2019-04-12 国際農研
世界人口は、かつてないほど、拡大・高齢化・流動化・特定地域集中化、の傾向を呈している。こうした人口動態の「メガ・トレンド」は、2030持続開発目標達成に影響を及ぼしかねない。
2019年に77憶人に達した世界人口は、増加率の鈍化傾向にもかかわらず増え続け、2050年には97億人、21世紀末には110憶人に達するだろうと予測される。人口増と富の拡大は、自然資源とエコシステムに負荷を与えることが懸念される。
世界の一部では、出生率の低下と寿命の延びにより、人口構成の高齢化が不可避となり、世代間格差と様々な社会経済問題を引き起こしている。
都市化の傾向は続き、都市人口比率は2019年の56%から2050年には68%に達すると予想されている。農村から都市への人口移動は経済開発の機会をもたらす一方、無計画な都市化は、貧困層や弱者に過大な社会・経済・環境的負担をもたらしかねない。
2000年から2017年の間、国際移動を行った移民は50%増加し、2億5800万人に達したと推計される。そのうち10%は難民であり、迫害や武力衝突から逃れてきた人々である。
1994年以来、出生率の下落は世界的な傾向となっており、2019年には女性あたり出生が2.5であったのが、2030年に2.4、さらに2060年代までに人口置換水準 (replacement level) 以下の約2.1まで下落し、少子化傾向に拍車がかかると推測される。サブサハラアフリカでは、出生率は1990-95年の6.2 から下落したものの、いまだに4.8と高水準を保っている。
高いエネルギー利用水準・農業集約化・都市化・産業生産と人口増は、自然資源に負荷をかけ、その影響を被るのは主に弱者である。1999年から2013年まで、世界の地表の植生の約5分の1で生産性は下落し続けている。森林面積は、2000年から2015年まで41憶ヘクタールから40憶ヘクタールへ減少した。2015年から2016年に栄養不良に陥っている人々の数は7億7700万人から8億1500万人に増加したが、その40-60%は環境条件の悪化に起因する。2017年、5歳以下の子供1億5100万人が成長阻害(stunting)に陥り、5100万人が消耗症(wasting)、3800万人が肥満であった。
環境悪化は人間の健康にも影響を及ぼしつつある。2016年、700万人の死亡は屋内・屋外空気汚染に起因するものであった。2030-2050年に、気候変動は毎年25万人の死因(高齢者の熱射病、下痢、マラリア、幼児栄養失調)となり、2030年には年間20-40憶ドルの費用に相当すると推測される。
気候変動はまた、国境内外の人口移動を誘引する。嵐・干ばつ・洪水の頻度は過去30年代増加し、とりわけ途上国の弱者を直撃している。2008年、紛争による移住者460万人に対し、2000万人が異常気象のせいで移住を余儀なくされた。今日まで、気温上昇は、すでに異常気象・干ばつ・洪水・海面上昇・生物多様性の喪失を通じて、脆弱な社会層に環境リスクの負担を強いていおり、食料安全保障の危機に直面した途上国貧困層に移住を強いている。
より詳しい内容に関しては、以下の報告書原文を参照のこと
United Nations Commission on Population and Development Fifty-second session 1–5 April 2019 Item 3 (b) of the provisional agenda. Review and appraisal of the Programme of Action of the International Conference on Population and Development and its contribution to the follow-up and review of the 2030 Agenda for Sustainable Development. Report of the Secretary-General
なお、概要に関する本翻訳は、国際連合から公式に承認を受けたものではなく、翻訳上の誤りなどの責任は文責にある。
(文責:国際農研 研究コーディネーター 飯山みゆき)