2018-03-05 国立天文台
HSC サーベイ(探査観測)により明らかにされた約120億年前の銀河の分布と原始銀河団領域の拡大図。図の青色から赤色は、銀河の低密度から高密度領域を表し、拡大図上の白丸は実際の銀河の位置を表します。特に赤い領域は将来的に銀河団になると予想される原始銀河団です。初めて遠方宇宙においても数十億光年スケールの構造を描き出すことができました。すぐ近くに中程度の高密度領域を伴っている場合や、フィラメント状の分布が伸びているような原始銀河団もみられる一方で、孤立しているものなど様々な特徴を持った原始銀河団を見ることができます。 オリジナルサイズ(820KB)
国立天文台、東京大学、総合研究大学院大学などの研究者と大学院生からなる研究グループは、すばる望遠鏡に搭載された超広視野主焦点カメラHyper Suprime-Cam(ハイパー・シュプリーム・カム、HSC)を用いた観測で、約120億光年かなたの宇宙に、銀河団の祖先「原始銀河団」を200個近く発見しました。これは従来の10倍もの発見数です。これらの原始銀河団の質量を測定した結果は、その後成長して現在の銀河団になるという仮説とうまく一致するものでした。さらに、これらの原始銀河団領域中にはクェーサーがほとんど存在しないことから、銀河同士の合体がクェーサー活動を引き起こすという従来の仮説に大きな疑問を呈する結果も得られました。HSCによって得られた大規模なサンプルを用いることで、遠方宇宙においても原始銀河団の特徴を初めて統計的に明らかにすることができました。
この研究成果は、日本天文学会欧文研究報告(Publications of the Astronomical Society of Japan)の「HSC特集号」に掲載されました(Toshikawa et al. 2018, “GOLDRUSH. III. A Systematic Search of Protoclusters at z~4 Based on the >100 deg2Area”, PASJ, 70, S12;
Uchiyama et al. 2018, “Luminous Quasars Do Not Live in the Most Overdense Regions of Galaxies at z~4”, PASJ, 70, S32;
Onoue et al. 2018, “Enhancement of Galaxy Overdensity around Quasar Pairs at z<3.6 based on the Hyper Suprime-Cam Subaru Strategic Program Survey”, PASJ, 70, S31)。