2019-01-22 国立大学法人新潟大学,NECソリューションイノベータ株式会社
国立大学法人新潟大学(医療情報部 教授:赤澤宏平、薬剤部:中澤香子、以下新潟大学)とNECソリューションイノベータ株式会社(本社:東京都江東区、代表取締役 執行役員社長:杉山 清、以下NECソリューションイノベータ)は、AIを活用し、消化器外科手術患者の手術後感染(注1)を予測するモデルの検証を行いました。
本検証ではNECの最先端AI技術群「NEC the WISE」(注2)の1つである「異種混合学習技術」(注3)を活用しており、新潟大学医歯学総合病院の消化器外科手術で入退院した患者、約2,000人の電子カルテのデータを匿名化して用いました(注4)。
その結果、精度指標を示すAUC(注5)85%を達成する手術後の感染を予測するモデルを構築しました。
今後も両者は、医療現場の様々な課題に対し、AIを活用することで、新たな価値を創造し、安全・安心な医療現場の実現や医療の発展への貢献を目指します。
背景
感染症は多くの患者の生命に脅威をもたらすこともあり、感染症を防ぐことは、すべての病院にとって重要な課題とされています。
手術においては、術後感染症のリスクを低下する目的で、抗菌薬の予防的投与が有効ですが、抗菌薬の多量投与は薬剤費への影響が大きく、また、耐性菌が発生・増殖するリスクが高くなります。耐性菌による感染症での死亡者数は、現在、世界で年間70万人にのぼり、2050年に推定される死亡者数は1,000万人と予想されています(注6)。そのため、政府は薬剤耐性(AMR)対策アクションプランの策定(注7)、院内感染の抗菌薬適正使用支援に対する2018年度診療報酬化(注8)などの施策を行っております。
このような状況から、適切な患者に適切な薬を適切な量、適切な期間投与することが重要とされています。
今回の検証内容
消化器外科で手術をした患者において、手術後感染と関係する因子の検証、及び手術後感染を予測しました。検証には予測の根拠を可視化することができるNECの最先端AI技術群「NEC the WISE」の1つである「異種混合学習技術」を活用しました。その結果、AUC85%の予測精度を達成する手術後の感染予測モデルを構築しました。また、手術後の感染に関係する年齢、BMI、使用薬剤、手術時間などの因子が可視化されました。
使用データ
匿名化を施した2013年から2017年に新潟大学医歯学総合病院の消化器外科手術で入退院した約2,000人の電子カルテデータ
今回の検証結果を踏まえて、構築した予測モデルを活用し、入院から手術終了までの電子カルテデータより手術後感染患者の早期予測の支援を目指します。
以上
(注1) 本研究では、消化器外科手術後から退院までの入院期間内において、細菌検査の結果が
陽性となった患者を手術後感染患者と定義。
(注2)
「NEC the WISE」(エヌイーシーザワイズ)は、NECの最先端AI技術群の名称です。”The WISE”には「賢者たち」という意味があり、複雑化・高度化する社会課題に対し、人とAIが協調しながら高度な叡智で解決していくという想いを込めています。
(注3) 異種混合学習技術:人手では困難であった複雑な予測についても、多種多様なデータの
中から精度の高い規則性を自動で発見し高精度な結果を得ることができる解析技術。
(注4) 技術実証のため、販売・提供はできません。
(注5) 「Area Under the Curve」の略称。統計・データ解析で用いられる、判断・分類の精
度の良さを0~1で表す指標。最も良い精度は1であり、その場合100%の確率で正し
い判断・分類が可能。判別能がランダムである時はAUC=0.5。
(注6) Antimicrobial Resistance:Tackling a crisis for the health and wealth of nations
(注7) 薬剤耐性(AMR)対策について – 厚生労働省
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新潟大学医歯学総合病院 総務課総務係
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