地域住民による農業水路や農地の保全活動が地域経済へ波及する効果を簡便に評価するWEBツール

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専門的知識不要で、活動経費を入力するだけで評価可能

2019-06-18  農研機構

ポイント

農業者や地域住民が農用地、水路、農道などの地域資源を保全管理する、多面的機能支払交付金1)を活用した共同活動について、その活動による地域経済への波及効果を評価できるWEBツールを開発しました。ユーザーは、活動に要した経費と活動地域をブラウザ上で入力するだけで、波及効果を算定できます。本ツールは、このような活動による地域経済への貢献を見える化し、活動を促進する施策の評価に役立てることができます。

概要

現在、全国1,429市町村(2017年度時点)において、農業者や地域住民が農用地、水路、農道などの地域資源を保全管理する共同活動が、「多面的機能支払交付金」を活用して実施されています。この活動は、国土や生態系の保全など農業・農村の有する多面的機能の維持・発揮のみならず、実施市町村や周辺地域の地域経済活性化に寄与することが期待されています。しかし、経済波及効果2)を定量的に明らかにするためには経済分析に関する専門的知識が必要であり、従来はほとんど行われてきませんでした。
そこで農研機構は、活動に関わる行政機関や土地改良区等の実務者が、簡便に活動の経済波及効果をブラウザ上で評価できるアプリケーションを開発し、ウェブサイトに公開しました。ユーザーは、対話形式により活動に要した経費の品目ごとの支出額と活動地域を入力するだけで、専門的な分析手法(産業連関分析3))にもとづく波及効果を求めることが可能です。計算結果は、その活動を行う市町村、同じ都道府県内の他市町村、他の都道府県に分かれて出力されます。
本ツールは、多面的機能支払交付金による活動の地域経済活性化への貢献度合いをわかりやすく示すこと(見える化)で、行政機関や関係団体が活動を促進するための施策の評価に役立てることができます。

評価ツールURL

http://kinohyoka.jp/より「多面的機能支払交付金経済評価ツール」を選択

関連情報

予算 : 科研費 基盤研究(B) (特設分野研究) 16KT0036(2016-2018) / 戦略的イノベーション創造プログラム(内閣府)「インフラ維持管理・更新・マネジメント技術」(2014-2018)

問い合わせ先など

研究推進責任者 : 農研機構 農村工学研究部門 研究部門長 土居 邦弘
研究担当者 : 同 地域資源工学研究領域 上田 達己(國光 洋二)
広報担当者 : 同 交流チーム長 猪井 喜代隆

詳細情報

開発の社会的背景と経緯

農業者と地域住民が協働して、地域資源(農用地、水路、農道など)の保全管理を行う活動が、全国1,429市町村(2017年度時点)で行われています。この活動は「農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律(平成26年法律第78号)」に基づき、「多面的機能支払交付金」を活用して実施されています。このような交付金支出の社会的な意義を、地域住民はもとより、広く国民全体に示すためには、この活動に要する経費が実施市町村の経済活性化にどの程度貢献するのかを明らかにすることが重要です。一般に、活動に要する経費の支出は、お金の流れとともに活動地域内外に波及しますが、その波及効果を定量化するためには、経済分析(産業連関分析)に関する専門的知識が必要であり、従来はほとんど行われてきませんでした。
そこで農研機構は、活動のための資金を提供する行政機関やともに活動を行う土地改良区等の実務者が、簡便に多面的機能支払交付金による活動の経済波及効果をブラウザ上で評価できるアプリケーションを開発し、ウェブサイトに公開しました。

研究の内容・意義

多面的機能支払交付金による地域資源の保全活動は、国土や生態系の保全など農業・農村の有する多面的機能の維持・発揮等を目的としていますが、それに加えて、活動による経費の支出が、実施市町村はもとより、周辺の地域に波及して地域経済の活性化に貢献する効果を示すことにより、活動に対する国民の理解が進み、施策のアカウンタビリティを高めることができます。
そこで、行政機関や土地改良区などが、多面的機能支払交付金を活用して農業水利施設等を保全する地域の共同活動の経費支出が、地域経済に波及する効果を評価・分析するWEBツールを開発しました。(http://kinohyoka.jp/)。本ツールは、広く専門家に認められた分析手法に基づいた分析結果を提供します。

