胎児脳発達や抗酸化機能を持つ野菜の開発に成功

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野菜工場へのマルチオミックス解析の展開

2018/09/13 京都大学,三菱ケミカル株式会社

植田充美 農学研究科教授、青木航 同助教、渡辺祥 同修士課程学生(研究当時)、大谷優太 同博士課程学生らの研究グループは、三菱ケミカル株式会社と共同で、代謝工学とマルチオミックス解析を活用し、栄養価の高い新しい機能性野菜(ホウレンソウ)の開発に成功しました。

本研究成果は、2017年6月6日に農学の国際学術誌「Journal of Agricultural and Food Chemistry」、および2018年9月8日に米国の学術誌「PLOS ONE」のオンライン版に掲載されました。

研究者からのコメント

本研究では、私たちが推進しているマルチオミックス解析技術によって、栄養価の高い新規機能性ホウレンソウの開発に成功しました。今回開発した葉酸成分が豊富なホウレンソウは胎児の脳の発達に、抗酸化物質としてはアントシアニンより強力であるものの、摂取することがなかなか難しかったベタシアニンが豊富な赤茎ホウレンソウは、抗老化などに機能があるものと考えています。さらに、これらの栄養素を、日常的に食する食卓の一品(一日あたり)でまかなえる量にまで、品質を高めることができました。

概要

機能性食品の開発には、これまでは主に遺伝子組み換え技術が使われてきました。しかし日本では厳しい規制により、一般には流通していません。そこで本研究では、すでに確立されている三菱グループの水耕栽培系を用い、その液肥の成分調整によって栄養価の高い新規機能性ホウレンソウの開発を試みました。

本研究グループは、まず葉酸を豊富に含むホウレンソウの開発を行いました。葉酸は代謝に必須であるばかりでなく胎児の脳の成長にも関与する重要な栄養素ですが、ヒトの体内では合成できないため食物からの摂取が必要です。そこで、サラダホウレンソウの水耕栽培技術を用いて、葉酸を多く含むホウレンソウの開発を試みました。液肥にフェニルアラニンを添加した条件でホウレンソウを栽培したところ、通常の約2倍の葉酸量を確認しました。

植物が合成する色素成分は抗酸化力を高め、ガン細胞増殖の抑制にも有効と考えられていますが、さらに本研究は赤茎ホウレンソウに含まれる赤色色素成分の一部が、ベタシアニン系の化合物であることを同定しました。そして、スクロースを添加した条件で赤茎ホウレンソウを栽培したところ、通常の約5倍のベタシアニンが含まれていることを確認しました。

本研究成果は、代謝工学のこれまでのデータの蓄積活用とバイオテクノロジーにおけるマルチオミックス解析手法の融合によるものです。本研究手法は、今後の食用野菜の育種に大いに活用でき、一般市場への新しい高付加価値食品への貢献が期待されます。

図:(左)水耕栽培ホウレンソウ(三菱ケミカル社)と葉酸の化学式、(右)水耕栽培された赤茎ホウレンソウとベタシアニンの化学構造

詳しい研究内容について

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