プラスチックの廃棄問題と食料問題の同時解決に向けて
2021-10-28 東京工業大学,科学技術振興機
ポイント
- 植物を原料としたプラスチックをアンモニア水で分解し、肥料となる尿素に変換するリサイクルシステムを開発
- リサイクルシステムで生成した尿素が植物の成長促進につながることを実証
- プラスチックの廃棄問題と人口増加に伴う食料問題の同時解決にも期待
東京工業大学 物質理工学院 応用化学系の阿部 拓海 大学院生、青木 大輔 助教(科学技術振興機(JST) さきがけ研究者兼務)、大塚 英幸 教授らは、東京大学 大学院農学生命科学研究科の神谷 岳洋 准教授、京都大学 大学院工学研究科の沼田 圭司 教授らと共同で、植物を原料としたプラスチックをアンモニア水で分解することで、植物の成長を促進する肥料へと変換することに成功した。
日常生活に欠かせないプラスチックは、現在70パーセント以上が廃棄されている。廃棄問題への対策が急がれる一方で、依然需要は大きく、地球環境の保全とプラスチック利用を両立させる革新的なリサイクルシステムの開発が望まれていた。
青木助教らは、カーボネート結合からなるプラスチック(ポリカーボネート)をアンモニアで分解する過程で生成する尿素が、実際に植物の成長促進につながることを証明することで、プラスチックを肥料に変換するリサイクルシステムを実証した。
プラスチックを出発原料まで戻して再利用するケミカルリサイクルの研究は精力的に進められているが、「分解過程で生成する化合物を植物の成長を促進する肥料として活用する」という本リサイクルシステムのアイデアは、これまでにないものである。またアンモニア水を加熱するだけで反応を促進でき、簡便なプロセスで実現できるため、普及すれば産業界への波及効果も大きい。このリサイクルプロセスは幅広い分子骨格に適用できることから、今後、サステナブルな材料創製とそのリサイクルにつながると期待される。
研究成果は2021年10月28日(現地時間)に王立化学会誌「Green Chemistry(グリーンケミストリー)」に掲載される。
本研究成果は、以下の事業・研究領域・研究課題によって得られた。
JST 戦略的創造研究推進事業 さきがけ
研究領域:「トポロジカル材料科学と革新的機能創出」
(研究総括:村上 修一(東京工業大学 理学院 教授))
研究課題名:「空間結合を創る高分子トポロジー変換反応を鍵とした異種トポロジーの融合」
研究者:青木 大輔(東京工業大学 物質理工学院 助教)
<論文タイトル>
- “Plastics to Fertilizers: Chemical Recycling of a Bio-based Polycarbonate as a Fertilizer Source”
- DOI:10.1039/D1GC02327F
<お問い合わせ先>
<研究に関すること>
青木 大輔(アオキ ダイスケ)
東京工業大学 物質理工学院 応用化学系 助教(JST さきがけ研究者兼務)
<JST事業に関すること>
嶋林 ゆう子(シマバヤシ ユウコ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ
<報道担当>
東京工業大学 総務部 広報課
科学技術振興機構 広報課