開発したツールの特徴

1.上記のウェブサイトから、「多面的機能支払交付金経済評価ツール」を選択します。続いて、対話形式により、活動を行う地域を指定し、使途別の支出額を入力します(図1)。以上により、計算が実行できます。

2.産業連関モデルの計算は自動的に行われるため、産業連関分析の専門知識がなくても使えます。計算は、アプリケーションに組み込まれた都道府県間産業連関表4)と市町村民所得額のデータに基づき、産業連関モデルと地域シェア法5)を用いて行われます。

3.経済波及効果は、活動を行う市町村、同じ都道府県内の他市町村、他の都道府県に分かれて出力されます(図2)。図2の事例では、100万円の交付金支出に対し、約130万円が当該の市町村内に波及する(自市町村内波及率35%)ことがわかります。

今後の予定・期待

本ツールの解説記事を、農研機構研究報告(農村工学研究部門)第2号に掲載しています。本ツールは、多面的機能支払交付金による活動の地域経済活性化への貢献度合いをわかりやすく示すこと(見える化)で、行政機関や関係団体が活動を促進するための施策の評価に役立てることができます。

用語の解説

1)多面的機能支払交付金
農業・農村の有する多面的機能の維持・発揮を図るための地域の共同活動に係る支援を行い、地域資源の適切な保全管理を推進するために交付される交付金のことです。農用地、水路、農道などの保全活動のほか、生態系や景観の保全など農村環境の保全活動も対象となります。交付金の交付対象は、農業者や地域住民などから構成される活動組織等となっています。

2)経済波及効果(地域経済への波及効果)
狭義では、「生産誘発額(後方連関効果)」(ある最終需要が生じたときに、その需要を支えるために、経済全体で必要となる生産増加額)のことを指しますが、ここでは、それに加えて、「付加価値誘発額」(生産誘発額のうち付加価値分)や「雇用誘発者数」(生産誘発に伴って創出が期待される雇用者の数)、さらに「所得連関効果」(家計の所得・消費の増加を通じた波及効果)も含めた意味で用いています。
なお、多面的機能支払交付金は、農業生産等に伴ってもたらされる国土・景観・環境保全効果などを維持することを目的にしていますが、本ツールはこれら効果の計算を直接行うものではありません。すなわち、これら効果と本ツールで扱う「経済波及効果」は異なる評価項目であることに留意ください。

3)産業連関分析
地域経済全体を複数の産業部門に分割し、それら部門間の取引を総合的にとりまとめた「産業連関表」を基盤とする一連の分析手法のことです。

4)都道府県間産業連関表(分析)
47都道府県それぞれの県内の部門間取引に加えて、都道府県間にまたがって行われる取引(移入・移出)も網羅して取りまとめられた産業連関表、あるいはそれを用いた分析手法のことです。

5)地域シェア法
活動を実施する市町村レベルの分析については、利用可能な統計資料が限られるため、市町村の域内所得比に基づいて当該県への波及効果を按分する、簡略化された手法(地域シェア法)を用いています。そこで、分析の精度を高めるため、支出が当該の市町村内外のいずれでなされたのかを、ユーザーが指定できるようにしています。

発表論文

1.國光洋二, 上田達己, 沖山充, 徳永澄憲, 石川良文 (2018) 多面的機能支払交付金の地域経済への生産波及効果―47都道府県地域間産業連関分析による後方連関効果と所得連関効果―, 農業農村工学会論文集, 86(2), I_155-I_161.

2.上田達己, 國光洋二 (2018) 都道府県間産業連関分析による農業農村整備事業および小水力発電事業の波及効果計測のためのWEBアプリケーション, 農研機構研究報告(農村工学研究部門), 2, 81-103.

参考図

図1 データ入力画面の抜粋

図2 ツールの分析結果出力画面の事例(抜粋)

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