放射線・大気電場・電波による高エネルギー大気現象の観測
2018-05-29 京都大学,東京大学,東京学芸大学,神戸市立工業高等専門学校,近畿大学,名古屋大学,金沢大学,理化学研究所
榎戸輝揚 白眉センター特定准教授、和田有希 東京大学博士課程学生(理化学研究所研修生)、Gregory Bowers 米国ロスアラモス国立研究所研究員、鴨川仁 東京学芸大学准教授、中村佳敬 神戸市立工業高等専門学校准教授、森本健志 近畿大学准教授、David Smith カリフォルニア大学教授、中澤知洋 名古屋大学准教授、松木篤 金沢大学准教授、久保守 同助教らの研究グループは、雷雲中に発達した電場加速機構が雷放電によって破壊される様子を観測することに成功しました。
本研究成果は、2018年5月17日に、米国の学術誌「Geophysical Research Letters」にオンライン掲載されました。
研究者からのコメント
北陸地方の日本海沿岸部で発生する冬季雷は、雷雲の中や雷放電で起きている高エネルギー現象を観測できる絶好のターゲットです。今回の成果は雷雲直下での大気電場の計測、雷からの電波放射の観測、そして放射線計測の連携によって成し遂げられました。雷雲や雷放電に伴う高エネルギー大気物理現象の解明に向けたコラボレーションが加速しており、今後の観測成果に期待しています。
概要
本研究グループは、石川県珠洲市に放射線検出器と大気電場計を設置し、雷雲の通過と同期した1分ほど継続するガンマ線のバースト放射が、雷とともに途絶する様子を観測しました。この雷放電は富山湾に設置された長波帯 (LF) 電波受信機により観測され、バースト放射が途絶した瞬間に、放電路が放射線検出器の上空を通過したことが確認されました。これにより雷雲中に存在していた電子の加速機構が、雲中の放電によって直接的に破壊されたことが示されました。
図:雷雲からのガンマ線ビーム(左)とその放射源を破壊した雷放電(右)。能登半島の上空を雷雲が通過した際に、地上の放射線検出器が雷雲内の電子加速によって生成されたガンマ線放射を検知した。電子の加速機構は雷放電によって破壊され、ガンマ線放射とともに消滅した。