国際再生可能エネルギー機関「世界のエネルギー転換:2050年までのロードマップ」の概要

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2019-04-11 国際農研

再生可能エネルギーのコストは近年急激に低下しており、例えば太陽光発電の平均コストは2010年以降これまでに73%低下し、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、ブラジル、米国等、多くの国でkWh当たり2~3米セントに近づいているほか、欧州では風力発電が市場競争力を持つようになっている。再生可能エネルギー発電設備の追加導入は出力ベースで化石燃料のそれをここ7年連続で上回っており、電力利用の拡大がエネルギー転換を促す推進要因としてますます重要になっている。運輸部門では、電気自動車(EV)の販売量や電化バスの導入が加速化しているほか、熱ポンプの利用による地域暖房の電化拡大の動きもみられる。

航空セクターからの排出量は国に例えると世界第8位となり、機体の改良等により年間1.5%の削減が可能である一方、さらなる排出削減のためにはバイオマス由来の航空機燃料の利用促進が不可欠である。

パリ協定に基づく各国削減目標(NDCs)を含む各国の策定済みの政策が確実に実施された場合(リファレンス・ケース)でも、2050年の排出量は現状よりわずかに低い水準にとどまり、最低でも2.6℃の気温上昇が見込まれる。実際、過去5年間のエネルギー起源CO2排出は、年率1.3%の割合で増加を続けている。2℃目標を達成を図るシナリオ(REmapケース)では、リファレンス・ケースと比較して、2050年までの累計で400Gt、年率に換算して現時点から毎年3.5%の排出削減が必要となる。これが実現した場合、2050年以降のエネルギー起源CO2排出は現時点のそれよりも7割削減される。

REmapケースにおいて必要となる追加的な排出削減の90%は、電化の促進、エネルギー効率の改善、再生可能エネルギーの利用を組み合わせることによって実現可能であり、それらはいずれも技術的、経済的に実行可能である。このうち再生可能エネルギー由来の電力を用いた電化の促進は排出削減の60%貢献し、再生可能エネルギーの直接利用を含めると、再生可能エネルギー全体の貢献分は75%に達する。

REmapケースでは、最終エネルギー消費に占める近代的再生可能エネルギーの比率が現状の10%(伝統的バイオマスを含めると17%)から2050年に3分の2まで増加する。リファレンス・ケースにおいては再生可能エネルギーの割合が2050年時点でも25%の水準にとどまることを踏まえると、再生可能エネルギーの利用は6倍のペースで加速化が必要となる。また、電力ミックスにおける再生可能エネルギーの割合は現状の25%(7,000TWh)から86%(47,000TWh)まで拡大するとともに、太陽光及び風力等の変動電源が60%を占める。

主に調理用に用いられる伝統的バイオマスについてはフェーズアウトし、近代的調理器具、電気調理、液化石油ガス(LPG)等への代替が必要である。

最終エネルギーに占める電力の割合は、現状の20%から50%まで拡大し、特に陸上交通では車両の70%が電化される。

航空機、重量貨物、船舶等への先進型液体バイオ燃料の利用拡大とともに、産業における高温加工など、特に電化が難しい分野では、持続可能な形で調達されたバイオエネルギーの利用が重要となる。また、化学や石油化学など、製品製造の加工に熱と原料の両方を必要とするセクターにおいては、バイオエネルギーの果たす役割が大きい。REmapケースでは、バイオエネルギーの一次エネルギー需要は現状の約2倍に相当する125EJとなり、液体バイオ燃料の市場規模は現状の1300億リットルから6520億リットルまで4倍に拡大することが想定される。

REmapケースでは、環境面や健康面の被害の軽減、GDPの底上げ、雇用機会の追加的な創出等、社会経済面での便益向上も期待される。

より詳しい内容に関しては、以下のサイトを通じ報告書原文を参照のこと

(本文)https://www.irena.org/publications/2019/Apr/Global-energy-transformation-A-roadmap-to-2050-2019Edition

なお、概要に関する本翻訳は、IRENAから公式に承認を受けたものではなく、翻訳上の誤りなどの責任は文責にある。(文責:研究コーディネーター  増山寿政

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