%の度数の入る幅
(平年値は過去10年間の平均)
(参考)今後の発表予定日
第5号:7月24日(水曜日)
第6号:8月7日(水曜日)
第7号:9月11日(水曜日)
第8号:10月16日(水曜日)
第9号:11月13日(水曜日)
第10号:令和2年2月12日(水曜日)
(参考)これまでの発表
第1号:4月17日(水曜日)
第2号:5月15日(水曜日)
第3号:6月12日(水曜日)
お問合せ先
消費・安全局植物防疫課
担当者:白石、渡邉、宮木